第三十六話
「昇進」
戴冠式が行われてから数日が経つとお祭り騒ぎも下火になり、ガイガロスは元の落ち着きを 取り戻しつつあった。 もちろん問題はまだまだ山積みではあったが、国民はガイロス帝国を立て直す為に懸命に働 いていた。 国中が立て直しの為に慌ただしくしている中、大して変化の無い帝国国立研究所では、サラ が相変わらず怪しい実験に勤しんでいた。 そんなある日、サラの元へミレトス城から通信が入り、急いで応答してみるとモニターにルド ルフの姿が映った。 「こんにちわ、先生」 「あら、ルドルフ君。どうしたの?」 「実は急ぎで申し訳ないのですが、明日ミレトス城に来て頂きたいのです」 「明日?何かあるの?」 「今は詳しくお教え出来ませんが、きっと先生にとって嬉しい事が起きると思いますよ」 「嬉しい事…?わかったわ、いつ行けばいい?」 「そうですねぇ…。では、午後一時に城の正門前に来て下さい」 「了解、楽しみにしてるわね」 「はい、お待ちしております」 ルドルフとの通信を終えるとサラは実験を中断し、明日の事を考え始めた。 (嬉しい事って何なのかしら…?) わざわざルドルフが個人的に連絡を取ってきたのだから、余程の事だろう。 サラはとても楽しみになり、その夜はわくわくしながら早めにベッドへ横になった。 すで 翌日、約束の時間丁度にサラがミレトス城に到着すると、既にルドルフが正門前で待ってい た。 「こんにちわ、先生。わざわざお越し下さり、ありがとうございます」 「いえいえ。こちらこそわざわざ陛下に出迎えて頂けて、光栄の至りですわ」 あ サラが気取って一礼してみせると、ルドルフは思わず苦笑したが、敢えて何も言わずに案内を 始めた。 「先生、こちらへどうぞ」 ルドルフに案内されてやって来たのは、城の中心部にある大きなホール…へ続く長い廊下で あった。 けげん 目的地がその廊下であるとルドルフに知らされたサラは、意味がわからず怪訝そうな表情をし た。 すす すると、ルドルフは廊下に置いてある椅子をサラに勧め、にっこりと微笑んだ。 「とにかく、そこでしばらくお待ち下さい。すぐに良い事が起こりますから」 たくら 「…本当?何か企んでいる訳じゃないわよね?」 「あはは、企むなんてとんでもない。そんな事をしたら後が恐いですし」 「それもそうね。じゃ、ゆっくり待たせてもらうわ」 「はい」 ルドルフはサラが椅子に座ったのを確認してから、巨大なドアを開けてホールに姿を消した。 幼い頃家庭教師をしていたというだけあって、ルドルフはサラの恐ろしさを知っている様だ。 それから一時間程じっと廊下で待っていると、不意にホールのドアが開け放たれ、たくさんの 人々が廊下に出て来た。 そろ よく見てみると出て来たのは全員軍人で、揃いも揃って恐い程満面の笑みを浮かべていた。 サラは何となく居心地が悪くなってしまったが、ルドルフが言った良い事が起きるまでは我慢 しようと頑張り、開け放たれたままのドアを見つめた。 すると、ホールから一番最後に出て来た人物がカールだった為、慌てて立ち上がって駆け寄 った。 「カール!」 何故か一人だけ浮かない顔をしていたカールは、サラの呼び掛けに心底驚き、目を丸くして 彼女を見つめた。 「サラ!?どうしてここに!?」 「ルドルフ君に呼ばれて来たの」 サラが説明を始めると丁度良くホールからルドルフが現れ、笑顔で二人の元にやって来た。 「ね?嬉しい事あったでしょう?」 「ええ、ありがとう」 「では、私はこれで失礼します。国務が立て込んでおりますので」 つか ルドルフは二人の邪魔をしない様に気を遣ってくれたのか、足早に去って行った。 