第七十六話
「進化」
最近はサラとの旅行以外良い事が起きなくなったカールだったが、それだけでも充分幸せだ ったので、忙しくも充実した日々を送っていた。 しかしそんな彼の元へ、ドラゴンヘッド要塞から悪い知らせが舞い込んだ。 共和国から技術提供された飛行ゾイド・ストームソーダーが何者かに奪われたというのだ。 しかも犯人と思われる二人組の男は、揃って帝国軍の軍服を着ていたらしい。 最近の帝国軍の警備状態を考えると、軍服を着ているだけという変装でも、軍施設に潜入可 能であると言わざるを得ない。 長らく続いた戦争状態から解き放たれ、軍全体が平和ボケを起こしてしまった結果である。 辺境地域で起きている事件にしても、全てが後手に回っている為、事件が起きた地域のみ警 戒を強めているだけだ。 そして何より戦後処理に力を入れていたので、警備に人を回せないというのも大きな要因とな っていた。 結局辺境地域の事件に関しては、ガーディアンフォースに頼るより他どうしようもなかった。 しかしそのガーディアンフォースの面々も、ジェノザウラーとの戦闘によりゾイド・パイロット共に 負傷し、今は回復を待っている状況である。 そんな時に限って事態は悪化の一途を辿るものらしく、カール率いる第一装甲師団に次に与 えられた任務は、ガーディアンフォースとの戦闘を演じた後、姿を暗ませたジェノザウラーを捜 し出し、パイロットであるレイヴンを捕獲する事。 予想せずとも大変な任務ではあったが、レイヴンだけは難なく見つける事が出来た。 理由は分からないが、巨大な物体の傍から動こうとしなかったからだ。 そこでしばらく様子を見る事にし、レイヴンがいる場所に程近い基地に部隊を集め、回復しつ つあるガーディアンフォースの面々にも招集がかけられた。 カールはガーディアンフォースの面々が揃うのを待ってから、動く気配を見せないレイヴンの捕 獲に乗り出した。 謎の物体については、レイヴンを捕らえた後でも問題はないだろう。 監視の兵士よりレイヴンの様子に変化が無い旨を受け、カールは大勢の兵士を引き連れ、ジ ープでレイヴンの元に赴いた。 到着するなり、兵士達はレイヴンに銃口を向けたが、レイヴンはどこ吹く風でコーヒーを飲み続 けていた。 カールは兵士達よりやや遅れて前に進み出、レイヴンに静かに声をかけた。 「レイヴン、無駄な抵抗はせずに我々と一緒について来てもらおうか」 「……随分と大袈裟だな、シュバルツ」 「相手は他ならぬ、あのレイヴンだからな」 「ふん……」 レイヴンは特に目立った抵抗は見せず、意外と素直に捕まった。 逃げ出す自信があるのだろうか?とカールは訝ったが、手錠まで付けられたレイヴンにそん な事が出来るとは思えなかった。 しかしレイヴンは基地へと移動する道中も、終始余裕の笑みを浮かべ続けていた。 程なくして基地に到着すると、カールはガーディアンフォースの面々と共に、レイヴンの尋問を 行う事にした。 レイヴンには聞いておかねばならない事がある…。 基地内にある殺風景な内装の小部屋にカールとバン達が集まり、それから兵士に連れられ てレイヴンが姿を現した。 兵士がレイヴンの手錠を外し、部屋から出て行くのを見送ると、カールはゆっくりと口を開い た。 「レイヴン、そこへ座れ」 室内に二つある椅子の片方に腰を下ろしていたカールは、机を挟んで反対側にある椅子に座 る様にレイヴンに促した。 レイヴンは手錠が付けられていた手を摩りながら、まるで喫茶店の椅子にでも座る様な調子 で勧められた椅子に座った。 カールはレイヴンの態度を全く気にせず、尋問を開始した。 「あのジェノザウラー……どこで手に入れた?」 「尋問よりも先にシャワーを浴びたいな。ずっとあそこにいたから、体中埃塗れなんだ」 「質問に答えろ。…ジェノザウラーはプロイツェンがデスザウラーを蘇らせる過程で偶然発生し たゾイドだ、おいそれと手に入れられる物ではない」 「……一個師団という所か」 「………?」 レイヴンが明らかに質問の答えとは違う言葉を口にしたので、カールはその言葉の意味をす ぐには理解出来ず、つい動きを止めてしまった。 すると、レイヴンは不適に微笑んでみせた。 「ここの戦力だよ」 レイヴンの説明に、誰よりも早くトーマが反応した。 「それがどうした!!」 「5分もあれば殲滅出来るな」 トーマの表情とは対照的に、レイヴンの表情は非常に落ち着いていた。 レイヴンに大切なディバイソンを動けないまでに破壊された上、自身も負傷させられたトーマ は、その屈辱からカッとなってしまい、思わずレイヴンの胸倉を掴み上げた。 