第十八話
「旅行〜前編〜」
ごと カールとサラは休暇毎にデートを重ね、恋人同士としての日々を満喫する毎日を送っていた。 会えない時間がどんなに長くても、会える時間を大切に大切にしていた為、二人には毎日会 っている様な感覚すら感じられた。 毎日連絡を取り合っている訳でもないのにそう思えるのは、きっと二人の心がいつも互いの傍 にいるからだろう。 きずな それ程、二人の絆は深いものになっていた。 そんな日々が数ヶ月程続いたある日… 休暇を取ったカールから、いつもの様に通信が入った。 サラはまた楽しいデートが出来ると喜んで応答すると、モニターに映ったカールは、心なしか いつもより嬉しそうな表情をしていた。 「やあ、サラ」 「どうしたの?何かいい事あった?」 「ああ、今度の休暇が連休になったんだ」 「え?連休?」 カールは心の底から嬉しいらしく、深く頷いてみせると、途端にサラにも嬉しさが伝染し、満面 の笑みを浮かべた。 ここ半年程のカールの努力が実を結んだ結果、軍人になって初めて連休を取る事が出来たの だから、その喜びも当然大きい。 「それで、サラ。頼みがあるんだ」 「なぁに?」 と 「出来ればその連休の時に…研究所に泊めてもらえると有難い。行ったり来たりするのはさす がに面倒だからね」 「別にいいけど、そうなったらステア達が夜通し騒ぎそうよねぇ…」 カールにしては非常に大胆な申し出であったが、その事には一切触れずに、サラは何か良い 案はないかと考え込むと、思ったよりすぐ名案を思いついた。 「せっかくの連休なんだし、もっとゆっくり出来る場所へ行かない?」 「ゆっくり出来る場所…?……ん、そうだな。じゃあ、どこへ行こうか?」 なお 「え〜っとねぇ…、ゆっくり出来て、尚かつ疲れが取れる所と言えば、やっぱり温泉かな」 「温泉、か…。行った事ないなぁ」 「私は何度かあるんだけど、すごく疲れが取れたよv」 「疲れが取れるのか、それはいいな。では、温泉にしよう」 「了解!じゃあ、泊まる所手配しておくねv」 「え…、あ、ああ、そうだな……頼む…」 かし カールが何故か頬を真っ赤にしながら頷いたので、サラは不思議そうに首を傾げた。 「どうかした?」 「い、いや、何でもない。それじゃあ、また」 カールは真っ赤になったまま、挨拶もお座なりに慌てて通信を切った。 真っ暗になったモニターをサラはキョトンと見つめていたが、カールとの旅行の事を考えると無 はず 性に心が弾み、スキップしながら研究室に戻った。 研究もせずに鼻歌を歌っているサラを横目で見、ステアとナズナはキラリと目を光らせた。 「どうしたんです?そんなに浮かれちゃって」 「今度ね、カールと温泉に行く事になったのv」 「へぇ〜、温泉ですか。もちろん泊まりがけで行くんですよね?」 「うんv」 「二人っきりで?」 「うん、そうだよv」 サラが珍しくカールの事で素直に返事をしていると、ステア達はにやりと不敵な笑みを浮かべ た。 「とうとうこの日が来てしまいましたね、博士」 「……へ?来たって何が?」 「若い男女が同じ場所で一晩過ごすなんて、何が起こるかぐらい簡単に想像出来るじゃない ですかぁ〜」 「…………………………………あぁ!!私、そんな事全く考えてなかった!!」 「普通はすぐ気付きますって」 あき 今頃サラが一番重要な事に気付いて驚いたので、ステア達は呆れてクスクス笑い出した。 サラは先程の通信の時にカールが顔を真っ赤にしていたのを思い出し、途端に深刻そうな表 情になった。 「そう言えば……何だかカールの様子がおかしかったような…」 「そりゃ少佐だって男なんですから、下心くらいありますよv」 「私から誘ったのに、全然気付かなかったわ……。カールに悪い事しちゃった…」 たた ステアとナズナは落ち込むサラの両肩をポンと叩き、わざとらしく小声で話し始めた。 「まぁまぁ、博士。その分、色々とサービスしてあげればいいんですよv」 「…サービス?サービスって…何をすればいいの?」 「セクシ〜な格好をしてあげるとかぁ、一緒に温泉に入ってあげるとかぁvv」 「…そんな事をして、本当にカールが喜ぶの?」 『絶対喜びますよv』 「……ま、いいや。