第二十二話
「花」
レッドリバーでの戦いから数日経ったある日、カールは部下に適当な理由を言って基地を抜け 出した。 もう当然と言っても良い程だが、彼の向かう先は帝国国立研究所である。 かたわ セイバータイガーを走らせるカールの傍らには、小さな鉢植えが大事そうに置かれていた。 こ その頃、国立研究所ではサラが一人で研究室に籠もり、何やら怪しい実験を行っていた。 実験はサラの趣味なのだ。 すると、そこへ突然ナズナがやって来て、サラの背後でクスクス笑い出した。 たくら いつもなら実験中は怖がって誰も研究室に寄りつかないのに、今日は何を企んでいるのだろ うと、サラは振り返らずに話し掛けた。 「何か用?背後で笑われると、気持ち悪いんだけど」 「博士、良いお知らせで〜す!博士に会いたいって、シュバルツ少佐がいらしてますよv」 「あらそう、良かったわねぇ」 サラはナズナの話をきちんと聞く気がなかった為、適当な返事をした。 が、カールの名前を言われた様な気がして、すぐに聞き返した。 「……今、何て?」 「だからぁ、博士に会いに少佐がいらしてるんですよぅ」 ナズナがため息混じりにもう一度同じ事を言うと、サラはようやく実験を中断して振り返った。 「彼はどこにいるの?」 「第一客室でお待ちになってますv」 「そう。じゃ、行って来るわ」 ゆる こら サラは久し振りにカールに会える喜びで表情が緩んでしまうのを必死に堪えつつ、急いで第 一客室へ向かおうと歩き出した。 「邪魔は致しませんから、ごゆっくりどうぞv」 研究室を出た所で、背後からナズナにそう声を掛けられた。 顔を見なくてもわかるくらい、嬉しさが伝わる声で。 ナズナの一言を聞いた途端、サラはガクッと力が抜けたが、無視して廊下を進んだ。 はや おさ やがて研究室から少し離れた所にある第一客室に到着すると、サラは逸る気持ちを抑えよう と大きく深呼吸し、極力ゆっくりとドアの前に立った。 自動ドアなので当然ドアは自動的に開き、サラが中に足を踏み入れると、カールは笑顔で彼 女を出迎えた。 数ヶ月振りにモニター越しではないサラに会う事が出来、カールは嬉しさの余り彼女を抱きし めたくなった。 しかし一度でも抱いてしまうとしばらく離せなくなりそうな為、とりあえず用件が済むまでは我 慢する事にした。 「こうして会うのは久し振りだね」 「うん」 二人は幸せそうに微笑み合い、客室のソファーに仲良く並んで腰を下ろした。 「今日はどうしたの?」 「君に預かりものを頼もうと思って来たんだ」 「それって…このお花の事?」 サラは尋ねながら、テーブルの上にちょこんと乗せられている鉢植えをそっと触った。 カールはにっこり笑って頷いたが、すぐ悲しそうな表情になった。 「……しばらく世話出来そうになくてね」 「……………」 あ 再び大きな戦いが起きると予測していたカールだったが、サラには敢えてそう言わなかった。 サラなら言わなくてもわかってくれる、と思ったからだ。 カールが思った通り、聞かなくても全てを理解出来たサラは、一瞬笑顔が消えて黙り込んだ が、思い直した様に微笑んでみせた。 「わかったわ、私に任せて」 「ありがとう」 「…あ、でもただ預かるだけじゃ、面白くないわねぇ」 いたずら サラは少し考え込むと、突然悪戯を思い付いた子供の様な表情を浮かべた。 「よし!私が開発した超強力植物栄養剤で、この黒百合をすごい数に量産しちゃおう!!」 「…りょ、量産!?」 「ええ。野原一面が黒一色に染まるの!皆驚くだろうなぁ…」 サラは量産した黒百合を想像し、ウットリとした目になった。 彼女の場合、花の美しさよりも皆を驚かせる方が重要らしい。 あっけ サラの様子に呆気に取られていたカールは、しばらく経ってからハッと我に帰り、慌てて止め に入った。 「い、いや、量産はしないでくれ」 カールの言葉にサラはピタッと動きを止めると、クスクス笑い出した。 「やだなぁ、カールったら。冗談だよ、じょ〜だんv」 サラが言うと本気に思えて不安だったが、カールもつられて笑顔になっていた。 (相変わらず、だな…) 周りがどんなに変わっても、サラだけはいつもと変わらぬ笑顔を見せてくれる。 