第三十三話

「復旧」


懸命な復旧作業が続けられている帝都ガイガロスでは、カール達帝国軍だけでなく共和国軍

の人々の協力もあり、町は驚くべき早さで元の姿を取り戻しつつあった。

町が修復されると共に人々の表情にも笑顔が戻り、全てが順調に進んでいるかの様に見え
              も
たが、実はずっと揉め事の絶えない所が一カ所だけあった。

それはどこかというと……





「どうして全部帝国の木材なんだ!?」

「お前は何か思い違いをしているな。ここをどこだと思っている?帝都ガイガロスだぞ」
                                                                ことわ
「共和国にだって良い木材はある!だから俺がわざわざ発注しておいたのに、勝手に断ると

は何事だ!それが帝国のやり方なのか!?」

「そうだ、と言ったら?」
         どきょう
「ふん、いい度胸だ!そこへ直れ!決着を付けてやる!!」

復旧作業が行われている現場で今日も同じ口論が始まり、兵士達はやれやれといった様子

で二人の指揮官を眺めていた。
   けんかごし
終始喧嘩腰で大声を出しているのが、共和国軍大尉ロブ・ハーマン。

そのハーマンに正面から受けて立っているのが、帝国軍少佐カール・リヒテン・シュバルツ。
                   たび
この二人は顔を会わせる度に、この様な口論を繰り返している。

いい加減慣れてしまったので、誰も止めようとしない。

口論の最後には必ずと言って良い程ハーマンが力押しで終わらせようとするが、カールはい

つもまともに相手をしなかった。

ケンカには自信はあるが、無駄な事で体力を使いたくない。
                かこく                         た
そうでなくても、毎日過酷な肉体労働を続けていて疲労が溜まっているのだ。

それに長引けば、こちらが確実にフリになる。
                 なみはず                 いか
ハーマンは見た目通り並外れた体力を持っており、如何にカールでも勝てる可能性は低い。





「これだから共和国の軍人は筋肉バカと言われるんだ」
                                なんじゃく
「何だと!?帝国軍人なんか頭でっかちの軟弱野郎って言われているぞ!」

「ほぉ…、誰がそんな事を言っているんだ?」

「もちろん俺だ!」

「ふん、バカバカしい」
       あき
カールは呆れて怒る気にもなれず、テキパキと部下達に指示を出し始めた。

今回の口論の発端は木材。

デスザウラーによって破壊された建物を建て直す為に大量の木材が必要になったのだが、途

中で最初に用意した分が全て無くなってしまい、慌てたハーマンが急いで共和国へ発注する
                   きゅうきょ
と、それを知ったカールが急遽断りの通信を入れた。
       かん さわ                             しだい
その事が癇に障った様で、ハーマンが怒り出したという次第だ。
                                                        なお
カールとしては、手伝ってもらっているのに物資まで援助されては帝国の名折れ、と考えての

事だったが、その考えがハーマンにはわからないらしい。

帝国と共和国では軍人の考え方が全く違う。
                                               まね
その為、指揮官である二人が度々衝突してしまうという結果を招いていた。





「むむむ……シュバルツめ…」
                                   きびん              にら
ハーマンは部下達に適当に指示を与えつつ、機敏に動き回るカールを睨み付け、何とかして

勝敗を決める方法はないかと思案し始めた。

軍人ならでは、という事でゾイド戦を行いたいと思ったが、速攻皆に反対された。

必死に立て直している最中なのにまた破壊するつもりなのか、と。
             もっと                                 こぶし
ハーマンもそれは尤もな意見だとゾイド戦は諦め、今度は男らしく拳を使ったケンカをしようとし