どうやら祝賀パーティの時に、カールとサラの仲に気付いていた様だ。 サラはルドルフを見送って二人だけになると、改めてカールの顔を見上げた。 「ねぇ、ホールで何かあったの?皆嬉しそうに出て来たけど」 「あ、うん…。皆昇進したから喜んでいたんだと思うよ」 「へぇ、そうなんだ。……て事は、あなたも昇進したの?」 「ああ……大佐に昇進したよ…」 「大佐!?その若さで大佐なんて異例のスピード昇進だよね!すごいわ、おめでとうv」 「う、うん………ありがとう…」 サラは自分の事の様に喜んで絶賛したが、カールの返事は余りにも力の無いものであった。 かし のぞ カールの様子がおかしいと気付いたサラは不思議そうに首を傾げ、彼の顔を覗き込んだ。 「嬉しくないの…?」 「…嬉しいに決まっているさ、大佐なんてそうそうなれるものではないからね。でも……」 「…でも?」 「何故俺達がいきなり昇進したのかを考えると、素直には喜べないんだ…」 「どういう事?」 くみ あ 「軍上層部のプロイツェンに与していた者が次々と処分されてね…。その分、上のポストが空 いたから昇進したって事さ。だから自分の実力で大佐に昇進した訳ではないんだ…」 「何ソレ!?」 きび サラは突然笑顔を消し、厳しい表情になって怒り出した。 サラが本気で怒っていると察したカールは、そんな彼女を初めて見た驚きで呆然となった。 「上のポストが空いたから!?だから自分の実力で昇進した訳じゃない!?そんな事本気で 思っているの!?」 「……………」 「ルドルフ君がそんな風に考えて、あなたを昇進させたと思っているの!?」 「………それは……」 つ 「ルドルフ君はあなたの忠誠心を知っていたからこそ、その実力に合ったポストに就かせてく れたのよ!あなたなら荒廃してしまった帝国軍を、元の誇りある軍隊に立て直してくれるって 思ったんだよ!そんなルドルフ君の気持ちがわからないって言うの!?」 「わかってる!わかってるさ!!」 つぐ カールが珍しく大声を出した為、驚いたサラはビクッとなって口を噤んだ。 す すると、カールは直ぐさま我に帰り、深く息を吐いて心を落ち着かせてから、サラをそっと抱き 寄せた。 「…ごめん、違うんだ。陛下のお考えは充分すぎるくらいわかってる……だからダメなんだ。大 こた 佐として陛下の期待に応えられるかどうか、自信がないんだ………」 「カール…」 カールはサラと目を合わせない様にしながら、本心を素直に告白した。 きじょう サラの前では気丈に振る舞う必要はない、普通の青年のままでいいのだ。 その告白を静かに聞いていたサラは何を思ったのか、いきなりカールの肩に手を伸ばし、必 死に背伸びをして軽く唇を重ねた。 カールが驚いて目を丸くすると、サラは子供に言い聞かせる様に一言一言ゆっくり話し始め た。 「いきなり結果なんて求めちゃダメだよ。あなたは今まで通り、あなた自身が切り開いた道を 自分のペースで進めばいいの。そうすれば、結果なんて後からついてくるわ」 サラはそこまで言うと一旦言葉を切り、カールの頬を優しく撫でた。 「でも…どうしてもダメな時は……私の所へ来て。私、ずっとあなたの傍にいるから……」 サラの優しさにカールは何も言えなくなり、再び彼女を強く抱きしめた。 うま サラが傍にいてくれたら何もかもが全て上手くいく様に思え、とても安心出来た。 やはり彼女は自分に必要な存在なのだ、と改めて実感した。 「……サラ」 「ん…?」 「ありがとう…」 「うん…」 こころゆ ほうよう つな 二人は誰もいない廊下で心行くまで熱く抱擁してから、仲良く手を繋いで歩き出した。 