いや その笑顔のお陰で、彼の心がどれだけ癒されている事か… そうしてカールが呆然と見とれていると、サラの表情が先程の子供の様な笑顔から非常に優 しい笑顔に変わり、黒百合を眺めながら話し出した。 「でもね、カール。量産はしないけど、私は……二輪にしたいって思ってるの」 「二輪に…?」 「一輪だと…何だか淋しそうだから……」 サラが言った『淋しい』という言葉がまるで彼女の本心の様な気がして、カールはこのままい つまでも二人でいられたらどんなに幸せだろうかと思った。 ささ だが彼は軍人であり、その全てを皇帝に捧げている身。 かな その様な事をいくら願おうとも、叶うはずもない。 サラはその事を充分承知しているからこそ、『傍にいてほしい』とも『淋しい』とも彼には決して 言わなかった。 もし言ってしまえば、大切な人を困らせる事になる。 だったら自分が我慢すればいい。 そんな風に考える女性なのだ、とカールはしみじみ感じた。 軍人にとってこの上ない程、最高の恋人だろう。 しかし…… たまには……… わがまま 我儘でも言って、自分を困らせてほしい、とも思う。 (一輪より二輪……一人より二人、か…。俺達もずっとそうありたいな……) 体は離れていても、心は常に共にいたいと心から願うカールであった。 のぞ ふと気付くと、サラが心配そうにカールの顔を覗き込んでいた。 考え事に集中し過ぎた様だ。 慌ててカールが笑ってみせると、サラはほっとした様ににっこりと微笑んだ。 その微笑みに気持ちを抑えられなくなったカールは、もう我慢する必要はないとサラを強く抱 き寄せ、そっと唇を重ねた。 いと つな 一度だけではあったが、二人は愛しい人との繋がりを確認し、幸せそうに微笑み合った。 口づけに続けてカールが優しく頬を撫でてやると、サラはくすぐったそうに身をくねらせた。 「…ね、二輪にしていい?」 「ああ、もちろんだ」 「じゃあ、二輪目が咲いたらすぐ連絡するねv」 「楽しみにしてるよ」 サラは嬉しそうに微笑み、今度は彼女の方からカールに抱きついた。 ほうよう カールはサラを優しく受け止め、しばらく夢中で抱擁し合ったが、ふと壁に掛かっている時計を 見ると、ピタッと動きを止めた。 「そろそろ戻らなくては……」 「………もう…?」 「すまない。無理を言って出て来たから、余り長居は出来ないんだ…」 「そっか…」 サラはカールの腕の中でシュンとなり、笑顔のままでいようと思っていたのに、思わず目を伏 せていた。 そんなサラを元気付けようと、カールはとても明るい笑顔で話し始めた。 いや 「今度来る時は、君に嫌がられるくらいゆっくりさせてもらうよ」 「……うん!」 サラも明るい笑顔で頷き、二人はソファーから立ち上がって歩き出した。 「今度っていつになりそう?」 「ん〜、そうだなぁ……」 カールはサラの腰に手を回しつつ、少し考え込んだ。 「休暇が取れたら、かな」 「えぇ〜!?それじゃあいつになるかわかんないよ」 「………確かに」 あいまい 自分の答えが余りにも曖昧だった為、カールは苦笑いを浮かべた。 これから戦いが激化すれば、休暇などと言っていられなくなるだろう。 カールがどうしようか悩み始めると、サラは突然早足で歩き出し、彼の前でクルリと振り返っ た。 「心配しなくても大丈夫。あなたが来れないなら、私が行くからv」 「それは助かる。…でも、無茶だけはしないでくれよ?」 「了解しております、少佐殿v ちゃんと様子を見計らって行くね」 「ああ。……ありがとう」 ごまか カールが心からの笑顔で礼を言うと、サラは照れ臭そうにもじもじし、照れを誤魔化そうと彼の 腕をギュッと抱きしめた。 ふく はさ すると、腕が豊満な胸の膨らみに挟まれる形になってしまい、カールは頬を真っ赤にしたが、 サラはそんな事とは全く気付かずに元気良く歩き出した。 カール達が研究所の正面玄関へ向かっていると、後ろからステアが慌てて追い掛けて来た。 「博士〜!少佐、もうお帰りなんですか?」 「うん、そうだよ」 「えぇ〜!?期待していたのに〜!」 ステアが思わず口にした言葉にサラはピクッと反応し、白い目で彼女を見つめた。 