「貴様、自分の置かれた立場がよく分かっていない様だな」 「……おや? その包帯はどうしたんだ? …あぁ、そうそう。君のゾイド、ディバイソンの調子 はあれからそうだい?」 「何だと!?」 レイヴンにはトーマをからかう余裕まであるのか、胸倉を掴まれたままで皮肉を口にした。 一方、トーマはレイヴンの皮肉を冷静に受け止める事も出来ず、更に相手の胸倉を掴み上げ た。 自分の愛機を破壊された恨みは、ゾイドのパイロットなら誰もが理解出来る心情である。 バン達ガーディアンフォースの面々はただただ黙るばかりであったが、カールだけは弟の所業 を見兼ねた様に口を挟んだ。 「手を離せ、中尉」 「しかし、兄さん!」 「中尉…!」 カール自身、弟の気持ちも分からなくはない。 しかしレイヴンの反応を見る限り、トーマが怒っても事態は先へ進まない。 兄の厳しい言葉に、トーマはようやくレイヴンから手を離した。 「焦る必要はない。ゆっくりしゃべってもらうさ、時間をかけてな…」 ようやく本題に戻れるとばかりに、カールがぽつりと呟くと、それまで黙り込んでいたバンが重 い口を開いた。 「…いや、のんびりしている暇はないぜ。あのマユの中にいるのはジェノザウラー……そうだ ろ、レイヴン?」 「……ふん」 バンの問いを肯定するかの様に、レイヴンは鼻で笑ってみせた。 バンは内心「やはり…」と呟きつつ、これ以上尋問を続けても無駄である事をカールに目で訴 えた。 バンだけでなく、フィーネまで深刻そうな表情で見つめてくるので、カールはすぐさま部下を呼 び、レイヴンを牢屋へ入れる様に指示を出した。 再び手錠を付けられたレイヴンが兵士と共に部屋から出て行くと、カールは改めてバン達から 『マユ』についての詳細を聞いた。 バンの愛機であるシールドライガーが、ブレードライガーに進化した事。 その進化の過程で、シールドライガーが『マユ』となった事。 何よりゾイドが自ら進化するのは、パイロットの力に合わせる為である事。 これまでずっとバンがシールドライガーからブレードライガーに乗り換えたと思い込んでいたカ ールは、ゾイドが自分の意思で進化出来る事に驚くより他なかった。 惑星Ziの歴史上、ゾイドが自ら進化を行う事はあったが、それも随分過去の話。 近年では人の手が加わる以外、進化した話は聞いた事がない。 事態は思った以上に悪化している。 ジェノザウラーが今どんな状態にあるのか急ぎ調べる必要があった為、カールはバンとフィー ネを伴い、ジェノザウラーのマユがある山岳地帯へ向かった。 レイヴンが身を潜める為に、巨大な岩の隙間にいたのだと思っていたが、どうやらジェノザウラ ーの方がその場所を選んだらしかった。 隙間に足を踏み入れると、ジェノザウラーの真紅のマユが岩に包まれる様にして安置されて いた。 「……間違いない。感じるわ、ジェノザウラーの悪しき波動を…」 マユを目の前にして何かを感じたのか、フィーネが悲しそうに呟いた。 マユをよく観察してみると、確かにそれは生きている事を主張する様に、仄かに紅い輝きを放 っていた。 (これがジェノザウラーのマユ、か…。サラに見せたら喜びそうだけどな…) ゾイドが進化する所を目の当たりに出来る…などと言ったならば、サラはすぐにでも飛んで来 るだろう。 しかし相手はジェノザウラー。 とてもじゃないが、サラに教える事など出来ない。 カールは今はサラの事を忘れる事にし、マユを見つめたままのバンに話しかけた。 「シールドライガーもこうしてブレードライガーに進化したのか…?」 「ああ。…そして今度はジェノザウラーが生まれ変わる、前よりも強力な力を手に入れて…。 レイヴンよりもコイツを破壊する方が先決だ」 そうバンが言うと、ジークが同意する様に声をあげた。 「グルル…」 「お前にも分かるか?」 「グルルル」 「ああ、マユから出て来る前に手を打たないとな」 カールにはジークの言葉はさっぱり理解出来なかったが、強い絆で結ばれているバンには全 て伝わっている様だった。 カールが内心感心していると、見覚えのあるグスタフがコマンドウルフを荷台に載せた状態で 三人の元へやって来た。 このグスタフは、確かムンベイの物だったはずだ。 そう思っている内に、グスタフのコックピットからムンベイとアーバインが降りて来た。 すると、それまで終始暗い表情を見せていたバンとフィーネに笑顔が戻った。 「ムンベイ、アーバイン!」 「おいおい。お前ら、こんな所に何しに来たんだ?」 「なぁに、ちょいと珍しいマユを見物にな」 「へぇ〜、コマンドウルフを連れてマユ見物ねぇ…」 アーバインがおどけてみせると、バンもつられて軽い口調になった。 