第八話
「作戦〜その3〜」
◆作戦名◆
買い物途中にドロンしよう作戦
研究所から持参した食料が無くなった。 予想はしていたが、こんなにも早いとは思わなかった。 あなど 軍人の胃袋を侮ってはいけない。 たい 一見余り食べなさそうなカールでさえ、涼しい顔をして三人前は平らげるのだ。 そう考えると、予想よりも早く食料が無くなるのは当然と言えば当然の話だろう。 カール達には軍から定期的に食料が送られて来るので困る事は決して無いが、サラ達はそう はいかなかった。 無くなれば、自分達で買い出しに行くしかない。 買い物が嫌いな訳ではないが、丸一日発掘を中止するのはサラにとっては大きなダメージで あった。 しかし、ステア達にとっては好都合。 またまた新たな作戦を実行に移せると、不敵に微笑む二人の姿が夕日に不気味に照らされ ていた。 かたすみ 一方、サラは機材置き場の片隅に置かれている巨大な冷蔵庫を眺めつつ、今までの減り具 合から計算した食材の必要量をメモに書き出していた。 明日は朝早くから出発する為、準備を今日中にしておくつもりらしい。 かたわ サラが一生懸命計算している傍らで、ステアとナズナはこそこそと話し合い、明日の作戦実 行に向けた行動を早速開始する事にした。 『失礼しま〜すvv』 ステア達は外から声も掛けずに、いきなりカールのテント内へ入った。 すると、カールは驚いた様子一つ見せずにゆっくりと読んでいた本を閉じ、笑顔で二人を出迎 えた。 「やあ、何か用かい?」 「はい、実は…」 むね ステア達は食材が無くなった事を説明し、明日近くの町まで買い出しに行く旨を伝えた。 カールはステア達の話を黙って聞き、申し訳ないといった表情をした。 食材が無くなる根本的な原因を作ったのは、他ならぬ自分なのだ。 「そうか…。すまない、迷惑をかけて」 「いえいえ。博士が好きでしている事ですから、気にしないで下さい」 「だがこちらとしても、このまま何もしないでいるのは忍びない。何か手伝える事はないか?」 その言葉を待ってました!と言わんばかりに、ステアとナズナは目を光らせた。 「そうですねぇ〜、何かある?ステア」 「え〜っとぉ……あ、じゃあ、明日の買い出しに付き合ってくれませんか?」 「買い出しに?」 「はい。た〜くさん食材を買い込むみたいなので、運ぶのを手伝って頂きたいのです」 「そんな事ならお安いご用だ。では、部下を四人程同行させよう」 こころよ カールは快く引き受けたが、ステア達は不満の目を彼に向けた。 今の口振りだと、カールは同行しないという事ではないか! それでは作戦を実行するどころか、二人が離ればなれになってしまう。 ステア達の抗議の視線に気づいたカールは、何故その様な視線を投げ掛けてくるのだろうと かし 首を傾げた。 「…何か問題があるのか?」 「ありありですぅ!」 「少佐は来て頂けないんですか?」 「私はここから離れる訳にはいかないんだ。責任者が不在だと色々困る事が多くてね」 「そうですか…。あ〜あ、参ったなぁ」 やっかい 「どうする〜?また厄介な事になりそうよねぇ」 ステアとナズナは思わせ振りな態度で話し、カールが気になって尋ねてくるのを待った。 「厄介な事…?町に行くと何かあるのかい?」 まゆ い 気になったカールが素直に尋ねると、二人は一瞬にやっと笑ったがすぐに眉をハの字にし、如 か 何にも困ってますという様子で話し始めた。 「どの町へ行っても、たくさんの男性が声を掛けてくるんです。…あ、私達はたまにですよ。博 士だけがすごくって…」 「そうそう、皆しつこく言い寄って来るんですぅ〜。このままじゃ、いつか博士が……。これって 危険だと思いません?」 「あ、ああ、確かに危険だな」 「やっぱり傍に守ってくれる人がいないとダメなんですよ〜」 「そう、博士には強くて頼りがいのある人が必要なんです」 ステア達は前振りをきちんとしてから、カールの目を見つめて本題に入った。 「博士にとって、頼りになる人は少佐しかいないと思うんです」 「ですから、明日一緒に来て博士を守って下さい」 「い、いや、私は彼女に頼りにはされていないと思うが…?」 