「へぇ〜、期待ねぇ。一体何を期待していたのかしら?」 やっき 満面の笑みで尋ねる姿に恐怖を感じ、ステアが必死に誤魔化そうと躍起になっている姿を見 ると、サラは仕方ないなという表情をし、小さくため息をついた。 「私、彼を見送って来るから、あなたはちゃ〜んと仕事していてね」 「は、は〜い」 ステアは苦笑いを浮かべ、その場からそそくさと立ち去った。 あき そんなステアの後ろ姿を眺めながら、サラは呆れた様に肩をすくめた。 ひやく 「まったく……また勝手に話を飛躍させるんだから…」 にぎ 「ここはいつ来ても賑やかだね」 カールが場違いな程のほほんとした口調で言ったので、サラは苦笑して首を横に振った。 「賑やかなんて、かわいいものじゃないわ。いつもは大騒ぎしてるんだよ」 ずいぶん 「あはは、大騒ぎか。俺の所とは随分違うなぁ」 「違って当然だよ。大騒ぎしてる基地なんて気持ち悪いもん」 「だろうな」 二人は大騒ぎする基地を想像してしまい、心底おかしくなって思い切り笑い出した。 ひとしき そして一頻り笑い終えると、サラはカールに聞きそびれた事があるのを思い出した。 「さっき聞くのを忘れていたんだけど、どうして黒百合を育てようって思ったの?」 「……強引にプレゼントされて、やむなく」 「プレゼント!?」 サラが目を丸くして驚いた為、カールは慌てて言い直した。 「先日母から送られてきたものなんだ。だから世話しない訳にはいかなくて…」 「カール、どうしてそんなに慌てているの?」 「え、いや、その……」 サラは顔を真っ赤にしているカールの目をわざと覗き込み、意地悪そうな笑みを浮かべると、 彼の腕をより一層強く抱きしめた。 たと 「例え女の子からのプレゼントでも、私は全然構わないわよ?」 「だ、だから……本当に母から…」 「わかってるわ」 さえぎ サラはカールの言葉を遮る様に言い、にっこりと微笑んだ。 「あなたが嘘をつけない性格だってわかってる。ちょっと意地悪してみたくなっちゃっただけな の、ごめんね」 すんなりと謝られてしまい、どう返事を返せば良いのかわからなかったカールは、とりあえず 笑ってみせた。 かか するとサラはプッと吹き出し、お腹を抱えて笑い出した。 「カールったら良い人すぎるよ。意地悪されたら、普通は誰だって怒るものなのに」 「そうか?」 「そうだよ」 「じゃあ、怒ろうかな」 は そう言うなりカールは強引にサラの体を壁に押さえ付け、吐く息がかかる程の距離まで顔を近 づけた。 |
突然の出来事に驚いたサラは頬を赤らめ、カールはそんな彼女の唇にそっと指をあてがうと、 口を少しだけ開かせた。 「…本当に怒ってる?」 「ああ、だからこうして…」 みずか ふさ から カールは開かせたサラの口を自らの口で塞ぎ、強引に舌を絡め始めた。 「…ん………」 激しく絡んでくる舌にサラは一瞬顔を離しそうになったが、意地悪をしたという気持ちからカー ルに抵抗出来ず、濃厚な口づけを受け続けた。 やがて口づけが終了すると、サラは気持ち良さで立っていられなくなり、カールに体を支えて うる もらいながら、潤んだ瞳で彼の顔を見上げた。 「今の…怒っているからしたの?」 「ああ、そうだ」 「怒っているならしないと思うけど…。どちらかと言えば、好きって気持ちを表現する為の行動 なんだし……」 「君は何でもお見通しなんだね」 さわ カールは爽やかに笑って言い、再びサラを優しく抱き寄せた。 誰にでもわかりそうな事であったが、サラは何も言わず、幸せそうにカールに身を任せた。 その頃、仕事を再開しているはずのステアは………何故か机に突っ伏していた。 「あ〜あ、つまんな〜い!」 「まさか、こんなに早く帰っちゃうなんて思わなかったねぇ」 かけ 「これじゃあ、賭をしていた意味が全くないわ!!」 「せっかく盛り上がっていたのに、結果は全員が負けだもんねぇ」 あいづち ステアの隣で、ナズナが相槌を打ちながらコーヒーを入れ始めた。 今から約一時間前……丁度カールが研究所へやって来た頃。 ステア達助手の面々は食堂に集まり、ある賭をする事にした。 賭の内容は『今夜二人はどうなるか?』 