なるようになるでしょ」 ひょうしぬ サラは余り深く考えずに笑って言ったが、それを聞いたステア達はガクッと拍子抜けした。 「か、軽いですねぇ。本当にいいんですか?よく考えてから行動して下さいよ?」 さんざん 散々盛り上げたクセに、今度はガラッと態度を変えて忠告めいた事を言い出し、いざとなった ら慎重になってしまうステア達であった。 カールとの仲を応援してはいるが、二人にとってもサラは大切な存在なのだ。 しかしサラはステア達が心配する程、旅行の事を軽く考えてはいなかった。 「いいも何も、カールなら私……」 サラは小声でそう言うと、顔を真っ赤にして黙り込んだ。 が ステア達はそんなサラの仕草を微笑ましく思い、彼女がその気なら自分達も頑張らねばと俄 ぜん 然張り切り出した。 「では、準備は私達にお任せ下さい!」 「え…?準備って何の準備?」 イヤな予感がするなと思いながら、サラは思わず聞き返していた。 すると、ステアとナズナは目をキラキラと輝かせ、かわいらしくブリッコポーズを取ってみせた。 「シュバルツ少佐を悩殺する為の、服と下着ですv」 「ちゃ〜んと男心をくすぐるようなのを選んであげますよv」 「……そんなのいらないわ。準備は自分でするから、勝手な事は絶対しないでね」 「えぇ〜!?じゃあ、出来る限りセクシ〜なのを持って行って下さいよ〜?」 「…………」 サラはもうまともに答える気すら起きず、黙ってため息をついたが、その傍ではステア達が終 始笑顔で騒ぎ続けていた。 * 五日後の朝、カールがジープに乗って研究所へやって来た。 こん 今日のカールはもちろん軍服ではなく、サラとデートへ行く時の様に、黒いシャツに紺色のズ ボンという非常に地味な格好であった。 派手な色は余り好みではないらしい。 だが、カールの私服姿を初めて見る事が出来たステア達にとっては、地味でも光り輝いてい る様に思え、異常な喜び振りを見せた。 女性達の視線が集まる中、カールが居心地悪そうに待っていると、サラが旅行カバンを手に 慌てて駆けて来た。 「遅くなってごめんなさい。出る間際に突然カバンが見当たらなくなっちゃって…」 「いや、構わないよ」 いつも通りのやり取りが展開されている横で、ステアとナズナはにやりと笑った。 しわざ サラのカバンが突然見当たらなくなったのは、どうやらこの二人の仕業だった様だ。 ステア達がサラのカバンに何をしたのか… 真実はサラがカバンの中を見た時にわかるだろう。 その時は恐らく、もう宿泊先に着いているはずだ。 「じゃ、そろそろ出発しようか」 カールが声を掛けるとサラは嬉しそうに頷き、カバンをジープの荷台に置いて助手席に乗り込 んだ。 するとそこへ、すかさずステアとナズナが寄って来てカールに話し掛けた。 てごわ 「少佐、博士は手強いですから、気合い入れて頑張って下さいv」 「私達、少佐の事を心より応援しておりますv」 カールはステア達にどう返事をすればいいのかわからなかった為、助けを求めて助手席の方 を見ると、サラは頬を赤らめつつ苦笑した。 「…あの子達の言う事は無視してくれていいから」 「あ、ああ…」 カールが戸惑いながらエンジンをかけると、サラはステア達の方を見回した。 「じゃ皆、後はよろしくね」 『行ってらっしゃ〜いv』 たくら ステア達は笑顔で一斉に手を振ってくれたが、その笑顔が無性に何かを企んでいる様な笑み に見え、カールは逃げる様にジープを発車させた。 それでもステア達は、しばらく手を振り続けるのであった… 研究所を出発して数時間後、カール達は目的地である温泉町に到着した。 町内に入った途端サラが突然買い物をしたいと言い出し、二人は町の中心にある商店街へ と 寄ると、ついでに適当なお店を選んで昼食も摂る事にした。 さ 賑やかな所は避け、比較的小さな定食屋で昼食を摂った後、サラは早速様々な店を見て回 り、食材だけを妙に買い込んでカールを驚かせた。 「…こんなに買ってどうするんだ?」 「今日私達が泊まる所って、従業員が一人もいないの」 「……?」 そろ 「一つのコテージを丸々貸してくれて、生活必需品は全て揃っているんだけど、食材は持ち込 みで自炊制になっているのよ」 「だからこんなに買ったのか…。結構大変そうだなぁ…」 「そうでもないわ。二人分なんてすぐ作れるし、貸し切りだから気兼ねしなくてもいいしね。