第七十二話
「見合い〜後編〜」
「あ〜〜もぉ〜どこへ行っちゃったのかしら…?」 カール達の捜索に勤しんでいたナズナとオコーネルは、未だに手掛かりすら見つけられず、森 の中を歩き回っていた。 そんなに遠くには行っていないと思われるが、カール達だけでなく、ハーマン達の姿さえ見つ けられないのは困ったものである。 徐々に疲れが出てきていたナズナは、森が途切れた所に広がる草原でパタッと倒れ込んだ。 「ナ、ナズナさん!?」 「ん〜、ちょっと休憩させて下さい…」 そう言ってナズナが大きく伸びをすると、それならとオコーネルも休憩する事にした。 そしてその時になってようやく『完全なる二人きり』という状況であると気付き、オコーネルはド キドキしながら横目でナズナを見てみたが、ガッカリする現実を目の当たりにした。 何とナズナが寝入ってしまっていたのである。 オコーネルはガクッと項垂れたが、例え相手が眠っていたとしても二人きりは二人きり、と即 座に気持ちを切り替えた。 そうするととても気分が良くなり、ダメだと思いながらも、オコーネルはナズナの寝顔を観察し 始めた。 (やっぱり……かわいいなぁ………) 視線が桃色の唇で止まり、オコーネルの心に邪な考えが浮かびそうになった途端、ナズナ がハッと目を覚ました。 「あ、あれ!? 私、寝ちゃってました!?」 「は、はい、ぐっすりと」 「ご、ごめんなさい! 無理に付き合わせてるのに、あなたを放って寝ちゃうなんて…」 「い、いえ、気にしないで下さい」 オコーネルは慌てて首を横に振ってみせたが、ナズナが体力的にもう限界が来ていると察 し、思い切って帰ろうと提案してみる事にした。 「…ナズナさん、そろそろ帰りませんか?」 「え…?」 「今日は長時間車で移動したんでしょう? それなら体に相当疲れが溜まっているはずです。 明日に疲れを残さない為にも、早めに休んだ方がいいですよ」 聞き入れてくれる可能性は低かったが、オコーネルが真剣な面持ちで説得すると、ナズナは 意外と素直に頷いた。 オコーネルの心遣いが嬉しかった様だ。 「そうですね。じゃあ、帰りましょうか、大尉」 「はい、帰りましょう」 オコーネルは元気に立ち上がると、笑顔でナズナに手を差し出したが、その時彼の懐から ポロリと何かが落ち、笑顔が瞬時に凍り付いた。 オコーネルの手に掴まって立ち上がろうとしていたナズナは、すぐに彼が落とした物を拾うと、 驚きの表情を浮かべた。 オコーネルが落としたのは……以前ナズナが彼に贈ったもの。 ナズナが亡き祖母から貰ったお守りであった。 「大尉、これ……」 「あ、いや、それは、その……」 「ずっと持っていてくれたんですか?」 「………はい、お守りは肌身離さず持つものですから」 「そう言えばそうですね」 ナズナはなるほどと頷いてみせると、お守りをオコーネルの手にそっと戻した。 「…そのお守り、大尉の事をちゃんと守ってますか?」 「もちろん守ってくれてますよ、ナズナさんの……おばあ様の気持ちが籠もってますから」 本当は『ナズナさんの気持ち』と言いたいところだったが、照れ臭さの為にオコーネルは本心 を言う事が出来なかった。 それでもオコーネルの心からの言葉は愛する女性に伝わり、ナズナは満面の笑みを浮かべ ていた。 「良かった……ちゃんと役に立ってて………」 ナズナが呟く様に言うと、それがキッカケになったのか、オコーネルは意を決した様子で彼 女に語りかけた。 「ナズナさん」 「はい?」 「じ、実は……私が集団見合いに参加したのには理由があるのです」 「理由…?」 「見合いにはハッキリ言って興味はありません。ですが……ナズナさんが参加されると聞い て…だから私は………」 極度の緊張の為に、一番肝心なところで詰まってしまう…。 