女性陣も軽く挨拶し合い、現在の状況を忘れる程の雰囲気であった。 共に旅してきた仲間というのは、傍にいるだけで何よりも心強い。 状況自体は大きく変わる訳ではないが、四人の和気藹々とした様子をカールは微笑ましく思っ ていた。 その日の夜、カールはガーディアンフォース科学班の代表であるドクターディに連絡を取った。 バン達の話によると、ドクターディはシールドライガーが進化した時に立ち会った、との事。 マユへの対処方法が分かるかもしれない。 ジェノザウラーのマユについては、予めドクターディに伝えてある。 話は早いはずだ。 カールは通信室にガーディアンフォース一同を集めると、ドクターディに聞きたい事を単刀直入 に尋ねた。 「ドクター、マユについて少しお聞きしたい事があります」 『あぁ、何でも遠慮なく聞いてくれ』 「何か効果的な対処方法をご存知ですか?」 『知らん! あれはわしの理解を遥かに超えておる。正にゾイドの神秘じゃ、はっはっはっ』 ドクターディの返事に、カールは我が耳を疑った。 いくらドクターディが冗談好きな人物であるとしても、まさかそんな本当に冗談の様な答えを返 す訳がない。 カールだけでなく、トーマまでもがポカンとした表情を浮かべていた。 「あ……いや、その…ドクター…?」 『ま、それはそれとして…極めて深刻な状況である事は確かじゃ。何せジェノザウラーはレイ ヴンのポテンシャルに対応すべく、進化しようとしているのじゃからな。以上、通信終わり!』 「あ、ド、ドクター…!」 急に真剣に話し出したかと思いきや、話し終えると一方的に通信を切られてしまった。 思わず動きを止めるシュバルツ兄弟とは対照的に、ドクターディと付き合いの長いバン達はや れやれと肩を竦めた。 「ったく、それくらい言われなくても分かってるって。…あの時のレイヴンは圧倒的だった…… 以前とは桁違いのプレッシャーだったぜ。それ程レイヴンの腕も上がってる。今までのジェノ ザウラーじゃ、レイヴンはフルに力を発揮出来ない」 バンは先日のレイヴンとの戦闘の一部始終を思い出すと、自分に言い聞かせる様に現状を説 明した。 すると、そんなバンの様子から彼の成長を感じ取ったムンベイが、バンの頭を肘で軽く小突い た。 「へぇ〜、あんたがそんな風に冷静に分析出来るようになったなんて大したもんだ! さすが はガーディアンフォースね」 全員が暗くなりつつある中で、ムンベイの明るい声は周囲の雰囲気を温かくした。 しかし今はムンベイの力を以てしても、全てを払拭するのは無理だった。 その事を示す様に、バンの説明を受けてトーマが話し出した。 「だが、レイヴンは檻の中だ。借りが返せないのは残念だが、もうヤツはジェノザウラーに乗る 事は出来ない。あれがいくら進化しようとも…!」 「いや、進化させるつもりもない」 しばらく様子を見ていたカールが、トーマの言葉を遮る様に自身の決意を口にした。 そう、ジェノザウラーが進化を完了させるまで待つ必要はない。 動けない内に手を打っておいて損はないはずだ。 カールはすぐさまマユ破壊に向けて行動を開始しようとしたが、そんな彼を呼び止める人物が いた。 たった今、ゾイドの整備をしておく様にと解散させたガーディアンフォースの一人、カールの弟 トーマであった。 「兄さん、ドクターディではダメでしたが、姉さんなら何か考えてくれるかもしれませんよ」 「…………」 カールは「兄さん」を「大佐」に訂正する気も起きず、言ってほしくない事を言ってくれた弟に冷 たい眼差しを向けた。 「…中尉」 「はい」 「先程、私はお前に何と指示を出した?」 「マユ破壊に向けて、いつでも出撃出来る様に、各自ゾイドを整備しておく様にと」 「で、お前は何故まだここにいるんだ?」 「はい。ですから、姉さんに相談を、と」 「いざ戦闘という時に、動けないなどという失態をされては困る。ディバイソンはきちんと回復し ているんだろうな?」 「それはもうバッチリです! ……じゃなくて、姉さんに………」 「中尉」 カールの口調はいつになく穏やかなものだったが、顔は恐ろしく無表情であった。 兄の間接的な圧力にあっさり根負けしたトーマは、渋々ながらカールの元から去って行った。 トーマを黙って見送ったカールは、傍にあった椅子に腰を下ろすと同時にため息をついた。 この様な時に、サラに頼るなどとは以ての外だ。 自分から「危険な事はしないでくれ」と言っておきながら、危険と分かっている話を聞かせる訳 にはいかない。 それに、一度はマユを目にしているドクターディですらお手上げなのだ。 如何に優秀なサラでも、分かるとは思えない。 