そ れに何と言ってもコテージ内に温泉があるから、いつでも入り放題という特典付きなのv」 「へぇ、すごい所なんだね」 「でしょ?せっかく羽を伸ばしに来たんだから、ゆっくり温泉に入ってのんびりしましょ」 「ああ」 カールは子供の様な顔で頷きつつ、サラと一緒ならばどこでも楽園になると思っていた。 そうして二人は町外れにあるコテージ群の方へ向かい、自分達に割り当てられたコテージを 見つけると、早速中に入ってみた。 「わぁ、広〜いv こんなに広いなんて思わなかった〜」 中は外観通りとても広く、本来は団体で使用する所であった為、二人で使うには大きすぎる 程であったが、サラは広さに飛び上がる様に喜んだ。 サラが喜ぶのを見て、カールは来て良かったと心から思った。 始めは二人きりの旅行というのもあって緊張の為に素直に喜べなかったが、サラの笑顔を見 しだい ていると、次第に緊張も無くなっていき、素直に喜べる様になった。 おど ぼんやりと考え事を始めたカールを玄関に残し、サラは踊る様な足取りでコテージ内を散策し 始め、綺麗なキッチンや大きな露天風呂を見に行った。 「お風呂、すごく大きいよv」 コテージ内を一周し、サラが報告しに玄関先にあるリビングへ行くと、カールは持っていた荷 物を床に置き、にっこりと微笑んだ。 「それは入るのが楽しみだね」 「うん、楽しみv」 サラもつられて微笑みながら頷いたが、カールの足下に置かれている荷物を見、あっと驚いた 様な表情になった。 自分が走り回っている間に、玄関に置きっぱなしにしていた荷物を運んでくれたらしい。 「ご、ごめんなさい。私はしゃぎすぎてて荷物の事すっかり忘れてた…」 「気にしなくていい。君が喜んでくれるだけで、俺は嬉しいから」 「う、うん、ありがと」 ごまか サラはカールの言葉に妙に照れてしまい、その照れを何とか誤魔化そうと、意味もなく荷物を 整理し始めた。 まぎ すると、カバンの中に見慣れない服が紛れているのに気付き、その服を手に取ると驚きの表 情を浮かべた。 「こ、これは……」 「どうしたんだい?」 「ステア達が勝手に私のカバンに服を入れたみたいなの」 「服?」 「うん、これ」 しの サラはカバンからステア達が忍ばせたと思われる服を取り出し、カールに見せた。 サラが今まで着た事のない、非常に露出の激しいワンピースであった。 ……確かに、あの二人ならやり兼ねない。 出発する間際にカバンが無くなったのは、このワンピースを忍ばせる為だった様だ。 「こういうのを着たら、あなたが喜ぶって言ってたんだけど…。そんな訳ないのに何考えてるの かしら、ねぇ?」 「………」 サラの同意を求める問いに、カールはワンピースを凝視したまま返事をしなかった。 「…カール?」 「え…?……あ、うん、そうだね」 二度目でようやく返事を返してくれたが、カールが妙にドギマギして答えたので、サラは何と なく彼の思いを察し、頬を赤らめながら尋ねた。 「ひょっとして……着てほしいって思った?」 「……思った」 あき カールは先程思った事を正直に白状し、サラはその正直さに呆れてしまったが、そういう所が 彼らしい様な気がして微笑ましく思えた。 それならばと、サラは恥ずかしくてもこのワンピースを着ようと決意した。 ステア達の言葉を信じた訳ではないが、カールが喜んでくれる可能性があるなら、着てみる 価値はあるだろう。 「じゃ、着てあげるね」 「…え?」 いだ 驚いているカールをまたしても残し、サラはワンピースを胸に抱いて寝室へと向かった。 あ たけ ふともも そして急いで着替えてみたが、思ったより胸元が空いており、丈も短くて太股がこれでもかと あらわ いう程露になっていた。 (ど、どうしよう…。こんなの、恥ずかしすぎる……) サラはしばらくどうしようか悩んだが、結局その格好のままカールの元へ帰る事にした。 サラがリビングに恐る恐る顔を出すと、カールはほっとした様に微笑んで彼女を出迎えた。 が、サラの格好を見た途端、驚きの余り体を硬直させた。 |