「そんな事ないです!この間だってマルクスって人から博士を守ってくれたじゃないですか!」 「あれは……上官として当たり前の行動をしただけだ」 「そうですか、博士がどうなっても良いとおっしゃるんですね…」 言葉の駆け引き……それはカールも得意としていたものだが、今回は完全にステア達に主導 権を握られていた。 押すだけではいけない、たまには引いてみる事も大事だ。 引くと案外うまくいったりする。ステア達はカールの次の言葉を待った。 「………サラが…どうなっても良いとは言ってない。……本当に彼女が私を頼りにしてくれて いるのなら…同行しよう」 予定通りカールに「同行する」と言わせる事に成功したが、それよりももっと驚く事があったの で、ステア達は目を丸くした。 二人はカールがサラを名前で呼んだ事に驚いたのだ。 すで サラを名前で呼ぶ様になってから既に数週間は経っていたが、ステア達の前で言ったのは初 めてであった。 その事実に気付いていないカールは、ステア達の驚きの理由がわからず、またしても首を傾 げるしかなかった。 「………あ、えっと…一緒に行って下さるんですね?」 「ああ」 「では、博士には私達から知らせておきますね」 ステア達は何故かさっさと話を切り上げ、慌てた様子でカールのテントから出て行った。 「ねぇねぇ、いつの間に名前で呼ぶようになったのかな?」 「私達の知らない所で進展があったとか!?あの二人に限ってそれは無いと思うけど……」 「でも実際名前で呼んでいたし…」 「う〜ん……」 ステアとナズナは名前の件でしばらく悩んだが、最終的には明日の作戦の方が大事という結 つ 論に落ち着き、ワクワクしながら早めに眠りに就いたのだった。 * 翌朝サラ達がテントから出て来ると、今日同行する事になった三人の兵士が、満面の笑みを 浮かべて待ち構えていた。 うらや 周囲には彼らを羨む者が遠巻きに様子を見ており、演習場内は朝からどことなく妙な雰囲気 に包まれていた。 兵士達の案内でゾイド置き場へ向かうと、そこには二台の大型ジープが用意されており、そ の傍にカールがポツンと立っていた。 『おはようございま〜すvv』 「あぁ、おはよう」 こた ステア達の元気すぎる挨拶にカールは笑顔で応え、彼女らの後ろにいるサラを見つめた。 「おはよう、少佐」 「おはよう」 「ごめんね、二人が強引に頼んだみたいで…」 「いや…」 朝からいつも通りのやり取りが始まった為、すかさずステア達は二人の間に割り込んだ。 「あ〜、もう!今はそんな話をしている場合ではないですよ」 「そうです、早く乗って下さい。ほらほらぁ〜」 二人はサラとカールの背中を強く押すと、ジープの後部座席に無理矢理押し込み、自分達は もう一台のジープに乗り込んだ。 一方兵士達はサラとカールの方には一人、ステアとナズナの方には二人が乗り込み、すぐに ジープを発車させて町へと出発した。 あお 町へ向かう道中、ステアとナズナは二人の兵士に協力を仰ぎ、作戦実行に向けて着々と準 備を進めていった。 しげ 数時間掛けて砂漠を抜け、緑が茂る平原に入ると目前に町が見えてきた。 町外れでジープから降りたサラ達一行は、商店が建ち並ぶ通りを目指して歩き出した。 その間、残りの兵士にもこっそり協力を要請したステア達は、先頭を行くカールとサラの後を にやにやしながらついて行った。 町で一番活気のある商店街に到着すると、サラは早速メモを見ながら買い物を始めようとした が、それを止める者達がいた。 その者達とは、当然ステアとナズナである。 ことわざ 『腹が減っては戦は出来ぬ』という諺通り、二人はまずどこかで昼食を食べたいと言い出し、 勝手に店を探し始めた。 「あ〜、あのお店がいいです〜」 「じゃあ行きましょう、皆さんv」 そろ と 結局ナズナが見つけた店に揃って入り、昼食を摂って一休みしてから、買い出しを始める事に なった。 