オコーネルは自分の不甲斐なさに泣きたくなったが、そんな彼の想いを知ってか知らずか、ナ ズナは両手をぽんと鳴らした。 「あ、そっか。私に会いに来て下さったんですね?」 「え…………………えぇ!? ど、どどどど、どうして分かったんですか!?」 「私も大尉に会いに来たからですよ。ふふふ、気が合いますねv」 ナズナが自分と同じ想いを抱いていたと分かり、オコーネルは天にも昇る気持ちになったが、 もしや夢ではないか?と頬を思い切り抓ってみた。 もちろん頬には痛みが走り、夢ではないと確信が持てる様になった。 強く抓り過ぎた為にオコーネルが涙目になっていると、ナズナは心配そうに彼の顔を覗き込 み、恐る恐る声をかけた。 「大尉、大丈夫ですか…?」 「だ、大丈夫ですよ。それより……先程おっしゃった事は…その………わ、私の事が好き、と 解釈してもよろしいのでしょうか?」 「ええ、いいですよ。私、大尉の事好きですもの」 余りにもあっさりナズナに『好き』と言われた為、オコーネルの思考回路は緊急停止してしまっ た。 そしてオコーネルが思わずその場に倒れそうになると、ナズナは慌てて彼の体を支えた。 「あなたも疲れていたんですね。ごめんなさい、こんな時間まで付き合わせてしまって…」 「い、いえ、私はまだ大丈夫ですよ」 「じゃあ、大丈夫な内に急いで帰りましょう」 本当は一人で歩けたが、オコーネルはナズナに体を支えてもらいながら帰路に就き、至福の 時を過ごしていた。 が、幸せな時間は長くは続かないのが定石。 すんなりと宿泊施設に到着してしまい、オコーネルは内心ガッカリしながらも、ナズナに笑顔 で礼を言って彼女から離れた。 ナズナは照れ臭そうに微笑むと、今度は彼女の方が頭を下げて礼を言った。 「オコーネル大尉、今日は本当にありがとうございました」 「いえ、お礼を言って頂く程の事はしていませんよ」 「そんな事ないです、とても助かりました。これからも協力して下さいねv」 「はい。………え?協力…?」 「はい、よろしくお願いしますv」 違う……何かが違う………!とオコーネルは感じた。 先程ナズナが言った『好き』という言葉は、自分が考えているものとは意味が違うのではない だろうか…? しかしナズナに改めて尋ねる事など出来るはずもなく、オコーネルはナズナを部屋まで送る と、重い足取りで自室へ戻り、ベッドに横にはなったが眠れぬ夜を過ごしたのだった… 所変わって、宿泊施設から西方に位置する森の中では、カールとサラがいちゃいちゃを再開し ていた。 「……んっ…はぁ………v カール……vv」 「サラ……気持ちいいか…?」 「…うん、すごく……あぁん………いいの……v」 サラはカールの優しく激しい愛撫に身をくねらせ、見るからに気持ち良さそうに喘いでいたが、 ハッと明日の予定を思い出し、本格的に行為が始まってしまう前に彼に伝えておく事にした。 「…カール」 「ん? もう我慢出来ないのかい?」 「そ、そうじゃなくて……明日もまだお見合いの続きがあるんだから、ちゃんと手加減してくれ なきゃダメだよ?」 「君は今日もう充分頑張ったじゃないか。明日はハーマン達に任せればいい」 「そんな訳にはいかないわ、今回の集団お見合いの仲人は私達四人なんだよ? 明日も四 人で力を合わせて盛り上げましょ、ね?」 「…………」 カールは一瞬考え込む様な仕草を見せたが、明日はやはりハーマン達に全てを押し付けて やろうと即決すると、にやりと不適な笑みを浮かべた。 その笑みを見たサラはドキッと体を硬直させ、今夜はカールを止められそうにないと直感で悟 った。 「分かった、今夜は手加減するよ」 「……ほんと?」 「ああ、本当だ。