たが、全く相手にされない。

どんな事も白黒ハッキリさせなくては気が済まないハーマンは数日間ずっと思案し続け、よう

やく名案を思い付いた。

復旧作業で勝負すればいいのだ。

丁度良い具合に、同じ様な構造の建物を二つ建て始めようとしていたので、それを利用する

事にした。





「よぉ、シュバルツ」

帝国軍に割り当てられたテント内で、カールが部下と打ち合わせをしていると、ハーマンがひ

ょっこり顔を出した。

「…ハーマンか、何の用だ?」

「相変わらず冷たい返事しか返さねぇな、お前は」

「お前だけがそう聞こえるのだと思うが?」

「……ま、今日はケンカをしに来たんじゃない。ちょっとした勝負を申し込もうと思ってな」

「勝負、だと?そんな事をしている暇があるのなら、さっさとお前の部隊に任されている地区の

復旧作業を終わらせろ」

カールは冷たく言い放ち、再び部下と打ち合わせを始めようとしたが、それをすかさずハーマ

ンが止めた。

「読みが甘いな、シュバルツ。勝負と言っても、内容は遊びでやるようなものじゃない」

「…どういう事だ?」

「今度同じような構造の建物を二つ建てる事になっただろ?その二つをそれぞれ共和国軍、

帝国軍が分かれて建てる。で、先に完璧な姿を取り戻した方が勝ち。これが勝負の内容だ」

「……なるほど、それで決着を付けようという訳か。お前にしてはなかなか良い案だな」

「お前にしては、は余計だ。どうだ?この勝負、受けるか?」

「俺としても、そろそろ決着を付けたいと思っていたところだ。その勝負、受けてやろう」

無事交渉が成立し、ハーマンは下準備をする為に急いで共和国軍のテントへ戻った。

そのテントには彼の部隊の副官であるオコーネルが待っていたが、勝負を申し込んできた事

を知っていたオコーネルは困った様な表情をして話し出した。

「ハーマン大尉、本当にシュバルツ少佐に勝つおつもりなんですか?」

「ああ、当然だろ」
                 わ
「どこからその自信が湧いてくるのかわかりませんね。シュバルツ少佐に勝てる見込みなん
 みじん
て微塵もないのに」

「勝てる見込みはあるぞ!その為にわざわざ勝負方法を建築にしたんだ。体力勝負になるだ

ろうから、俺達が断然有利だ」

「そうでしょうか…?私は不安でなりませんが……」
                                                         あかつき
「お前は心配性だなぁ。心配しなくても絶対大丈夫だ。シュバルツを負かした暁には、帝国の

軍人より共和国の軍人の方が優秀だって事を認めさせてやる!」

「はぁ〜……。わかりました、お好きなようにして下さい」

オコーネルは止める気も起きずにため息をつき、上官であるハーマンを残してテントから出て

行った。





カールもハーマンも、これ程までに誰かに対抗意識を持ったのは生まれて初めての事であっ

た。

二人は年が近い。

そして育った環境は違えども、境遇は非常によく似ている。
           ちゃくなん
シュバルツ家の嫡男として、軍人のエリートになるべく育てられたカール。

当然どこへ行っても『シュバルツ』の名がつきまとう。

共和国大統領の息子として、どんな人にも特別扱いをされてしまうハーマン。

常に自分よりも『大統領の名』が先に出る。

そんな二人だからこそ、これまで何でも素直に話せる友人が存在しなかった。

いや、そうならざるを得なかったのだ。

しかし今回はいつもと違った。

初めて出会った頃は戦時中だった為、そんな事を考える余裕など無かったが、改めて顔を合

わせた時、必ず先に出て来る『シュバルツ』と『共和国大統領の息子』の言葉が出なかった。
            あ
知ってはいても敢えて口にする必要はないと思っての事だった様だが、それが彼らの第一印

象を決定付けた。





こいつはそんな事を言う様なヤツではない。





カールとハーマンは互いに好印象を持った……と思った途端、ケンカが始まった。

感情を素直に言葉にしてしまうと、彼らは水と油、性格は正反対。

だから余計に馬が合うのかもしれない。

その実本当は仲が良いのだ、と彼らを見守る者達は皆そう思っていた。





勝負初日…
がれき              さらち
瓦礫を撤去し、何もない新地になった土地を目の前にして、カール率いる帝国軍とハーマン率

いる共和国軍が並行に整列した。

「俺達は全て共和国製のものを使う。お前達は帝国製のものを使うように」

「そんな事は百も承知だ。では始めるぞ」
                      ひとあわ
「そうだな。皆、帝国の奴らに一泡吹かせてやろうぜ!」

『おぉ〜!!』

共和国軍は全員が妙に盛り上がっていた。

それに対し、帝国軍の兵士達は非常に落ち着いた様子で、指揮官であるカールと同じ様に呆
                           す
れた表情で共和国軍の面々を見、直ぐさまテキパキと作業を始めた。
好対照(笑)