分かる為に努力はしてくれるだろうが…。 考えてダメなら、後は力に頼るしかない。 現在用意可能な最大限の火力を使えば、マユを破壊出来るかもしれない。 カールは足早に司令室へ移動し、軍本部に援軍の要請、そして共和国軍にも併せて援軍要 請を行った。 マユはいつ羽化するか分からない。 だからこそ今回の作戦は急を要する。 短時間で多くの火力を用意するには、自国だけでは足りないのだ。 近くに駐留していた帝国軍の部隊が続々と到着する中、共和国軍からも早々に援軍が駆け 付けて来た。 援軍の隊長達と挨拶する為に外に出ていたカールは、途中で合流したガーディアンフォース の面々と共にその光景を眺めていた。 ようやく今回の作戦内容を聞かされたバン達は軽く返事しただけだったが、トーマだけは共和 国軍に助力を求めた事に驚いた様だった。 「共和国軍との共同作戦ですか…?」 「ああ。大量の火力を叩き込み、腕ずくでマユを破壊する。……些か乱暴なやり方だが、今 取り得る策はこれしかない」 「……腕ずくでどうにかなればいいけど……」 不吉な事をさらりと口にするバンに、周囲の者達は顔を強張らせた。 本来なら、作戦前に戦意を失わせる様な言動は厳重注意の対象である。 しかしカールも同じ事を考えていたので、ただ黙って援軍が到着する光景を眺めているしかな かった。 やがて場の重い空気に堪えられなくなったアーバインとムンベイがそわそわし始め、それに気 付いたカールはガーディアンフォースの面々にゾイドの整備が終わり次第休む様に指示を出し た。 軍の中でも最高の戦力となる者達だ。 休める時に休んでおいてもらわないと、いざという時に全員が困る事になる。 後の準備はカールと彼の部下だけで充分行える。 カールの指示を聞くと、アーバインとムンベイが逸早く動き、軽く伸びをしながら基地へ歩き出 した。 余程今の空気が嫌だったのだろう。 バンとフィーネは苦笑しながらもカールに軽く挨拶したが、トーマは兄に挨拶するのも忘れ、怒 りながらアーバイン達の後を追って行った。 アーバイン達のカールへの態度が気に入らなかったらしいが、こういう時にいつも通りに振る 舞えるのは、カールには羨ましく思えた。 何だかんだで、賑やかなガーディアンフォースの面々が去ると、援軍の隊長達との打ち合わ せやゾイドの配備など、カールは忙しく動き出した。 ヒュースもサラと関係のない事柄だとかなり優秀な副官なので、カールの補佐として見事に 務めを果たしていた。 そうして援軍の第一陣が全て揃う頃には、時刻は深夜を回っていた。 第二陣は早朝に到着予定との事で、その間はカール達も休む事になった。 とは言え、不測の事態も考えられるので、カールはヒュースと交代で仮眠を取る事にした。 先に仮眠室へとやって来たカールは、すぐにでも動ける様に上着を脱いだだけでベッドへ横に なり、目を閉じて眠ろうとしたが、無駄な努力だと感じた。 こういう時は決まって眠れなくなる。 軽く眠るだけだと自分に言い聞かせてみても、作戦前の緊張からは解放される事はなかっ た。 |
軍人になってから随分経つが、慣れたくても慣れない緊張感である。 大部隊を任されている指揮官がこんな事ではいけないと自分を責めつつ、カールは明日のマ ユへの攻撃について思案した。 帝国・共和国の連合軍による最高の火力での攻撃…。 並みのゾイド相手なら、何の問題もなく破壊可能だ。 しかし相手はあのジェノザウラー、しかも強くなる為にマユとなっている様なゾイドだ。 現在準備し得る火力でも足りないとしたら……? カールはどうにか意識を眠りへと移行させたが、それでも不安は消える事はなかった…… しばらくの仮眠の後、ヒュースと交代で司令室入りしたカールは、援軍の第二陣を迎える為に 準備を始めた。 夜が明け切らぬ内に第二陣の部隊が続々と到着し、現在準備出来得る最大の火力が集結、 そして各部隊の配備も朝日が昇る前に完了した。 予定では、陽が昇ると同時にマユへの攻撃を開始する。 今回の一斉攻撃には参加しないガーディアンフォースの面々は、カールと共に司令室にて戦 況を見守っていた。 やがて地平線の彼方から、ゆっくりと太陽が姿を現した。 「攻撃開始」 カールの指示を合図に、帝国軍・共和国軍の数え切れない程のゾイドが一斉に砲撃を開始し た。 マユは雨の様に砲弾を受け、周囲に砂煙が盛大に立ち上がったが、それが晴れるとマユの 変化の無い姿が露になった。 カールが思わず舌打ちしていると、マユ上空にいるレドラーから現状の報告が入った。 『目標は健在! 繰り返す、目標は未だ健在!!』 