昼時の込み合う時間帯ではなかった為、まだ店内はガランとしていたが、ステア達は三人の 兵士を引き連れてテーブルを囲み、サラとカールには窓際の二人用の席を勧めた。 ステア達のあからさますぎる行動に、如何に鈍感なカールでもさすがに気付かない訳はなく、 素直に喜んでいいのか悩んだ。 それとは対照的に、サラはいつもと変わらぬ態度のまま笑顔で席に着き、嬉しそうにメニュー を開いた。 サラは料理を作るのも好きだが、食べるのも大好きなのだ。 ささい サラの笑顔を見ていると、こんな些細な事で悩んでいる自分が心底おかしくなり、カールも笑 顔で彼女の向かい側の席に腰を下ろした。 そうして正午を少し回った頃、サラ達は込み始めた店を後にし、商店街で買い物を始めた。 やおや 「え〜っと……まずは八百屋さんね」 サラはメモを見ながらテキパキと必要な物を買い揃え、量が量なので持ち歩くのは無理と判 断し、買った物をこまめに兵士達にジープまで運んでもらった。 ステア達はとりあえず買い物が一段落するまで待ち、後は調味料だけという時になったのを 見計らうと、兵士達を連れて人込みに姿を消した。 昼時の商店街は人通りが激しく、ステア達がいなくなっても、サラとカールはすぐには気付か なかった。 しばらくして… 「……あれ?」 「どうした?」 「皆が見当たらないんだけど……」 ようやくステア達がいなくなっている事に気付いたサラは、振り返って周囲をキョロキョロと見 回した。 商店街に入ってからサラしか見ていなかったカールは、彼女よりもやや遅れて部下達の姿が 見当たらないと気付き、一緒になって辺りを見回した。 「近くにはいないようだ」 「はぐれちゃったのね…。もう、すぐウロウロするんだから」 さが 「こうも人通りが激しいと、捜し出すのは無理だな」 「そうね。はぐれた時はジープの所で待つように言っておいたし、心配ないわね。じゃあ、私達 だけで買い物を済ませてしまいましょ」 「ああ」 あせ サラ達は焦る様子もなく買い物を再開し、必要な調味料を探し始めた。 そんな二人の後をステアとナズナ、兵士達がこっそりと付けていたのは言うまでもない。 「よし、これで全部揃ったわ」 買う予定にしていた全ての調味料を買い終え、サラが店の店主から品物を受け取ろうとする と、彼女よりも早くカールがその品物を受け取った。 サラは行き場を失った手をプラプラさせてみせたが、カールは照れ臭そうに微笑むだけで何も 言わなかった。 「あ〜、少佐ってば、優しい〜vv」 「もう、博士ったら〜。どうしてあの優しさにクラッとしないのよぅ!」 すきま ひそ ステア達は店と店の間にある隙間に身を潜め、カールとサラの行動を盗み見ながら思わず大 声を出した。 さま 二人が一喜一憂する様は、事情を知っている兵士達の目には大したものに映らなかったが、 町の人が見れば挙動不審人物以外の何者でもなかった。 しかし、今のステア達には周囲の目など関係ない。 大事なのはカールとサラの動向だけだ。 何か起きる事を期待しつつ、観察を続けるステア達であった。 買い出しが無事終了し、後はステア達が待っていると思われるジープの所へ戻るだけとな のぞ ると、サラは帰りがてらに色々な店を覗いて回った。 ここ数年、発掘や学会に出る時以外は研究に没頭しており、外へ出る事が滅多になかったの はず で、久々の町の空気に心が弾んだ。 楽しそうにあちこちを見て回るサラを見守りながら、カールはのんびりと彼女の後に付いて行 った。 するとその時… 「お嬢さん、一人?」 「え…?」 突然サラに声を掛けてくる男がいた。恐らくこの町の若者だろう。 かたず の もちろん近くの物陰では、ステア達が固唾を呑んでこの光景を見つめていた。 「俺も一人で暇してたんだ。良かったら、一緒にお茶でも飲みながら話さないか?」 「…………」 つか サラはいつも通り断ろうと思っていたのに、無意識に後ろにいるカールの腕を掴んでいた。 |