勝負開始から一週間後…
                                       いわゆる
ハーマンが帝国軍側の進行具合を見にやって来た。所謂、敵情視察というヤツである。

「なんだ、まだ全然進んでないじゃないか」
                             つぶや
ハーマンは帝国軍の兵士達を見ながら呟き、彼らを指揮している男の元へ向かった。

当然、小言の一つでも言うつもりだ。

「何の用だ?用がないなら、さっさと自分の持ち場へ帰れ」

非常に頭の切れる帝国軍少佐は、ハーマンの表情をチラリと見ただけで何をしに来たのか察

し、冷たくあしらった。
                                                           とど
ハーマンはやれやれと肩をすくめたが、カールの言葉には従わずにその場に留まった。
                            はかど
「偉そうな事を言っていた割に作業が捗っていないようだな、シュバルツ」
         ふしあな
「お前の目は節穴らしいな。こっちは全て予定通りに進んでいる。人の心配をしている暇があ

るのなら、自分の心配でもしていろ」
                     いっさい
「はっはっはっ!俺達の方は一切心配ない、もう八割方終わっているからな」

「ほぉ、それは面白い冗談だ」
                                                  どぎも
「冗談じゃない。嘘だと思うなら、自分の目で確かめてみろ。きっと度肝を抜かれるぜ!」
                        ひ
そんな暇があるかと、カールが冷ややかな目でハーマンを睨むと、彼らの元へオコーネルが

慌てた様子で駆け込んで来た。

「ハーマン大尉!大変です!!」

「そんなに慌ててどうした?オコーネル」
             くず
「ひ、東側の壁が崩れてしまったんです。しかもその衝撃で柱も何本か倒れて…」

「なにぃ〜!?」

オコーネルの報告にハーマンは目を見開いて驚き、その驚きと同時に隣から冷た〜い視線を

感じた。

振り返ると、もちろんカールが不敵な笑みを浮かべていた。
とっかん                                                        ていねい
「突貫工事並の適当さで建てるからそういう事になるんだ。我々のように土台から丁寧に建て

ていれば、絶対そんな事にならなかったのにな」

「む、むぐぐ…」

「壁が崩れて柱が倒れた、という事は一からやり直しだ。共和国から物資をどんなにたくさん

発注しても、それでは追いつかなくなるぞ」

「そ、それくらいわかっている!行くぞ、オコーネル!」

ハーマンは言い返す事も出来ずに、オコーネルを連れて足早に去って行った。





勝負開始から数週間後…

帝国軍と共和国軍はほぼ同時に作業を終えた。

帝国軍側は作業が非常に丁寧なのだが、その分時間が掛かってしまった。

共和国軍側は適当な作業の為に何度もやり直しをしつつも、持ち前の素早さのお陰で帝国軍

と同じ時間で何とか建てる事に成功した。

やり方は違えども、結局は同時に終わってしまった為、勝負は引き分けとなった。

「くそ〜、これでは勝敗が付かないじゃないか!」

ハーマンが悔しそうに呟いていると、ふとカールと彼の部下の会話が耳に入った。

ガイガロス内の作業が全て終わった、との報告であった。

「もう全部終わったのか!?」
                                              ひそ
ハーマンは驚きの余り大声で尋ね、その大声にカールは眉を顰めたが、「そうだ」と言いたげ

な顔で頷いてみせた。

「いつの間に…。少し前まではまだ半分くらいしか終わってなかっただろ?」

「勝負をしている間に、他の部隊からたくさんの応援が駆け付けてくれてな。だから比較的早

く作業を終える事が出来たんだ」

「へぇ、そうだったのか。しかし、どうしてあの兵士はお前に報告をしていたんだ?応援が来た

って事は、その部隊の隊長も一緒に来ているんだろ?わざわざお前に報告する必要なんてな

いと思うが…」
                                          ないがし
「いや、どの部隊も隊長は来ていない。残っている部下を蔑ろにする訳にはいかんからな。復

旧作業の責任者は俺だから、皆俺に任せてくれたんだ」

「……!?」

ハーマンは思わずギョッとなり、ものすごい事をさらりと言ってのけるカールを見つめると、勝

負をしている間の彼の行動を思い出してみた。

指示を出している姿は何度か見受けられたが、よく考えると勝負現場には余り姿を見せなか

った。
                                       ち
見せなかったという事は、その間はガイガロス中に散らばっている兵士達に指示を与えに行っ