すそ カールの反応にショックを隠し切れなかったサラは思わず目を泳がせ、ワンピースの裾をギュ ッと握った。 「やっぱり……あなたはこういうの…好きじゃないよね……」 「…い、いや、いい。すごく似合ってる」 「ほんと…?」 「ああ」 こら カールはつい胸元に目が行ってしまうのを必死に堪えながら答え、そんな彼の視線に気付い たサラは慌てて胸元を手で隠し、照れ臭そうに微笑んでみせた。 必然的に上から見下げる形になるカールには、広く空いた胸元が余計に色っぽく見えてしまう 様だ。 「え、えっと……そろそろ夕食の準備をしなくちゃ」 そう言うなり、サラはパタパタとキッチンへ駆けて行った。 恥ずかしさに耐えられなくて、カールの傍に居辛くなったのだろう。 再びリビングに取り残されたカールは、サラの姿が目に焼き付いてしまった為に、呆然となっ たまましばらく動く事が出来なかった。 日が暮れた頃、早々と夕食を済ませたカールとサラは食後のコーヒーを飲みながら、しばらく 談笑していた。 あのセクシ〜なワンピースはというと… すで さまよ 既にサラは慣れつつあったが、カールはまだ視線を彷徨わせていた。 かろ 今は辛うじて同じ高さの目線なので、思い切り見えてしまう事はない。 が、立ってからは絶対見ないでおこうと、カールは心の中で固く決意するだった。 そうしてふと壁に掛かっている時計を見たサラは、慌ててテーブルの上を片付け始めた。 「そんなに慌ててどうしたんだ?」 「そろそろ温泉に入ろうと思って」 「…………」 サラが笑顔で答えると、カールは何故か顔を真っ赤にして黙り込んだ。 サラはカールの表情の変化に気付かなかったフリをして片付けを終え、浴室に向かって歩き 出した。 よ するとその時、サラの脳裏にステア達の言葉が過ぎった。 一緒に入ると………喜んでくれる…? サラは途中で思い直した様に立ち止まり、カールの方に振り返った。 「カール、一緒に入ろ」 「……?………!?…………!!」 カールは突然の誘いに驚き、急いで状況を判断しようとして思考回路が一瞬フリーズしてしま ったが、サラはいつものかわいらしい笑顔で彼の事を待っていた。 「……いいのか?」 「何が?」 「…………」 サラは意地悪そうな笑みを浮かべ、わざとカールの質問に答えないまま、彼を待たずにさっさ と歩き出した。 カールはサラの後をゆっくりと追いながら、彼女があんな態度を取るのは照れを誤魔化す時だ けとわかっていたので、とても微笑ましく思うのだった。 カールが浴室のドアを開けると、待ってましたと言わんばかりにサラは彼の腕を引っ張り、一 緒に外の露天風呂を見に行った。 「ね、すごく大きいでしょ?」 「ああ、大きいな……大きすぎるくらいだ」 「これだけ大きいと、泳げそうよね」 「風呂で泳ぐのか…?」 「え?そうねぇ、泳いでみてもいいけど…」 や 「それは絶対に止めてくれ」 「……は〜い」 ま 冗談のつもりで言ったのにカールが完璧に真に受けてしまい、サラは少しガッカリして脱衣所 へ戻った。 二人は背中合わせに立って服を脱ぎ始め、全て脱いでからカールはサラより先に入るか、後 に入るかで悩んだ。 どちらもダメの様な気もするが… というより、一緒に入る事自体問題が多すぎる、と思う。 そんなカールの思いを察したのか、サラは背中越しに彼に話し掛けた。 「カール、先に入ってくれる?」 「ああ、わかった」 そな カールはほっとして風呂場に入り、とりあえず備え付けの椅子に座ってシャワーを出した。 いっぷう あ この辺りには一風変わった文化があり、座ってシャワーを浴びるのが常識らしい。 座ったままとは結構難しいとカールが考えている内に、サラも風呂場に入って来て彼の隣へ 同じ様に座った。 まさか隣に座るとは思わなかった為、カールは驚いてサラの方を見てしまったが、途端にガッ ま カリする現実を目の当たりにした。 サラは体にしっかりと大きなタオルを巻き付けていたのだ。 「…あんまり見ないでね」 そ そう言ってサラが照れ臭そうに微笑んでみせると、カールは返事もせずに慌てて目を逸らし、 ぎこちない手付きで髪を洗い始めた。 サラも一緒になって長い髪を洗いつつ、ふとカールの髪を洗う仕草が目に入った。 おおざっぱ カールは髪を大雑把にしか洗わず、しかも時間も極端に短くて、もう体を洗おうとしていた。 「……カール」 「ん?」 