ステア達はそれぞれ様々な内容を発表し、賭ける金額も提示した。 と 全員カールが研究所に泊まる事を第一条件にし、その先を考えていた。 よって全員が負け。 カールが研究所に泊まる事なく、帰ってしまったからだ。 国の情勢を余り知らないステア達にとっては、カールの行動は不満だらけであった。 せっかく 折角遊びに来たのだから、泊まっていってもいいはずだ。 …と、全員が思っている辺り、国立研究所内は大変平和であった。 サラの努力のお陰だったりするのだが… 「私が賭けた内容は、すっっっごく良かったんだよ!」 「どんなのだったっけ?」 「ふふふ、仕方ないわね。もう一度話してあげるわv」 ステアは椅子から勢い良く立ち上がり、一人二役で賭の内容を演じ始めた。 ◆ステアが考えた『今夜二人はどうなるか?』◆ なお サラの自室で何故か軍服を乱れさせているカール。胸元が見えていると尚良い。 ささや カールはサラを強引に抱き寄せ、にやりと笑いながら耳元で囁く。 カール「今夜はお前を離さないぜ」 サラ「カール……。ダメよ、皆がいるのに…」 カール「ステア達(何故か名前で呼ぶ)なんかどうでもいいだろ。それとも、俺の言う事が聞け ないのか?」 や サラ「…………。いやって言っても、止めないクセに……」 カール「わかってるなら、もう何も言うな」 カールはサラを抱き上げ、そのままベッドへ………暗転。 「な〜んてネ、いや〜ん!ス・テ・キvv」 たた ステアはノリノリでカールとサラを演じ分け、興奮の余り机をバシバシ叩いた。 一方、ナズナはコーヒーを一口飲み、ゆっくりと立ち上がった。 「ステア、それじゃあ少佐が別人だと思うよ?私が賭けた内容はねぇ…」 今度はナズナが賭の内容を演じ始めた。 ◆ナズナが考えた『今夜二人はどうなるか?』◆ 夜になり、サラの自室へとやって来たカールとサラ。 すると何を思ったのか、突然サラが服を脱ぎ始める。 薄手のキャミソール姿になったサラは、頬を赤らめつつカールに抱きつく。 サラ「カール、お願い…。今夜はずっと私の傍にいて……」 カール「サ、サラ…」 サラ「一人じゃ………淋しいの……」 あふ ここでサラ、瞳から涙を溢れさせる(演出) 「えぇ〜!?博士がそんなに甘えるかなぁ?しかも泣くの?」 「二人っきりの時は案外そうかもしれないじゃない。普段誰にも甘えていない分、少佐にだけ は甘えるって訳よv」 ふく ナズナはステア以上に想像を膨らませ、完全に一人の世界に入り込んでしまうと、キラキラと した笑顔で先程の話の続きを始めた。 「博士が甘えると、途端に少佐はクラッときちゃうの〜。こうして自制心を失った少佐は博士を ベッドへ押し倒し……キャッ☆やだぁ、どうしようvv」 「そうね、どうしようかしら」 突然背後から声を掛けられ、ステア達が慌てて振り返ると、そこにはサラが笑顔で立ってい た。 恐いくらい、満面の笑顔だ。 「は、博士…!」 「いつからそこに…?」 「……まだ仕事してないの?」 「は…………い、いえ、あの、その…あははは……」 二人は慌てて立ち上がり、言い訳もせずに笑って誤魔化そうとした。 や つぶや しかし今更笑うだけで誤魔化せる訳がないので、サラは微笑むのを止め、無表情で呟く様に 言った。 「早く仕事しなさい」 『は、はい!!』 無表情で言われると余計に怖さが増し、ステアとナズナは急いで仕事を再開した。 * その日の夜、サラは研究室で黒百合を眺め、幸せそうに微笑んでいた。 つい先程まで資料をまとめていたのだが、黒百合が目に入るとどうしても手が止まってしまう 為、もう仕事は中断しようと決意し、眺める方に集中する事にしたのだ。 が、その幸せな時間を奪う様に誰かから通信が入った。 カールではない。 こんな時間に誰だろうと思いつつ、サラは応答する前に相手が誰なのかを確認し、わかるとガ クッと力が抜けて頭を押さえた。 通信相手はあの、帝国軍元帥ギュンター・プロイツェンだったのだ。 ゆううつ 前々から何度も彼の研究所へ来る様に勧誘を受けていたので、今回もそうだと思うと憂鬱だ ったが、出ない訳にはいかなかった。 ささい そこ どんなに些細な事でも、プロイツェンの機嫌を損ねてしまったら、国立研究所がどうなるかわ からないからだ。 