ていたと思われる。

そう思うと、ハーマンは何となく「負けた」と感じた。

自分は目の前の事だけに一生懸命であったのに、カールは周囲の全てに気を配り、復旧作

業を短期間で全部終わらせてしまったのだ。

負けを認めざるを得ない。
                さ
が、そんな事は口が裂けても言わないハーマンであった。




                                         そろ
勝負を終えた日の夜、帝国軍と共和国軍の兵士達は揃って広場に集まり、復旧作業が終了
                 あ
した事に対する祝杯を挙げた。

少し前までは敵同士であった者達が、今では昔からの友人かと思わせる程、楽しそうに酒を
 く
酌み交わしながら談笑し合っていた。
            と
共に何かをやり遂げると、人は誰しも親近感が湧くものなのだろう。
にぎ
賑やかに騒いでいる部下達を笑顔で眺めつつ、カールは帝国にある酒の中で一番アルコー

ル度の高い酒を口に運んだ。

度の低い酒を大量に飲むよりも、度の高い酒を少しずつ飲む方が好きな様だ。

「よぉ、シュバルツ。飲んでるか?」
すで
既に出来上がっているのでは、と思わせる程真っ赤な顔をしたハーマンがカールの元へやっ

て来た。

「ああ、程々にな。お前はどうだ?」
             から
「俺はもう五本は空にしたぜ!お前もそんなチビチビ飲んでねぇで、もっと男らしくグイッと飲め

よ!」
                                                 あ
グイッと飲むのが本当に男らしいのか疑問であったが、カールは敢えて追求せず、自分が飲
          びん
んでいる酒の瓶を持ち上げてみせた。

「お前も飲むか?」

「おっ!?お前がそんな事を言うとは意外だな〜。明日雪でも降ってきそうだぜ」

「飲むのか飲まないのか、どっちなんだ?」
     ちょうだい                              つ
「有難く頂戴しますとも!いや〜、帝国軍の少佐殿に注いでもらえるなんて光栄ですなぁ」

「ふん、みえみえの嘘を付くな」
                               ぶれいこう
カールは少々不機嫌になりつつも今夜は無礼講だと思い直し、ハーマンが差し出したグラス
     そそ
に酒を注いだ。
     つつし
「では、謹んで飲ませて頂きます」

ハーマンは不自然な程神妙な顔つきで酒を口に運び、一気に飲み干したかと思うと、そのま

まバタンと後ろに倒れてしまった。

「この程度の酒で倒れるとは…。まだまだ修行が足りんな、ハーマン」

カールは倒れたままピクリとも動かないハーマンを眺め、この状態で放置しておいたらどうな

るだろうかと良からぬ事を考えていた。

すると、どこからともなくオコーネルと数人の兵士達がやって来て、カールに向かって何度もお
 じぎ
辞儀をしてからハーマンを運び去って行った。
             うらや
出来る副官がいて羨ましいと思いながら、カールは再び酒を飲み始めた。





翌日、ハーマン達は共和国へ帰る事になった。
           お
互いに別れを惜しむ者などいる訳がない為、兵士達は笑顔でガッチリと握手し合った。

カールとハーマンは…

一応握手はしていたので、兵士達はほっと胸を撫で下ろした。

が、最後の最後まで勝敗にこだわっていたハーマンは握手をした手に力を入れ、カールの手
     くだ
の骨を砕かんばかりに握りしめた。

さすがに力勝負では圧勝だろうと思っていたのに、カールは瞬時にハーマンの腕をひねり、立

場が完全に逆転してしまった。

「いててっ!離せ!」

「お前が悪いのだろう?こんな時まで子供じみた事をするんじゃない」

「むぐぐ……」

カールの言う通りだった為ハーマンは何も言い返せなくなり、ただ睨む事しか出来なかった。
                     ゆる                   たた
すると、カールは少し表情を緩め、ハーマンの肩をポンと叩いた。

「力では確実に俺の負けだろうから、そう睨むな」

「……はぁ!?」

「何だ、その間の抜けた返事は?」

「い、いや、お前が素直に負けを認めるとは思わなかったからよ…」
 せっかく                        せいぜい
「折角勝てるものが一つだけあったんだ。精々その長所を伸ばす努力をするんだな」
              ほ
「………それって褒めてないだろ?」