ただし……頃合いを見て君が俺を止めてくれ」 「そ、そんなの無理だよ!」 「無理かどうかはやってみないと分からないだろう?」 「…やってみなくても分かるもん」 サラが頬を膨らませながら呟く様に言うと、カールは自分の思惑が彼女に伝わったと判断し、 ニカッと爽やかに笑ってみせた。 「早めに終わるには、早めに始めなくては、な」 「え…?」 「君の方はもう準備万端だから心配ない。ほら、ここはもうこんなに…」 そう言ってカールは既に濡れている状態のサラの入口に指を挿し込み、いやらしい音をさせな がら奥で優しくかき混ぜた。 途端にサラはピクンと反応したが、抵抗する事は一切なく、カールの愛撫にすんなり身を任せ 始めた。 「はぁ………あ…v カール…私が止めてって言ったら……絶対止めてね……」 「ああ、出来る限り努力するよ」 「んぁっ…ふぁ……vv …カール………私、もう…………」 「じゃ、そろそろ…」 カールはサラの耳元で甘く囁くと、彼女の体を開いて自らを迎えさせた。 サラは前戯中よりも大きな声を出して喘ぎ、その声は薄暗い森の中へ響くと同時に、虫達の 鳴き声によって素早く掻き消された。 東方の森でも、同じ様な声が響いていたのは言うまでもない… * 集団見合い二日目の朝、仲人達は準備をする為に早くに部屋から出て来たが、姿を見せた のは男性陣だけであった。 カールとハーマンは挨拶を交わす事なく睨み合いを始め、女性陣がいない理由を悟り合った。 「……サラはどうした?」 「……お前こそ、ミシェールはどうした?」 「…………。お前らの方が経験豊富なんだから、今日の為に何とでも出来ただろ?」 「そんな事はない、経験が浅いお前達の方が調整は容易に出来たはずだ。それなのに、まさ か外でやるとはな…。ミシェールに嫌われてしまったんじゃないか?」 「き、嫌われる訳ないだろ!? 俺はちゃんとミシェールに確認して、だな………だから同意 の上で……」 そういう事を言うのはまだ照れが残っているらしく、ハーマンは顔を真っ赤にしながら口籠もっ た。 カールがやれやれと肩をすくめていると、男性陣の話を聞いていたのか、女性陣がふらふらし ながら部屋から出て来た。 カールとハーマンは慌てて愛する女性の体を支えたが、彼女達からは当然の如く非難の目を 向けられてしまった。 「カール、そういう事をこんな所で話さないでほしいわ」 「そうよ、ロブ。誰が聞いているか、分からないんだし…」 『う……』 男性陣は言い訳も出来ずに言葉を詰まらせ、互いを横目でチラリと睨み付けたが、今はそん な事を気にしている暇はないとばかりに、愛する女性の顔を心配そうに覗き込んだ。 サラもミシェールも立っているのがやっとといった状態で、昨夜の出来事が激しい内容であっ た事を物語っていた。 それでも女性陣は男性陣に体を支えてもらいながら見合いの準備を整え、参加者・仲人全員 揃っての朝食を終えると、予定通り二日目の見合いが始まった。 今日のメインは『ピクニック』 広大な森を最大限に利用する為に、女性陣がノリノリで決めたイベントである。 しかも宿泊施設を出発する前に、見合い参加者達にお弁当を協力して作ってもらい、それによ り更に親密度をアップさせようという魂胆である。 見合い参加者達はサラとミシェールの思惑通り男女仲良く協力し合い、賑やかにお弁当作り を楽しんでいた。 昨日の時点で既にカップルになっていた者達はより親しく、まだ集団で話している者達はお弁 当作りを話の種にして、見合いは順調そのものであった。 もちろんオコーネルとナズナも二人で楽しそうにお弁当作りに勤しんでいたが、周囲のカップ ルとは明らかに雰囲気が違っていた。 その原因となっているのは、オコーネルの表情。 