ふがい じちょう いと カールは自分の不甲斐なさに対して自嘲の笑みを浮かべ、隣にいる愛しい人の横顔を見つめ た。 「君には弱い所ばかり見せているな…」 「そぉ?強い所もいっぱい見せてもらったよv 全部引っくるめてあなたっていう人が成り立って いるんだから、そんなに気にする必要はないわ。誰にだって弱い所はあるものだよ」 「…君の弱い所は余り見た事ないけど?」 あせ 「焦らなくても、いつか見る時が来るわ」 サラは明るく笑ってみせ、それ以上は何も言わなかった。 かた いつか本当にそんな日が来たら、その時は必ず彼女の傍にいようと、カールは堅く決意する のだった。 やがて目の前に正門が見えてくると、サラは思い出した様にカールの顔を見上げ、恐る恐る 尋ねた。 「ねぇ、大佐になると今までより忙しくなるの?休暇少なくなっちゃうのかな?」 「…忙しくはなるだろうな、大部隊を任されるだろうし。でも休暇は何とかなると思う」 「ほんと?」 ゆうずう き 「何と言っても大佐だからね、多少の融通は利くだろう」 「そっか〜、良かったぁ。じゃあ、今まで通り会えるんだねv」 サラがほっとして満面の笑みを浮かべると、カールもつられて笑顔になった。 「今度はいつ会えそう?」 「そうだなぁ…。今回結構多くの者が昇進したから、軍全体を再編成する必要が出て来たん だ。だから、全士官に招集が掛かるだろうし、自分に任される部隊との顔合わせもあるから、 しばらくは会えそうにないな…。それに、一週間後には俺が通っていた士官学校へ講師とし て行く予定になっているから、全部終わるまで多少時間が掛かるかもしれない」 カールは心底残念そうに自分のスケジュールを伝えたが、サラは何故か目をキラキラ輝か せ、彼の腕をぎゅっと握った。 「士官学校へ行くの?」 「ああ、そうだよ」 「私も行きたい!連れてって!」 こんがん サラはカールの腕を握る手に力を入れ、必死に懇願した。 わがまま カールは一瞬困った様な表情を浮かべたが、珍しくサラが我儘を言ってくれているので、嬉し くなってすぐに頷いてみせた。 「わかった、一緒に行こう」 「わぁ、やったぁ!ありがとうv」 サラは飛び上がる様に喜び、スキップをしながらカールの周囲を回り始めた。 「カールが通っていた学校へ行ける〜、嬉しいな〜♪」 その様子からサラの喜びが伝染し、カールも嬉しくなって幸せそうににこにこ微笑んでいた。 そうしてミレトス城から出ると、カールは自分が乗ってきたジープで研究所まで送ると言った が、サラは何故か首を横に振った。 「今夜はあなたと一緒にいたいの。だから基地へ行っていい?」 それは自分が言うべき言葉だとカールは思ったが、今日は素直にサラの優しさに甘える事に した。 サラを助手席に乗せてジープを発車させると、カールの心にふと基地とは別の場所が思い浮 かんだ。 チラッとサラの方を横目で見、基地よりもそこの方が良いだろうと勝手に判断したカールは、 思い浮かんだ場所へジープを走らせた。 カールが運転するジープは基地とは正反対の方向にある山林地帯へ入って行き、そのままし とぎ ひら ばらく進むと途中で木々が途切れ、開けた場所に到着した。 目前には丸太で作られたロッジがあり、カールはその前でジープを静かに停車させた。 てっきり基地に向かっていると思っていたサラはジープから降りるなり、ロッジを見上げてキョ トンとなった。 「ここどこ?」 「見ての通りロッジ」 「う、うん、それは見ればわかるわ。でもどうしてロッジなの?」 いっかん 「訓練の一環でたまにこの山に登る事があってね、ここはその時に利用する宿泊施設なん だ」 「だ、だから……どうしてここに来たのか、理由を聞いているのよ」 じゃま 「基地よりここの方がいいと思って。確実に二人きりになれるし、誰にも邪魔されない」 カールの返事を聞いた途端、サラの顔が火を吹いた様に真っ赤になった。 |