レドラーのパイロットは軽くパニックを起こしている様だったが、その報告を聞いたバンは特に 気に留める事なく、次の策を静かに口にした。 「マユが解ける瞬間を狙って、ジェノザウラーが出て来た所を直接攻撃するしかない」 「どうやらその様だな」 同じ事を考えていたカールは、阿吽の呼吸で同意した。 マユがいつ解けるかは分からないが、いつでも攻撃出来る様に、一から態勢を立て直す必要 がある。 カールは全部隊に作戦の変更を通達し、砲弾の補充と、交代で休憩を入れる様に指示した。 作戦の失敗は、士気にかなりの悪影響を与える。 待機しながらでも多少なりとも休憩を入れれば、兵士達も落ち着くはずだ。 そしてもう一つ、低下してしまった士気を回復させる手段として、カールはバンに協力を仰い だ。 デスザウラー戦の英雄が共に戦う事をアピール出来れば、兵士達は心強く感じてくれるだろ う。 次は失敗は許されないというプレッシャーを少しでも抑える事が、指揮官であるカールの重要 な任務の一つである。 カールがバンを伴って基地内の見回りを開始すると、早速とばかりに不安を口にする兵士達を 見かけた。 「あれだけぶち込んでもビクともしないなんて…」 「信じられねぇな…」 「要塞なら二つ、三つ楽に破壊出来る戦力だってのに……」 「一体何なんだ、あのマユは…」 「私語は慎め、作戦待機中だぞ」 兵士達の話が聞き捨てならず、カールが思わず口を挟むと、輪になっていた兵士達は慌てて ビシッと敬礼した。 「申し訳ありません」 「いつマユが解けるか、予測不可能な状況だ。攻撃準備を整えておけ」 「了解しました」 カールは厳しい言葉を投げかけると、その場をさっさと去る事にした。 背後では不安を募らせている兵士達が、バンに縋る様に声をかけていた。 これこそカールがバンに求めていた力である。 バンなら兵士達に力を与えてくれるはずだ。 自分は厳しい上官の位置でいい。 そうすれば、バンの存在がより強固なものになる。 しばらくしてバンが追いついて来ると、カールは振り向かずに背後の雰囲気を感じた。 兵士達は落ち着いてくれた様だが、そんな彼らと話したバンは改めて決意を新たにした様だ った。 「万一に備えて、俺とトーマは最前線で待機する。攻撃が失敗した時は接近戦で叩く…!」 「ああ、頼む」 最初から失敗を考えるのは不謹慎ではあるが、今回の作戦はそこまで考えざるを得ない。 カールはたとえバンから申し出が無かったとしても、頼むつもりであった。 「バン、俺もその最前線に付き合うぜ」 兵士に紛れてコマンドウルフの整備をしていたアーバインが声をかけてくると、バンの表情が 瞬時に明るくなった。 それも、カールが求めていた力。 バンは仲間がいる事により、一層強くなれる。 カールは心の中で安心した様に微笑みながら、バン達の会話を背に歩き出した。 そしてバンが再び追いついて来ると、カールはようやくバンに話しかけた。 「レイヴンはガイガロスに移す事になった。より厳重な警備態勢の下で、本格的な取調べを行 う」 「ああ、その方がいいな。あんな牢屋、あいつならいつでも簡単に抜け出せる」 「レイヴンの背後に大きな力が存在しているのは間違いない。ジェノザウラーがその証だ。… 例のオーガノイドを使う連中とも繋がりがあると思っている。誰が何の目的で騒ぎを起こしてい るのか…レイヴンが突破口だ」 今回の作戦も重要だが、レイヴンの取調べもかなり重要である。 レイヴンさえ口を割れば、最近起こっている事件の全貌が明らかになるだろう。 カールは当初の目的であったレイヴンの搬送を見守る為、準備しておいたレドラーの元へバン を導いた。 するとそこへ、見事なタイミングで兵士がレイヴンを伴って現れた。 「レイヴン、ジェノザウラーは必ず仕留めてみせる…!」 「……ふん、地獄の扉は開き始めている。もう誰にも止める事は出来ない。そしてその扉を閉 める事も」 バンとレイヴンは一通り主張し合うと、睨み合ったまま動かなくなった。 カールは二人がライバル関係にある事を知ってはいたが、バンとトーマのそれとは全く違った 意味の関係である事を改めて感じた。 実力のある若者達が戦いの中でしか自分を主張出来ない…残念に思うしかない現実だっ た。 レドラーに手錠をかけられたレイヴンが乗せられ、搬送の兵士が出発の準備をしていると、カ ール達の元へ伝令が慌ててやって来た。 「偵察隊から報告です! マユから異常な程のエネルギー反応を探知、羽化が近いと思われ ます!!」 「いよいよか…。分かった、すぐに司令室へ戻る」 「シュバルツ、ガーディアンフォース出撃するぜ」 「頼む」 カールは走り去るバンを見送り、続いて搬送されるレイヴンを見送ると、足早に司令室へ向か った。 