懸命に笑顔を作っている様だが、目が半開きでぼんやりしており、聞かなくても分かる程寝不 足な顔付きであった。 「変ねぇ…。昨日何かあったのかしら…?」 「さぁ…」 サラとミシェールはナズナ達の様子を窺いながら手を動かし、自分達の分のお弁当をテキパ キと作っていった。 ミシェールはまだ動きが鈍かったが、サラはもうすっかり元気になったらしい。 やはり経験の数に違いがある為だろう。 カールとハーマンもお弁当作りを一生懸命手伝い、やがて全員がお弁当を作り終えると、見 合い参加者と仲人達はゾロゾロと宿泊施設を出発し、賑やかに談笑しながら森の中を散策し 始めた。 「やっぱり朝と夜とでは印象が全然違うわねぇ」 「ほんと〜。所々に灯りはあったけど、夜の森はちょっと不気味だったわよね」 「うんうん、不気味だったわ」 周囲につられてサラとミシェールも雑談しながら歩き、彼女達について行く形で歩いていたカ ールとハーマンは、終始無言で前だけを見ていた。 『前』と言っても、カールはサラの後ろ姿、ハーマンはミシェールの後ろ姿を見つめていた様 だ。 常に愛する女性しか目に入らない、似た者同士なカールとハーマンであった。 小一時間程経った頃、森を抜けて広々とした草原に到着し、そこでお弁当を食べるのでしばら くご歓談を、とサラが伝えると、見合い参加者達は各々気に入った相手と散って行った。 サラ達仲人の面々は草原の中心部を陣取り、参加者全員を観察出来る状態で一休みしつ つ、視線は当然オコーネルとナズナに向けられていた。 「今朝お弁当を作ってる時はどうなる事かと思ったけど、心配しなくても大丈夫みたいね」 「ええ、良かったわ。ほっと一安心ね」 女性陣は談笑しながら水筒に入れたコーヒーをカップに注ぎ、手持ち無沙汰になっている男 性陣に笑顔で差し出した。 男性陣は見るからに緩んだ笑顔でカップを受け取ると、暇過ぎて不機嫌になっていた気持ち があっさり和んだ。 「……あれ? ナズナと大尉は…?」 その時ふと周囲を見回したサラは、オコーネルとナズナの姿が見当たらない事に気付いた。 ほんの少し目を離しただけなのに、一体どこへ行ってしまったのだろうか…? ミシェール達も辺りをキョロキョロ見てみたが、結局二人の姿は見つからなかった。 「もしかして、あの二人…」 「予想以上に展開が早いわね。これはもう恋人確実かも♪」 「そうねv 記念すべき第一号カップルがあの二人で喜ばしいわvv」 サラとミシェールは任務は完了したとばかりにのほほんと談笑し始め、それならとカールとハ ーマンも話の輪に入った。 すると、男性陣がそう仕向けているのか、徐々に四人ではなく二人で話す様になっていった。 二人というのはもちろんカールとサラ、ハーマンとミシェールという分かれ方である。 男性陣は愛する女性しか目に入っておらず、早く二人だけの世界に入ってしまおうと、自らを 壁にして相手と向き合った。 「カール、どうしたの?」 「どうしたって何が?」 「ミシェール達に背中を向けちゃったら、皆でお話出来ないよ?」 「皆で話す必要はないよ、二人で話そう」 「でも……」 「ハーマン達も二人で話したいはずだ。お互い邪魔はしない方がいい」 サラは一瞬困った様な表情を浮かべたが、カールが頬を優しく撫でると、すぐに笑顔を見せ た。 カール達の背後でも同じ様な事が繰り広げられ、ハーマンとミシェールは二人で仲良く話し始 めた。 そうして二組のカップルがそれぞれ仲睦まじく談笑していると、横から微かだがカメラのシャッ ター音が聞こえてきた。 男性陣は素早く女性陣を背後に隠し、音がした方をよく観察してみると、そこにはカメラを構え たナズナとオコーネルの姿があった。 どうやら草むらに隠れて写真を撮っていたらしい。 