サラの行動に内心驚きつつ、既に臨戦態勢であったカールは彼女とその男の間に入り込み、 にっこりと冷たい笑みを浮かべてみせた。 その笑みにビクッとなった男は恐怖の余り何も言えなくなると、慌てて二人の前から足早に去 って行った。 男を見送ったサラはほっと胸を撫で下ろし、カールを見上げて微笑んだ。 「ありがとう、少佐」 「い、いや、大した事はしてないよ」 カールがつい腕を見ながら返事をすると、サラはあっと驚いた様な表情を見せ、すぐに腕から 手を離した。 とっさ 何故咄嗟にカールの腕を掴んだのだろうか…? 手を離した途端、その疑問でサラの頭の中はいっぱいになってしまった。 気付かない内に……いや、気付いてはいたが気付かないフリをしている内に、いつの間にか カールが頼りになる存在から、心許せる存在へと変わってきていた様だ。 だからこそ、無意識に助けを求めたのかもしれない。 この、今まで一度も感じた事の無い不思議な気持ちは一体… サラが思い悩んでいる隣で、カールは彼女が自分を頼りにしてくれた事に感激していた。 そして、それ以上にサラを守る事が出来た達成感で心が満たされた。 いだ 二人はそれぞれの想いを胸に抱きつつ、ジープが置いてある町外れに向かってゆっくりと歩き 出した。 「どうしてあのまま手をつながないのよぅ〜!」 「せっかく良いタイミングでナンパ君が登場したのに〜。あ〜〜もどかしいわ〜!」 物陰で全てを見ていたステア達は、自分の事ではないのに当然怒っていた。 カール達の奥手さは折り紙付であったが、ここまで来るといい加減うんざりである。 出会った頃から考えると、今では見るからに好き合っているのに、最後の一歩だけが踏み出 せないままなので、こうなったら強引にでも事を進めてしまおうかと思わずにはいられないス テア達であった… くまな ジープの傍までやって来たサラとカールは、辺りを隈無く見回してステア達の姿を捜した。 しかし周囲には人の気配が全く無く、立ったまま待っていても仕方ないので、ジープに乗り込 んで待つ事にした。 「遅いな、皆……」 にぎ 「そうね…。きっと久し振りに賑やかな所へ来たから、皆で色々なお店を見て回ってるのよ。だ からあなたの部下の人達も帰って来ないんだと思う」 「一応荷物持ちとしての役割は果たせている訳か、それなら仕方ないな」 二人は夕日で真っ赤に染まった空を見上げ、ステア達が帰って来るのをのんびりと待った。 空よりもサラの姿を眺めていたいのは山々だったが、見つめ返されても困る為、カールは何 気なく荷台に積まれた物へ視線を移すと、ふとある疑問が浮かんできた。 「…そう言えば、水は買わなくて良かったのか?食材よりも大量に必要だと思うんだが…」 く 「あぁ、水ね。水は買う必要がないの。地下水を汲み上げてるから」 「地下水…?どこから?」 「あの演習場の真下には大きな地下水脈が通っていてね、そこから汲み上げてるの」 「そうなのか…。いつの間にそんな工事を…?」 「演習場に来てすぐ。専用の機械があるから、そんなに時間はかからないんだよ」 「へぇ、すごい機械があるんだな」 カールが素直に感心すると、サラは照れ臭そうに微笑んでみせた。 「ふふふ、実は私も少し開発を手伝ったの。全然知らない分野の事だったから、興味深くて面 白かったわ」 「考古学以外にも、色々な事に挑戦しているんだね」 おおげさ 「ん〜、『挑戦』なんて大袈裟なものではないけど、少しでも興味が沸いたら何でも手を出しち しゅうしゅう ゃうの。そして最後には収拾がつかなくなったりして、もう大変!」 「ははは、その光景が目に浮かぶな」 「あ、ひど〜い。……でもその通りなのよねぇ。自分でも簡単に想像で出来ちゃうのが辛い」 「だが、何にでも一生懸命になれるのは良い事だ。そんなに気にする必要はない。…ただ、 程々にするっていうのが一番だな」 「程々…かぁ。うん、頑張ってみるわ」 話し相手がカールだと、サラは何故か素直に頷く事が出来た。 それはまるで父親と話している時の様な、心から安心出来るひとときであった。 しかし、まだ自分の本当の気持ちに気づいていないサラは、今の不思議な感覚を振り払おう と急いで話を続けた。 「あ、そうだ。