司令室にはフィーネとムンベイの姿があり、周囲の慌ただしい兵士達とは対照的に、静かに 正面のモニターを見上げていた。 カールは攻撃の準備状況を通信兵から聞き、全て完了し、後はマユが解けるのを待つのみと なった所で、フィーネ達と同じ様に正面のモニターを見上げた。 「始まる…」 フィーネの呟きと同時にマユが少しずつ解けていき、中の機体が見え始めた瞬間、カールが 口を開いた。 「今だ、全軍攻撃開始!!」 カールの命を受け、帝国・共和国の連合軍が一斉に攻撃を始めた。 マユへの攻撃時と同様、今回も大量の砂煙が舞い、しばらくの間視界が失わされた。 徐々に煙が薄れ、視界が復活すると、作戦の結果が目の前に現れた。 ジェノザウラーに似ているがジェノザウラーではない……一体のゾイドがシールドを張った状 態でマユがあった所にいた。 『目標は未だ健在! シールドを張っており、目標の損傷程度、確認出来ません!!』 目標の間近にいるトーマから報告が入ると、司令室内の兵士達にどよめきが起きた。 「し、信じられん…」 「何てヤツだ……」 「あの攻撃を受けて、どうして無事なんだ…?」 カールは兵士達の言葉に何の反応も示さなかったが、ムンベイとフィーネは思わず兵士達の 後に続いた。 「傷一つ負ってないなんて…」 「あれが……生まれ変わったジェノザウラー………」 そうこうする内に、ジェノザウラーと思われるゾイドがシールドを消して動き始めたので、バン達 ガーディアンフォースがそれに対応しようと動いた。 しかしジェノザウラーと思われるゾイドは悠々と飛び立ち、驚き動けないバン達を無視して去っ て行ってしまった。 その動きに何とかついて行った偵察隊から、司令室へすかさず報告が入った。 『大変です! 目標は西北西に向かって移動しています!!』 「西北西だと…!?」 今カール達が駐留している基地から西北西にあるもの……それは帝都ガイガロス。 (ヤツの行き先はレイヴンか…!) カールは心の中で舌打ちをした。 進化したジェノザウラーが向かう先は、もちろんパイロットであるレイヴンだ。 作戦を二重にも三重にも考えておかねばならない状況で、少し考えれば分かる事態であるの に、とんでもない見落としをしてしまった。 「高速ゾイド隊を向かわせろ。私もセイバータイガーで出撃する」 カールはテキパキと指示を出すと、早足で司令室を後にした。 今からなら何とか間に合う。 それに、バン達ガーディアンフォースも向かっているだろう。 何としてでも、進化したジェノザウラーとレイヴンが接触する事だけは避けたい。 いつの間にか走り出していたカールは、自分のセイバータイガーに飛び乗ると、部下達が乗る セイバータイガーを引き連れ、進化したジェノザウラーの後を追った。 その道中、先に出発した高速ゾイド隊の通信を耳にする事が出来たが、進化したジェノザウラ ーの圧倒的な強さに全滅していく様を聞いている様なものだった。 レイヴンが乗っていない状態でも圧倒的な強さ……レイヴンが乗ると、どうなってしまうのだろ うか…? 高速ゾイド隊の通信が途絶えてからしばらくすると、今度はガーディアンフォースの通信が聞 こえてきた。 カールは一瞬安心しそうになったが、ジェノザウラーの様子から察するに、既にレイヴンを乗せ ていると見て間違いなかった。 やがて前方からブレードライガー達の姿が見え始めると、カールはすぐに攻撃態勢に入ろうと したが、ジェノザウラーが視界に入った途端言葉を失った。 ジェノザウラーがこちらに向けて荷電粒子砲を撃とうとしていたのだ。 「いかん! 散開しろ!!」 振り絞る様にカールは全兵士に命令したが、それに素早く反応出来たのは極少数で、カール 自身もギリギリの所で荷電粒子砲を避けた。 ジェノザウラーは荷電粒子砲を放った後、まるで何事もなかったかの様に飛び立ち、あっとい う間に姿を消した。 「………レイヴン……」 カールはジェノザウラーをただ黙って見送るしかなく、向かい所のない怒りをぐっと心の奥に押 し込んだ。 起きてしまった事を、後から悔やんでも時間の無駄だ。 今は他にやるべき事がたくさんある。 「ブラント中佐、聞こえるか?」 『た、大佐!? ご無事だったんですね! ジェノザウラーは…?』 「急いで救護班をこちらによこしてくれ」 『え…? 何があったのです?』 「とにかく急いでくれ、詳細は後で話す」 『……了解しました』 カールは敢えて状況を説明しなかったのだが、ヒュースは彼の様子から全てを察した様だっ た。 