「な、何してんだ、お前ら?」 ハーマンが驚き半分・呆れ半分で尋ねると、ナズナとオコーネルは誤魔化しを決め込む為に 妙ににこにこしながら歩み寄って来た。 「えへへ、実は私、写真を撮るのが趣味なんです。オコーネル大尉は私の趣味に付き合ってく れたんですよv」 「ナズナ、大尉に迷惑かけちゃダメでしょ?」 「すみません、以後気を付けま〜す」 本心から謝っているのか疑わしかったが、サラ達仲人陣は小さくため息をつくと、ナズナとオコ ーネルを交互に見て肩をすくめ合った。 てっきり二人きりになる為に姿を消したと思っていたが、ただ写真を撮る為に隠れていただけ なのだ。 ハッキリ言ってナズナ達の為に集団見合いを開催したと言っても過言ではないのに、二人は 全く進展を見せてくれない。 業を煮やした仲人陣はオコーネルを取っ捕まえ、ナズナから少し離れた所でコソコソと相談を 始めた。 |
「大尉、どうしてとっとと告白しないんですか?」 「え……ど、どうしてと言われましても………」 「チャンスは何度もあったはずだ。何故それを活かせないんだ?」 「た、確かにチャンスはありましたが……だからと言ってそう簡単には………」 「だぁ〜! 情けねぇ!! お前、それでもこのロブ・ハーマンの部下なのか!? しゃきっと しろ、しゃきっと!」 「……少佐には言われたくないんですけど…」 「何だと!? どういう意味だ、それは!」 「ロブ、落ち着いて。大尉にも色々と事情があるのよ、きっと」 ミシェールの一言で落ち着いた仲人陣は、今度は何も言わずにじ〜っとオコーネルを見つめ 始めた。 言葉よりも視線の方が余計に圧力がかかり、オコーネルは観念してポツリポツリと話し出し た。 「告白は…………微妙でしたが、一応するにはしたんですよ…。でも……」 「でも…?」 「どうやらナズナさんは……私の事を友達としてしか見てくれないようで………」 「……どうしてそう思うの…?」 「……………先程の我々の行動を見れば分かると思いますが?」 オコーネルは哀愁を感じさせる様な笑みを浮かべ、ガックリと肩を落とした。 サラ達は背後で熱心にカメラの調整をしているナズナを見、再びオコーネルに視線を戻すと、 なるほどと頷いた。 確かに先程の二人の行動は、恋人に発展しそうな者の行動とは言いがたい。 上手くいっていると勝手に思い込んでいたが、完全に気のせいだった様だ。 サラとミシェールは急遽二人だけで密談を行い、自分達の経験を参考にして、もう一度ハッキ リ言った方が良いとの結論に達した。 そうと決まれば善は急げとばかりに、サラ達はオコーネルをナズナの前に連れて行き、もう一 度告白する様に耳打ちして二人から離れた。 オコーネルは戸惑いを隠せなかったが、ここで言わなければ男ではない!と自分に言い聞か せ、真剣な面持ちでナズナを見つめた。 「ナズナさん」 「はい、何ですか?」 「あ、あの………私は…あなたの事が………す、すす、す…………好きです!」 オコーネルの想いの全てが込められた言葉は、ナズナの心に届くのだろうか…? サラ達が心配そうに見守る中、ナズナは突然の告白に驚いて目を丸くしていたが、すぐににっ こりと満面の笑みを浮かべた。 「ありがとうございます、オコーネル大尉」 「……え?」 「昨日も言いましたけど、私もあなたの事好きですよ」 ようやくきちんと気持ちを確認する事が出来、オコーネルは飛び上がって喜ぼうとしたが、そこ へどっと仲人陣が押し寄せて来た。 「さすが俺の部下! やる時はやるな、うん」 「おめでとう、二人共v」 「一時はどうなる事かと思ったが、見直したぞ、大尉」 「研究所の皆に報告しなくちゃねv」 本人達が喜びを噛み締める間もなく、仲人陣は祝福の言葉を次々と口にした。 