水が必要になった時はいつでも言ってね、いっぱいあるから」 「ああ、いざという時はお願いするよ」 「お任せ下さい、少佐殿v」 ほう 夕日の中でサラの笑顔が美しく輝いて見え、カールは思わず惚けてしまったが、その雰囲気 を見事にぶち壊す様に、町の方からステア達がやって来た。 実は様子を見計らい、わざと良い雰囲気の時に出て来たのだ。 いらだ 余りにも進展しない二人に苛立ちを隠せないステア達の、ささやかな意地悪であった。 「すみませ〜ん。色々なお店を見て回っていたら、道に迷っちゃってぇ」 「そうだと思ったわ。まぁ、無事に帰って来れたからいいけど、今度からは気を付けてね」 『は〜い』 ステア達は気持ち悪いくらい素直に返事をし、いそいそとジープに乗り込むと演習場への帰 路に就いた。 演習場に到着すると、もう辺りは完全に暗闇だったが、演習場内はたくさんのライトがあるお 陰で比較的明るく、兵士達は食材を冷蔵庫までせっせと運び、最後にサラとステア達から礼 を言われ、満足気な笑みを浮かべて帰って行った。 まだカールが残っているのを横目で確認しながら、ナズナはすかさずサラに話し掛けた。 「は・か・せぇv」 「何?」 「少佐にお礼を言わなくていいんですか〜?」 「あぁ、そうね。じゃあ、先に帰ってて」 「は〜い、ごゆっくりvv」 ナズナの最後の言葉に引っ掛かりを感じつつ、サラはカールの元へ急いで歩み寄った。 全員が無事に帰るまで見届けるつもりだったカールは、サラが傍にやって来ると、にっこりと 微笑んでみせた。 「少佐、今日は本当にありがとう」 「いや、部下達が頑張ってくれただけで、俺は礼を言われる程の事はしてないよ」 「そんな事ないわ。だって私を……守ってくれたもん」 「…あ、ああ、そうだったな」 「はい、これ」 「え…?」 サラはカールに小さな紙袋を手渡し、もう一つあった同じ紙袋から中身を取り出して見せた。 な 「これは氷砂糖っていうお菓子なの。疲れた時に舐めると元気になるよ」 「……俺に、くれるのかい?」 「うん、でも皆には内緒ねv」 「あ、ありがとう」 思いがけないプレゼントに、カールは嬉しさを隠せなくなって満面の笑みを浮かべた。 そんなに喜んでもらえるとは思わなかったサラは、カールにつられて微笑むと、取り出した氷 砂糖を口に放り込んだ。 まね それを見たカールも真似をして氷砂糖を口に放り込み、二人は子供の様に笑い合った。 「それじゃ、おやすみなさい、少佐」 「ああ、おやすみ」 カールとサラは笑顔で挨拶を交わし、それぞれのテントに向かって軽い足取りで歩き出した。 ●あとがき● 二人の仲が着実に進みつつある様な、ない様な…微妙な状態です。 正直な所、その微妙さがいい!とは思っていません(笑) 早くラブラブにはしたいですが、余りにも早すぎると、行きずりの恋みたいになりそうでイヤな んです。 だから今はゆっくりと進んでいます。 もどかしさで苛々しますが、しばらくは我慢、我慢…。 今回突然氷砂糖なんてものが登場しましたが、Ziに実在するかは謎です。 ちょっとしたものをお礼にあげたいなと考え、思い付いたのは何故か氷砂糖でした。 程良く甘いお菓子なので、甘いものが余り好きではなくても、食べられるのではないかと。 カールは何でも好き嫌い無く食べられるんですけどね。 小説には出て来ませんが、これから彼はあの氷砂糖を大事に大事に食べていくと思います。 その姿を想像すると、少し……いや、かなり笑えます。 早く格好良いカールに戻ってほしいです…って、考えた私が悪いんだった(笑) ●次回予告● 買い出しに行ってから数週間の時が過ぎ、発掘もようやく第一段階が終了しつつありました。 そんなある日、サラが過労から高熱を出し、倒れてしまいました。 このチャンスを逃してなるものかと、ステア達はカールにわざわざ報告しに行きます。 カールはサラを心配し、お見舞いに行く事を決意しました。 一体サラの看病は誰がするのか!? 第九話 「作戦〜その4〜」 献身的な看病&サービス満点vvな作戦、始まります! |