「そ、そっか。じゃ、入りましょう」 サラは妙に恥ずかしくなってカールと目を合わせられなくなり、ぎくしゃくした足取りでロッジの 入口へ向かった。 その後をカールは嬉しそうについて行き、ドアのロックを解除して二人揃って中に入った。 「わぁ、結構広いんだねぇ」 サラはロッジの中心にあるリビングへ駆けて行き、大きく両手を広げてクルクル回った。 そんなサラを微笑ましく思いつつ、カールはキッチンへ行って食事の準備をし始めた。 かんづめ とは言っても、このロッジには軍用の缶詰しか無い為、大した事をする訳ではなかった。 「…カール、ここにはそういうものしかないの?」 いつの間に来たのか、サラがカールの手元を覗き込んでいた。 「残念ながら、こういうものしかないんだ」 「ん〜、ちょっと待って」 くまな サラはカールの手を止め、キッチン内を隈無く見て回った。 なら そうして一通り見た後突然にやりと微笑み、カールの前に様々な調味料を並べ始めた。 ほうふ 「材料は缶詰しかないけど、思ったより種類が豊富だし、他は大体揃っているから何とかなり そうよ」 「何とかって……どうするんだい?」 「いいからいいから、あなたは向こうで待ってて」 強引にキッチンから追い出されてしまったカールは、サラに言われた通り大人しくリビングで 待つ事にした。 すると、それから一時間も経たない内にサラが呼びに来て、カールは彼女と共に食堂へ向か うと、テーブルの上に並べられている料理を見て目を丸くした。 「ど、どうやって作ったんだ!?」 さ 「普通に作っただけだよ。さぁ、冷めない内に食べましょう」 「あ、ああ」 カールは改めてサラの料理の腕前に感心しながら、席に着いて食べ始めた。 「うん、うまい。元が缶詰だとは思えないな」 「ふふふ、喜んでもらえて良かったわ」 いつも食べていたものがこれ程までにおいしくなるとは思いもよらなかった為、カールは何度 か もお代わりして黙々と食べ続けた。 やがてお腹が一杯になると、カールは直ぐさま席を立って食後のコーヒーを用意し、サラの前 に静かに置いた。 「ありがとう」 サラは笑顔で礼を言い、カールが入れたコーヒーをこくこくと飲んだ。 「やっぱりあなたが入れてくれたコーヒーが一番おいしいわ」 「そうか?誰が入れても同じ味だよ」 けんそん ほ カールは謙遜してそう答えたが、顔は明らかに褒められて嬉しいという表情をしていた。 やはりコーヒーは軍人にとって大変重要なものである様だ。 それから二人はコーヒーを飲みながらしばらく談笑し、後片付けも仲良く二人でしてから浴室 へ向かった。 今夜こそはきちんと洗ってあげたいとサラが言い出した為、二人で入る事になったのだ。 サラは手際良く実に綺麗にカールの髪を洗い上げ、続けて彼の背中も洗い始めた。 そうして背中を洗い終えるとサラは心底満足そうに頷き、今度は自分の髪を洗い出した。 その様子をじっと見守っていたカールは、サラが体を洗おうとしてタオルに手を伸ばした瞬間、 素早く動いてそのタオルを取り上げ、彼女の背後に移動した。 「な、何?」 さわ サラが驚きの余り動けなくなると、カールはにっこりと爽やかな笑みを浮かべ、彼女の背中を 愛おしそうに撫でた。 「次は俺が洗う番だ」 「え、い、いいよ、そんな事。自分で出来るから」 「ダメだ、洗う」 カールはサラの了解を得ずに勝手に洗い始めた。 