オコーネルは喜ぶタイミングを逸してしまい、話の中心にいるのにショボ〜ンとなっていたが、 彼とは対照的に、ナズナは落ち着いた様子で話し始めた。 「あの〜、皆さん、何か勘違いしていませんか?」 「………? 勘違い?」 「私と大尉はお友達になっただけですよ?」 「……………………………えぇ!? お、お友達!?」 サラ達仲人陣が驚いている横では、当然の様にオコーネルがモノクロになってショックを受け ていた。 想いが通じ合い、無事恋人同士になれたと思ったのに、オコーネルの幸せは長くは続かなか った…。 モノクロで固まってしまったオコーネルを気遣いつつ、サラ達は何とか説得を試みたが、ナズ ナはキョトンとしたまま首を傾げるばかりであった。 余り長く説得を続けると、オコーネルを益々惨めにさせるだけなので、サラ達は諦めた方が良 いと判断し、肩を落としながらも昼食の準備を始めた。 その様子を見計らい、ナズナはサラ達の傍から離れると、草むらの中でモノクロ状態のまま固 まっているオコーネルの元へ歩み寄った。 「オコーネル大尉」 ナズナが小声で声をかけると、オコーネルはぎこちない動きで振り返り、必死に笑顔を作って みせた。 「何ですか、ナズナさん?」 「あの………さっきはごめんなさい」 「あはは、ナズナさんが謝る必要はないですよ。全部……私の早とちりだったんですから…」 「い、いえ、そうではなくて……その…さっき皆に言った事は嘘なんです」 「……嘘?」 「博士達に色々言われちゃうのは恥ずかしくて………だから咄嗟に嘘をついてしまったんで す……」 オコーネルはナズナの話を理解するのに多少の時間がかかったが、とてつもなく幸せな結論 に達すると、瞳をキラキラと輝かせた。 『さっき皆に言った事は嘘』という事は……友達になっただけではないという事になるからだ。 「じゃ、じゃぁ、ナズナさん………本当に私と…?」 「はい。よろしくお願いします、大尉v」 「こ、こちらこそよろしくお願いします!」 オコーネルはようやく飛び上がって喜ぶ事が出来、嬉しさの余りナズナを抱きしめたくなった が、彼の手は見事に空回りしてしまった。 昼食の準備が出来た、と仲人陣からお呼びがかかった為だ。 オコーネルはまたまたちょっぴりショックを受けたが、ナズナは照れ臭そうに微笑みながら彼 の腕を引っ張った。 「大尉、さっき言った事、皆にはしばらく内緒にして下さいね」 「…どうしてですか?」 「周りに変に騒がれると、嬉しさが半減しちゃうと思いません?」 「……確かに、半減しそうですね」 「じゃ、二人だけの秘密、という事でv」 「は、はい」 ナズナとオコーネルはクスクス笑い合うと、何事もなかった様に平然とサラ達の元へ向かっ た。 昼食後、仲人代表のハーマンが見合い終了を宣言し、二日間の集団見合いは無事終わりを 迎えた。 見合い参加者達は気に入った相手と連絡先を書いたメモの交換を行うと、宿泊施設へ戻って 帰り支度をし、別れを惜しみながら順次帰路に就いた。 サラ達仲人陣は見合い参加者を笑顔で見送っていたが、最後にオコーネルとナズナが姿を見 せると瞬時に笑顔を消し、哀れみの表情を浮かべた。 もちろんオコーネルに向かって、である。 オコーネルは本当の事を言いたくなったが、既のところで耐え、仲人陣に微笑んでみせた。 「私はナズナさんを研究所へお送りしますので、お先に失礼します」 「大尉…………あなたって本当にいい人ね」 「い、いえ、そんな事はないですよ。では、失礼します」 サラとミシェールには潤んだ瞳で、カールとハーマンには呆れ顔で見守られつつ、オコーネル とナズナは宿泊施設から去って行った。 「はぁ〜、終わった終わったぁ〜。