サラは少し長めに深呼吸し、心を落ち着かせてから応答した。 「久し振りだな、クローゼ博士」 「はい、お久し振りです、プロイツェン閣下」 「その後、研究の方は順調かね?」 「ええ……まぁ、一応…」 くつじょく 国立研究所に勤める研究員の大半を引き抜いた張本人に、そんな事を聞かれるのは屈辱的 であった為、サラは曖昧な返事しか返さなかった。 すると、プロイツェンはにやりと不敵な笑みを浮かべ、いつもの本題に入った。 「クローゼ博士、そろそろ良い返事を頂きたいのだが?」 「…閣下、何度おっしゃられても、私はそちらへ行く気はございません」 いか 「君はまだわかっていないらしいな。私の研究所へ来れば、如何なる研究も何不自由なく出 来るのだぞ?」 や 「何とおっしゃられようと、私はこの国立研究所を辞めるつもりはありません」 そうめい 「君のように美しく聡明な女性ならば、自分の才能をより発揮出来る環境がどこであるか、も うわかっているはずだ。宰相殿からの援助も、多くは望めないのだろう?」 「…………」 確かにプロイツェンの言う通り、国立研究所の財政はゆっくりとではあるが困難になってき ていた。 帝国の宰相であるホマレフから援助を受けてはいるが、彼の立場も苦しいものになっていた 為、これまでの様に研究を続けるのは不可能であった。 いず 「ふっ…まぁいい。何れ君も私のものになる時が来るだろう。その時を心待ちにしている、で は…」 プロイツェンが一方的に話し続けて通信が終わり、サラはふぅと長いため息をついた。 たび もう何度勧誘されたか覚えていないが、その度にきちんと断っているのに、いい加減諦めてほ しいと思った。 しかし今回の通信でのプロイツェンはいつもと違い、随分と強気の態度であった。 ふ 皇帝が床に臥してから、プロイツェンが更に力を持つ様になったのは知っていたが、これ程ま でに余裕を見せつけられるとは正直思わなかった。 このままでは、さすがに断り切れなくなってしまう。 早急に何か手を打たなければならないだろう。 かた サラは父が創設した国立研究所を絶対に守り抜こうと、堅く心に誓うのだった。 ●あとがき● 私の小説では、黒百合は母から貰ったものという事にしました。 カールが自分で買い求めたとは考えられなかったからです。 アニメでの黒百合は演出としては失敗だったと思いますが、出て来た以上使わない訳にはい きません。 とりあえずイメージカラーの黒を定着させる為に一役買った、と思う事にしています。 二輪になるのが楽しみですねぇv 今回ステア達が怪しい賭をしておりましたが、そこで二人のカールとサラに対するイメージの 違いが浮き彫りになりました。 一応整理してみると… *ステアの場合* カール→妙にワイルドな性格で、サラにすぐ迫る。しかも鬼畜(爆) サラ→不自然なくらい従順。カールには絶対に逆らえない。彼がする事は何でも受け入れる。 *ナズナの場合* カール→実際の性格に近いものはあるが、強固な精神を失っている。よって抑えが効かず、 すぐ欲情してしまう(死) サラ→妙に甘えん坊。カールの前では何故か服を脱ぎたがる。そして迫る。体を必要以上に 密着させるのが好きで、カールの心を燃え上がらせる(笑) どうしてこんなイメージになったのかなぁ…?と思います。どちらも歪んでますよね(苦笑) でもワイルドなカールは見てみたい…。 今度書いてみようかな…って、彼の性格ではワイルドは無理ですね。 いつか書いてみて、大丈夫そうなら公開するつもりです。 内容がいけない方向へ行ってしまいそうですが(笑) ●次回予告● 帝国軍の共和国への侵攻は次第に激化し、カールも新たな戦地へ向かう事になりました。 マルクスの部隊と連携し、共和国軍の戦術拠点の一つであるクロノス砦を落とす作戦を立て たカール。 しかし作戦開始間際になって、突然作戦内容が変更されてしまいます。 プロイツェンが裏から手を回したに違いありません。 カールは腑に落ちないまま、マルクスの部隊が駐留する町へ向かいます。 第二十三話 「戦い〜前編〜」 …戦争は楽しいか? |