続いてカールは生き残った兵士に他に生存者がいないかの確認を行わせ、自身は前方に動 けないままでいるガーディアンフォースの様子を見に行った。 ブレードライガーとディバイソンは幸いな事に無事だったが、コマンドウルフだけが見るからに 重症で、パイロットのアーバインの状態も良いとは言えなかった。 アーバインがそんな状態の為か、バンが明らかにパニックを起こしている様だったので、カー ルはトーマに指示を出す事にした。 「シュバルツ中尉」 『……は、はい、何ですか?』 「もうすぐ救護班がこちらに来る。アーバインの事、報告してやってくれ」 『は、はい……』 「それが終わったら、お前はバンと共に基地に戻れ。いいな?」 『………了解しました』 トーマは返事をするのもやっとという感じだったが、のんびりしている暇はないので、カールは 三人はそのままに来た道を戻った。 荷電粒子砲の直撃を受けたセイバータイガー達は跡形も無く消え去っていた。 カールは荷電粒子砲によって出来た大地の傷跡を眺め、その場で静かに敬礼した。 自分が判断を誤った為に、多くの犠牲者を出してしまった…。 しかも今作戦で必ず倒さねばならなかった相手…ジェノザウラーを取り逃がし、パイロットのレ イヴンまで逃走してしまった。 今回の失敗は、今後の帝国・共和国に影を落とす事になるだろう。 カールは作戦の失敗の責任を取るのは当たり前だが、ただ責任を取るのではなく、これから の働きが犠牲となった者達へのはなむけとなる様に、全身全霊を懸けて努めようと心に固く 誓った。 その為にはまず、今作戦の事後処理を速やかに行わなくてはならない。 失敗をいつまでも嘆くのではなく、その失敗を教訓に次の成功を導き出すのだ。 生存者捜索を行っている兵士達と合流したカールは、辛うじて生き残ったと思われる生存者を 見つけ出すと、救護班に彼らを任せ、次の作業に移った。 次の作業とは、犠牲者の回収である。 それを見越した様に、救護班に続いてヒュースが兵士を引き連れて現れた。 「シュバルツ大佐!」 「中佐……手伝いに来てくれたのか?」 「いえ、手伝いではありません。大佐には急ぎ基地へとお戻りになって頂かないといけません ので、私がこちらの指揮を執ろうと参りました」 「私だけ戻れと…?」 「大佐、お忘れですか? 基地には数多くの部隊、それに共和国軍の方もおられるのです。 彼らに状況を説明し、今作戦が終わった事を伝えねば、彼らは自分の本来の任務に戻れなく なります」 「……そうか…………そうだな。すまないが、後は頼んだぞ、中佐」 「お任せ下さい」 ヒュースはいつもと変わらぬ様子で敬礼し、カールに代わって兵士に指示を出し始めた。 カールはセイバータイガーを基地へと走らせながら、自分は冷静であると思い込んでいた事に 苦笑した。 今回程の犠牲者の数は久方振りで、予想以上に動揺が大きかった様だ。 これまで死者を出来るだけ出さない様に努力した結果ではあるが、それが良いとも悪いとも 言えなかった。 その後、帝都ガイガロスにて今作戦の犠牲者達の葬儀が行われた。 ルドルフももちろん参列し、戦死した兵士達の二階級特進を、彼らの名と共に全員分読み上 げた。 二階級特進……戦死者達から遺族への最後の贈り物と言える。 だが、皮肉とも言えるだろう。 遺族の中には指揮官であったカールを責める者もいたが、カールはただ黙って深く頭を下げる のみだった。 遺族にかけるべき言葉が見つからなかったのだ。 カールが見るからに苦しそうに頭を下げるのを見、遺族達は徐々に彼に怒りを向けるのを止め ていった。 カールを責めても無駄である事は、最初から分かっていた。 しかし向け所の無い怒りをどうすればいいのか分からず、カールを責めるしかなかったのだ。 それが分かっていたからこそ、カールもその怒りをじっと受け止めていた。 お互いの心を理解すると、遺族達はわらわらと姿を消し、カールは一人になったその足で軍本 部へ向かった。 上層部への報告である。 兵士に案内され、大きな会議室に入ると、軍上層部の面々とルドルフがカールを待っていた。 カールは降格処分を覚悟していたが、特にそんな話題は出なかった。 過去の事より未来の事……これからどうするのかを決める為に、カールからジェノザウラーの 件を尋ねただけだった。 意外とすんなり会議が終わってしまい、拍子抜けしたというより腑に落ちなかったカールは、 失礼とは思いつつもルドルフに直談判する事にした。 「陛下、お待ち下さい!」 ミレトス城に帰ろうとしていたルドルフをギリギリの所で呼び止め、カールは人払いを頼んでか ら話し出した。 「陛下、お聞きしたい事がございます」 「何でしょうか?」 