しだい 仕方なくサラはカールに身を任せたが、次第に彼の手が乳房へ伸びてきた為、慌てて止めに 入った。 「ま、前は自分で洗うわ。だからあなたは背中だけにして」 「いつも髪を綺麗に洗ってもらっているから、今夜はその礼をしたい」 「………?」 「俺に君の全てを洗わせてくれ」 ささや その一言をカールがわざとらしく耳元で囁くと、サラはドキッとなって急に大人しくなり、すんな ゆだ りと彼の手に身を委ねた。 さか カールに耳元で囁かれると、どうしても逆らえない様だ。 「ん………やん……くすぐったいよぅ…」 わしづか も サラはカールに豊満な乳房を鷲掴みにされ、そのまま揉む様に洗われながら、気持ち良くて 身をくねらせた。 すで いつの間にかカールの手からタオルが無くなっており、素手でサラの体を洗っていた為、指の 動きがいやらしくなっていた。 「あぁ………や……ダメ…もう……」 おちい サラは前戯を受けている様な感覚に陥ってしまったが、それでも抵抗は一切せず、カールの 手に全身を洗われ続けた。 あえ おさ なか しかし、サラの喘ぎ声に気持ちを抑え切れなくなったカールが膣に指を入れようとすると、さす た がに堪えられなくなって思い切り抵抗した。 「いや!何考えてるの!?」 「あ、すまない、つい…」 「そういう事は後でいくらでも出来るでしょ!ここではいやらしい事しないで!」 「……わかった」 カールは素直に頷いてみせたが、心の中ではサラが言った『いくらでも』という言葉に妙にドキ ドキしていた。 (今夜は好きなだけって意味かな…?) カールはサラが聞けば怒りそうな事を考えつつ、今度はきちんとタオルで彼女の体を洗い上 げた。 そうして長い入浴時間を終え、風呂場から出て来た二人は今頃着替えが無い事に気付い た。 「どうしよう…」 「このままで行けばいいじゃないか」 「やだ、そんなの恥ずかしいもん」 「誰も見ていないから大丈夫だよ」 そう言うなり、カールはタオルを巻いただけの格好のサラをひょいと抱き上げ、上官用の個室 へ向かった。 「やだやだ、降ろして!」 「すぐ降ろすよ」 浴室を出てからずっとジタバタしていたサラをそっとベッドに降ろし、カールは彼女の隣に腰掛 けた。 とが ひど サラは頬を赤らめて口を尖らせていたが、そんな彼女の体に巻かれているタオルが酷く乱れ ていた為、カールは強引すぎたかなと少々後悔した。 「…ごめん、服取ってくる」 つか カールが立ち上がろうとすると、サラは彼の手を掴んで止め、再びベッドへ座らせた。 「もういいよ、このままで平気…」 「サラ…」 は カールは優しくサラを抱き寄せ、唇を重ねながらベッドに押し倒すと、彼女の体からタオルを剥 ぎ取り、一旦唇を離して見つめ合った。 「大佐になって初めての夜だね…。こんな大切な日に一緒にいられて、すごく嬉しい…」 「俺も君と一緒にいられて嬉しいよ」 「…優しくしてね、大佐殿」 「了解」 うず カールはにっこりと微笑み、サラの首筋に顔を埋めた。 それから数時間、サラの喘ぎ声は休む事なくロッジ内に響き続けた… 翌日、珍しくサラより先に目を覚ましたカールは少しまどろんでから、隣で天使の様な顔をして 眠る愛しい人を見つめた。 いたずら そうしてしばらくサラの無防備な寝顔を幸せそうに眺めていたカールだったが、ふと悪戯を思 もぐ い付くとシーツの中に潜り込んだ。 「う……ん………」 サラはカールの悪戯に直ぐさま反応し、かわいらしい声をあげた。 その声に気を良くしたカールは悪戯を更にエスカレートさせ、サラの体のあちこちを指でまさぐ った。 「や……ん…………あぁ…………」 サラは何度か声をあげた後ようやく目を覚まし、カールの悪戯に気付いて頬を赤らめた。 