やっと肩の荷が下りたぜ〜」 「俺達はほとんど何もしてないがな」 「む……。うるさいぞ、シュバルツ」 周りが静かになった途端、喧嘩を始める男性陣に対し、女性陣は一休みしようと宿泊施設内 へ歩き出した。 すると、男性陣は慌てて女性陣の後を追い、四人は巨大なリビングでのんびりとコーヒーを飲 み始めた。 「サラ、今日はこれからどうするの?」 「どうするって……研究所に帰るだけだけど?」 「良かったら、もう一日ここに泊まっていかない? 私達も泊まる予定なのよ」 「へぇ、そうなんだ〜。ん〜どうしようかなぁ…?」 女性陣が和気藹々と話している横で、男性陣は全く正反対の反応を見せていた。 カールはサラともう一日一緒にいられるという喜びの笑顔を見せており、ハーマンはミシェール と二人だけで過ごす予定だったのに…と落胆の表情を浮かべていた。 そんな二人の反応に一切気付かず、ミシェールは一緒に泊まろうと勧め、サラは一人では決 められないとカールを見つめた。 「カール、今日も泊まって大丈夫?」 「ああ、俺は大丈夫だよ。君は?」 「私ももちろん大丈夫。じゃ、私達も泊まらせてもらうね、ミシェール」 「ええ。皆で一緒にのんびりしましょv」 「そうねv」 こうして四人はもう一日大統領専用宿泊施設に泊まる事になり、サラとミシェールは楽しそう に談笑を始めたが、カールとハーマンはギロリと睨み合ったまま微動だにしなかった。 今夜の事を無言で相談しているらしい…。 やがて考えがまとまった男性陣は、女性陣に聞こえない様に小声で離れた部屋で休む事を 取り決めると、平然と話の輪の中へ入っていった。 その日の夜、二組のカップルは男性陣の取り決め通り離れた部屋に泊まり、夜更けまでいち ゃいちゃと甘〜い時間を過ごしたのだった。 ●あとがき● 祝! オコーネルの恋、見事に成就!! 始めはこんな急展開を考えていなかったのですが、ちゃんと告白までしたのに、ナズナに想い が伝わらなかったら、オコーネルが哀れ過ぎる… そう思って成就という結果になりました。良かったね、オコーネルv でも君はメインじゃないから、成就したからと言って、いちゃいちゃは出来ないんだよ(笑) 今後の戦いの事を考えると、オコーネル×ナズナはどう頑張っても出せそうにありません。 ハーマン×ミシェールですら、ギリギリな感じでしか出てこないです。 戦いがメインの話だと、出したくても出せないという悲しい現実が…! しかしカール×サラはメインカップルなので、意地でも出しまくりますv それにしても、オコーネルを弄るのは思いの外楽しかった♪ 彼の素直な反応は、昔のカールを思い出させてくれます。微笑ましくて良いですなぁ〜v 恋愛については、オコーネルはカールとハーマンの中間くらいの表現にしました。 いまいちオコーネルのキャラ像が定まってないですが、アニメの方でも影の薄いキャラとして 描かれていました(爆)し、今後の頑張りに期待しようと思ってます。 恋の進展は2部終了後まで持ち越しですが(笑) 最後に恒例のイラストについての補足(言い訳とも言う;) サラとミシェールが前日と比べて妙に暑苦しい格好をしているのには訳があります。 もちろん昨夜のアレのせいなんですね〜v 多すぎて隠すのが大変です(笑) 外という事で、「開放的になった結果」だと思って下さい(←いいのか…?) ●次回予告● トーマがジェノザウラーに襲われ、大怪我を負ってしまいました。 しかしその報告を受けつつも、カールは目の前の仕事に集中します。 そんな時、国立研究所に招かれざる客がやって来ます。 その客とは一体誰なのか…? サラに迫る魔の手から、カールは彼女を守り切れるのか…? 第七十三話「絶縁」 私はカールに汚された覚えはないわ! |