「他の事は何でもきっちりしているのに、洗うのは適当なのねぇ」 「あぁ、いつも短時間で済ませているから、早く洗う癖が付いてしまったんだよ」 「シャワーの時間、余り取れないのね。軍人って大変…」 「もう慣れてるから、全然気にならないさ」 「そぉ?ん〜、じゃあ今日は私が洗ってあげるv」 サラはカールが返事をするよりも早く、彼の背後に移動した。 「サ、サラ!?」 「は〜い、じっとしていて下さ〜いv」 まるで子供に言い聞かせる様に言われてしまい、カールはドキドキしつつ素直に動かなくなっ た。 サラは手際良くカールの髪を洗い始め、無意識の内に鼻歌を歌っていた。 余程楽しいのだろう。 そうして髪を洗い終えると今度はタオルを持ち出し、カールの背中を洗い始めた。 「…サラ?」 「サービスですv」 そんな風に言われてはどうにも断り切れず、カールは照れて黙り込むしかなかった。 一方、サラはカールの背中を洗いながら、そのたくましさにウットリしていた。 きた 服を着ている時は細身に感じたが、彼の体は程良く鍛えられており、とてもたくましかった。 きや たち どうやらカールは着痩せする質らしい。 だが、よくよく思い出してみると、サラを軽々と持ち上げたりしていたので、それ相応の体格な のは当然の事であった。 やがてサラはカールの背中を洗い終え、いそいそと隣の椅子へ戻った。 「ありがとう」 「どういたしましてv」 カールが笑顔で礼を言うとサラも笑顔で返事を返し、次は自分の体を洗おうと巻き付けてあっ は たタオルを剥ぎ取った。 すると、見ない様にしていてもサラの動きがどうしても視界の端に入ってしまい、気になって仕 方がないので、カールは急いで体を洗って逃げる様に露天風呂へ向かった。 つ カールがしばらく湯船に浸かってのんびりしていると、体を洗い終えたサラが傍に歩み寄って 来て、ゆっくりと湯船に入った。 カールはダメだと思いつつやはり欲に負け、こっそりサラの方を見てみた。 サラはもう体にタオルを巻き付けてはいなかったが、この地域の温泉が乳白色のお湯であ った為、何となくしか体のラインがわからなかった。 したい それでも思わず感嘆のため息が出る程美しい肢体で、カールは呆然と見とれていた。 (なんて……美しいんだろう…) カールの熱い視線に気付いたサラは、恥ずかしそうに手で体を隠し、にっこりと微笑んだ。 つぶや そんなサラの仕草がとても愛らしく、カールもつられて微笑みながら呟いた。 「疲れが取れるな…」 「温泉にして正解だったでしょ?」 「ああ」 カールが満足してくれているとわかり、サラは嬉しくなって空を見上げた。 またた 空には数え切れない程たくさんの星が瞬いていた。 「温泉に浸かりながら星が見られるなんて、最高に幸せv」 「そうだね」 優しい笑顔で頷くカールの肩に、サラは空を見上げたままそっと寄り掛かった。 カールは内心少し驚いたがすぐ笑顔に戻り、一緒に空を眺めていた。 ●あとがき● 初旅行。まるで新婚旅行みたいですねv 行き先を温泉にしたのは、私が行きたいからだったり(笑) でもカールがお疲れの様なので、丁度良かったと思います。 気苦労も多いですし、サラが傍にいる事で心が癒され、温泉で体が癒されて一石二鳥! しかも今回は、二人にとって最も良い事が起こります。 ようやく恋人同士としての第二の門をくぐる事となりました。 ちなみに第一の門は、告白して恋人同士になる事。 カールもサラも、今まで以上に互いを大切にしていくと思いますv やっぱりラブストーリーはいいですねぇ。いくら書いても飽きませんvv ●次回予告● 旅行先で初めての夜を迎えます。 カールはサラを抱き寄せ、本心を正直に言葉にしました。 サラは天使の様な笑みを浮かべ、カールの全てを受け入れます。 第十九話 「旅行〜中編〜」 ……君を…抱きたい *ご注意* 旅行のお話は前後編にする予定でしたが、性描写を含む所はきっちり分けた方がいいだろう と判断し、急遽三つに分けました。 次の中編は性描写を含みますので、お嫌いな方はお読みにならないで下さい。 続きが気になるという方は、中編を飛ばして後編をお読み下さい。 ただし、中編を読まなくてはわからない所も多々あると思われます。ご了承下さい。 もし年齢制限をするとしても、12禁程度です。大した内容ではないですから(笑) |