「私はマユ破壊作戦に失敗しました。その上、進化したジェノザウラーを取り逃がし、戦死者も 多数出してしまいました。それなのに、私が何の処分も受けないなんてあり得ません。何故 処分して頂けないのですか?」 「……何を言っているのか、理解しかねますね、大佐」 「……?」 「確かに今回の作戦で多くの犠牲者を出してしまいました…。ジェノザウラーの進化について も、残念と言わざるを得ません。ですが、いつまでも悔やんでいる時間は我々には無い。あな たなら百も承知のはずです。今、あなたを処分して一体何の意味があるのですか? 帝国軍 の要とも言える第一装甲師団を一から作り直せ、とでも言い出す気ですか?」 「いえ……そんなつもりは………」 「だったら、処分の事など考えない事です。今作戦の犠牲者の為にも、早く戦いのない時代が 来る様に努力して下さい。僕も頑張りますから」 「………はい、承知致しました。今後も帝国軍人として恥じる事無きよう、より一層努力して参 ります」 カールの返事に納得がいったのか、ルドルフは大きく頷くと、急に小声で話し出した。 「今作戦の失敗は、ガーディアンフォースの失敗でもあります。でも大佐もガーディアンフォー スも処分する訳にはいかない。僕にはどちらも必要な存在なんですよ」 「陛下……ありがとうございます…」 ルドルフの言葉に、カールはただただ頭を下げるしかなかった。 自分が忠誠を誓った若き皇帝陛下は、カールの想像以上に素晴らしい統治者となっていた。 カールが例え降格処分を受けたとしても、帝国軍人として生き続けると分かっているからこそ 処分などせず、前へと進む様に背中を押したのである。 カールはミレトス城へと帰るルドルフに、その姿が見えなくなるまでずっと敬礼し続けていた… ●あとがき● 2部に入ってから、ようやくレイヴンが再登場しました! そして、ムンベイも再登場! ついで(?)にアーバインが初登場!! ここまで主人公サイドのキャラを蔑ろにした小説は珍しいと自負しております(爆) しかも出て来たといっても、見事にちょい役(笑) ファンに怒られそう…だけど、カールが主人公だから止むを得ないと理解して下さい。 レイヴンも再登場した割に、扱いはムンベイ・アーバインと変わらず(苦笑) 長編小説では、レイヴンの活躍は2部では難しいと思います。 ムンベイ・アーバインなんて更に難しい…。それこそ登場すらしませんし…。 まぁ、とにもかくにも、主要キャラが出揃ったという事で、めでたい事に変わりありません。 しかし内容は全くめでたくありませんでしたね。 共和国軍にはほとんど被害は出ませんでしたが、帝国軍はかなり出た、と思われます。 アニメではそんな暗い話題は見事にかっ飛ばしだったので、長編小説ではわざと葬儀シーン も盛り込みました。それが現実ですからね…。 変に飛ばしていたアニメもアニメですが、視聴者も見たくない現実でしたし、飛ばすのは仕方 なかったと理解しています。 だからこそ私の小説では最後に葬儀シーンが入り、ルドルフに出張ってもらいました。 皇帝として、彼は様々な仕事をこなしているのです。 それに加えて、凹むカールを浮上させる役割も担ってもらった訳ですが、これはサラの教育の 賜物って事で、解釈して頂けると嬉しいですv 今回はサラがカール達の会話上にしか登場しなかったので、こんな部分で自己補完(笑) シリアスモードのトーマに、サラの話をさせたのも自己補完と言えなくもないですが、トーマだ っていつまでも暗いままでいる訳はないだろう!と考えまして、あれはトーマの素です。 トーマなりの「兄への元気付け」のつもりだったのでしょう。 何だかんだ言いながら、カールもサラの話を振ってもらえて嬉しかったはずです。 美しき兄弟愛ですね〜v ●次回予告● ジェノザウラーから進化したゾイドにより、帝国軍…中でも第一装甲師団にはかなりの被害が 出ていました。 その為、カールは急ぎ部隊の立て直しに着手。 他部隊から多数の兵士が異動となり、失ったゾイドも補充し終えたところで、カールが一息つ いていると、副官のヒュースが歓迎会を開きたいと申し出ます。 何か企んでいるのではないか?と思いつつも、カールはその申し出を許可します。 第七十七話「酒宴」 私の事……好き? <ご注意> 次の第七十七話「酒宴」は性描写を含みます。 年齢制限をしなくてはならない内容になっていますので、14禁です。 今回も例によってご注意のページを設け、ワンクッション置きます。 十四歳未満の方、そういう描写がお嫌いな方、苦手な方はお読みにならないで下さい。 |