しかし嫌がりはしなかった為、シーツの中にいたカールはサラが目を覚ました事に気付かず、 悪戯を続けた。 「……、ん…………」 色っぽい声をあげるのは恥ずかしいので、サラが声をあげない様に頑張り出すと、カールはす ぐに異変に気付き、慌ててシーツから顔を出した。 「起きてたのか…」 「うん、さっき……」 や 「言ってくれたら止めたのに…」 「だって……動けなかったんだもん」 「…腰が痛いのか?」 「ううん、腰は大丈夫。ただ……イヤじゃなかったから動けなかったの」 「…そんな事を言われると、余計続けたくなってしまうな」 ふ カールが唇と唇が触れ合うくらいに顔を近づけて言うと、サラはクスリと小さく笑った。 「いいよ、続けても。その代わり、基地へ戻るのが遅くなってもいいと言うならね、大佐殿v」 サラの言葉にハッとなったカールは、とりあえず時計を見て時間を確認し、まだ余裕があると わかると嬉しそうに笑顔で振り返った。 「まだ時間はある」 「もぉ…。少しだけだよ?」 「ああ」 カールはコクリと頷くと、サラの体を愛おしそうに舌と指で愛撫し始めた。 ふく その行動に驚いたサラはすぐカールの顔を体から引き離し、頬を膨らませて怒り出した。 「していいのはさっきの続きだけなの!他の事はしちゃダメ!」 「…すまないが、今のも続きに含まれているんだ」 さんざん およ そう言ってカールは愛撫を再開し、サラを散々喘がせてから行為に及んだ。 た だ なか サラはカールが溜まったものを射すまでしばらく抵抗しなかったが、射し終えて膣から彼の存 在が消えると、急いで体をシーツで隠した。 「……朝からこういう事するの、良くないと思う」 「でも気持ち良かったよ。君は?」 「…………聞かなくてもわかってるクセに」 ひたい カールは朝日に似合う爽やかな笑みを浮かべ、サラの額にそっと口づけした。 敢えて聞かなくてもサラの反応を見るだけで、彼女がどう思っているのか手に取る様にわかっ たからだ。 その後二人は手早く身支度を整え、サラが作ったおいしい朝食を食べると、最後にキッチンや 使用した個室を綺麗に片付けた。 全てを終え、ロッジを出る頃にはもう太陽が真上に来ていたが、カールは焦る様子を一切見 せず、サラを研究所に送ってから基地へと帰って行った。 ●あとがき● またしても苦悩するカールを出してしまいました。 余程気に入っているパターンなのでしょう(笑) ですが、もう少しでカールの成長も終わりを迎えます。 もう少しと言いながら、いつになるかは謎です(爆) 今回の見所はカールが大佐に昇進した事と、カールの念願であったお礼なのですが、男らし く(?)いやらしい方向に話が流れて処理に困りました。 以前のカールならすぐに無理だと思っていたかもしれませんが、今回は別です。 大佐に昇進した事で、彼の中で何かが変わったのだと思います。 それは成長なのか何なのか…微妙な所ですね(笑) どちらにしても、大切な日に大切な人と一緒にいられて良かったね、というお話でした(身も蓋 もない事を書くなって…) ●次回予告● 第一装甲師団の隊長に就任したカールは、忙しい日々を送る様になりました。 そして予定通り、士官学校へ行く日にサラを迎えに国立研究所へ向かいます。 士官学校へ行けるのが余程嬉しいのか、サラは終始ご機嫌な様子。 一方、カールは士官学校で大変な思いをします。 第三十七話 「士官学校〜前編〜」 今夜はこの場所、二人占めだねvv <ご注意> 次の第三十七話「士官学校〜前編〜」は性描写に近い表現が出てきます。 お嫌いな方・苦手な方はお読みにならないで下さい。 |