「褒めたように聞こえたか?」

「〜〜!シュバルツ〜!」

その日ハーマンの声がガイガロス中に響き渡り、最終的にはオコーネルと数人の兵士達が彼

を無理矢理引っ張って共和国に帰ったという…



                           *


                                     たいかんしき
予定の期日通りに復旧作業が終わり、ルドルフの戴冠式の日取りが正式に決まると、より一

層ガイガロス中が賑やかになり、国民総出で戴冠式の準備が開始された。
                                                        お
その準備もカールは中心となって働き、帝国全体の復旧に向けて労力を惜しまなかった。




                    せま
戴冠式まであと数日と日が迫ってきた頃、準備は急ピッチで進められ、カールも慌ただしく動

き回っていた。

どんな時でも相変わらず指揮官として指示を出し、自身も様々な所で働くカールであったが、

そんな作業途中の彼を呼び止める者がいた。

振り返ると、そこにはカールの部隊の兵士が笑顔で立っていた。

「少佐に通信が入っております」

「通信…?誰からだ?」

「行けばわかりますよ」

兵士の満面の笑みが多少気になったが、カールは通信機のあるテントへ足早に向かった。

そのテントにある通信機は小さいがモニターが付いているものだったので、操作するとすぐに

相手の姿が映り、カールは自然と笑顔になっていた。
             いと   ひと
通信相手は彼の愛しい女性だったのだ。

「サラ…」

「カール、忙しい時に通信なんてしてごめんね」

「いや、いいんだ。こんな風に話せるだけで嬉しいから」

「ふふふ、もっと嬉しい知らせがあるの」

「嬉しい知らせ?」

サラはかわいらしい仕草でコクリと頷き、満面の笑みを浮かべた。

「あのね、ルドルフ殿下から招待状を頂いたの。だから戴冠式と祝賀パーティが終わったら、
                                             ねと
あなたに会いに行こうと思って…。今、ガイガロスの近くで寝泊まりしてるんだよね?行って

いい?」

「祝賀パーティなら俺も行くけど?」

「え…、ほんと!?」

「俺も殿下に招待状を頂いたんだ」

「じゃあ、パーティ会場で会えるのね?」

「ああ、思ったより早く会えそうだな」

「うん、嬉しい!パーティ楽しみにしてるねv」

二人は笑顔で別れの挨拶を交わし、通信を終えた。
                                        こら
カールは嬉しさでつい表情が緩んでしまうのを必死に堪えつつ、戴冠式の準備が進められて

いる広場へ戻った。





一方、サラはカールとの通信を終えると、すぐ自室へ向かってクローゼットのドアを開け放ち、

数着あるドレスの中からどれを着ようか悩み始めた。
              きゅうくつ
今までドレスなんて窮屈でイヤだと思っていたが、今回は全くそんな風に思わなかった。

久し振りにカールに会えるのだから、きちんとした格好をしたかったのだ。
                   しゃれ     つか
サラは生まれて初めてお洒落に気を遣い、ドレスだけでなくアクセサリーも入念に選ぶのだっ

た。










●あとがき●

今回は少々趣向を変えて友情話に挑戦しました。
男、男……あっちを見てもこっちを見ても男………
あぁ、潤いがほしい…!!
カールとハーマンがすんなり良い友達になるとは思えなかった為、友情話を考えたのですが、
書いてビックリ!女性が登場しない!!
私に女性が出て来ない話を書け、と?
最後には我慢出来なくなってサラに登場してもらいましたv
やっぱり私には男性中心のお話は無理ですね…
潤いがないと生きていけない人間ですから(笑)
これからも必ず女性が出て来るお話になると思います。
私が堪えられたら書くのですが……たぶん無理です。
逆に女性だけのお話も書けないと思いますので、双方が同じくらい出て来る様に頑張りますv

●次回予告●

ようやく全ての準備が整い、ガイガロスではルドルフの戴冠式が始まりました。
が、その頃サラはまだ研究所にいました。
そう、いつもの悪癖が久し振りに出てしまったのです!
慌ててガイガロスへ向かうサラ。そんなサラを祝賀パーティの会場で捜すカール。
二人は無事出会えるのでしょうか?
第三十四話 「戴冠式〜前編〜」  ただいま…