第六十四話
「好敵手」
いま ガーディアンフォースが設立されて数ヶ月経ったが、辺境地域での事件は未だ収まりを見せ たずさ ず、正規のガーディアンだけでなく、帝国・共和国両軍の部隊も事件解決に携わっていた。 事件を起こす犯人達は必ずと言って良い程先手を打っており、ガーディアンフォース側は常に こんとん 後手に回る形で、事態は混沌としたまま時間だけが過ぎていった。 それでもデスザウラー戦の英雄、バン・フライハイトの活躍のお陰で少しずつではあるが光が もっ 見え始め、両軍は全力を以て事件を鎮圧し続けた。 帝国側のガーディアンであるトーマ・リヒャルト・シュバルツの活躍も目を見張るものがあり、そ の評判は兄カールの元へも当然伝わってきていた。 しかしカールは大して喜ぶ事はなく、弟の成長を黙って見守るだけであった。 トーマはまだ成長途中。 今褒めたりしたら、あの弟はのぼせ上がるだけで成長を止めてしまうだろう。 どちらにせよカールは素直に褒めはしないので、自身も毎日忙しく働きつつ、トーマの仕事ぶ りは普通の情報として受け止めていた。 そんな忙しい日々が続いたある日、カール率いる帝国軍第一装甲師団に新たな任務が舞い 込んできた。 またしても辺境地域の町で事件が起きた、との事。 カール達は今日まで別の町で起きた事件の解決にあたっていたが、偶然新たな事件が起き た町から一番近い位置にいた為、連続して任務が回ってきた様だ。 はず 駐留している町の外れに建てたテント内にて、カールは現時点までの報告書に目を通すと、 事件を担当しているガーディアンの名を見るなり苦笑した。 トーマがその事件を担当していたのだ。 しかも助っ人として、バンとフィーネにも招集を掛ける予定になっている。 ひか 報告書を読み終えたカールは、傍に控えている兵士達にテントの撤収作業を開始する様にと 指示を出し、副官のヒュースに声をかけた。 「中佐、出撃準備を整えるのにどの程度時間が掛かる?」 「そうですねぇ…。テントの撤収時間を考えると、一時間といったところでしょうか」 「一時間、か…。無理を言って申し訳ないんだが、出来る限り時間を抑えてくれ。準備が出来 次第すぐに出撃する、時間が無いようだからな」 一番近い位置にいるとは言え、トーマがいる町へはどんなに急いでも丸一日掛かる。 町の状況は深刻になりつつあるのに、間に合わないかもしれない。 運良く近場にいたバンとフィーネを呼び寄せたのは正解と言える。 もと トーマ一人では心許ないが、三人なら何とかなるはずだ。 す 程なくして出撃準備が整うと、カールは直ぐさまアイアンコングに乗り込み、部下達に出撃の 指示を出した。 すさ 駐留していた町を出るとすぐに砂漠地帯に入り、凄まじい砂嵐の影響で電波状態が非常に悪 かったが、そんな中トーマから通信が入った。 「兄さん…、兄さん!」 相変わらず…とカールは心の中で苦笑しつつ、いつもの無表情で応答した。 「…シュバルツ中尉」 「……あ、し、失礼しました、カール・リヒテン・シュバルツ大佐」 「で、何の用だ?敵に新たな動きがあったのか?」 「はい。実はオーガノイドを操る敵を拘束しましたので、ご報告をと思いまして…」 辺境地域で起きている事件の首謀者は、目撃者の証言によると、赤いオーガノイドを連れた 男との事。 その男をトーマが拘束したらしい。 そう簡単に捕えられる相手ではないと思われたが、カールが素直に感心しようとすると… 「お〜い、シュバルツ〜!」 知っている声がトーマの背後から聞こえた。 まさかと思いながら、カールはトーマと誰かのやり取りをモニター越しに見守った。 「貴様!何故私を呼び捨てにする!?」 「ま、まぁまぁ。ちょっとそっちのシュバルツと話をさせてほしいんだけど…」 「そんな必要はない!」 やはり思った通り、トーマの背後にいるのはバン。 あ しかしカールは敢えて気付かなかったフリをし、平然と話を続けた。 すで 「共和国のガーディアンが既にそちらに」 「援軍でありますか?」 「銀色のオーガノイドを連れた、バン・フライハイトという者だ」 カールの話が終わらない内に、電波状態悪化の為に通信が切れてしまった。 カールが小さくため息をついていると、近距離なら大丈夫らしく、ヒュースから通信が入った。 「大佐、大丈夫なんですか?」 「何がだ?」 「先程中尉が拘束したと言っていた人物は、敵の首謀者ではないと思われますが?」 「そうだな。恐らく何かの手違いで、バン・フライハイトを拘束してしまったのだろう」 「大佐……時間が無いというのに、随分冷静なんですね」 「焦ったところで何の解決にもならないからな。こういう時こそ、冷静にいるべきだ」 「それはそうですが……敵の戦力を考えると、二人だけでは苦戦は必至でしょう。英雄である バン・フライハイト少佐なら何とかしてくれるかもしれませんが、もう一人は大佐の弟ですし…」 ヒュースの言葉にピクリと反応し、カールは極寒を思わせる冷たい笑みを浮かべてみせた。 「私の弟がどうかしたのかね、中佐?」 「い、いえ、何でもありません…」 そ ヒュースは恐怖の余り思わず目を逸らすと、もう弟の話題は出さないでおこうと心に決めた。 そんなヒュースの決意に気付きつつも、カールは何事もなかった様に話を最初に戻した。 「あの二人なら大丈夫だ、我々が到着する頃には任務を完了しているはずだ」 「そうですか…?大佐がそこまでおっしゃるのなら信用しますけど…」 本当は信用していないらしいヒュースが頷いてみせると、カールも一応頷き返して通信を切っ た。 確かに、不安はある。 が、バンならトーマの好敵手になってくれるかもしれない。 しがらみ とら バンはトーマと同世代であるし、何より国同士の柵に囚われない人物。 常に柵に囚われているトーマを、良き方向に導いてくれるだろう。 良き好敵手は良き友でもある。 時には衝突し、それによって互いを高め合う事が出来る最良の関係。 カール自身は見つけるのが遅かったが、トーマには早い段階で見つけてほしいと思う。 良き友を得た時、トーマは軍人として一回りも二回りも大きく成長出来るはずだ。 しかし、ただ一つ問題が残っている。 トーマの一番の悪癖である『惚れっぽい病』 今回の任務はバンと共にフィーネも招集されているので、この悪癖が出る可能性が極めて高 い。 サラと初めて出会った時と同様に、相手には決まった恋人がいるのに全く気付かず、当然の 様に一目惚れしてしまうだろう。 これだけはカールにも止めようがない。 バン達と出会う事によってトーマがどの様に成長するのか、不安でもあり楽しみでもあるカー ルであった。 トーマとの通信から丸一日が過ぎようとした頃、カール率いる第一装甲師団はようやく事件が 起こっている町に到着した。 晴れ晴れとした笑顔で出迎えるトーマ、そしてバンとフィーネ。 おの 彼らの表情を見るだけで、事件は解決したのだと自ずとわかった。 さっそう カールはアイアンコングから颯爽と地面に降り立つと、見るからに嬉しそうな顔をしているトー マの傍へ歩み寄って敬礼した。 せんめつ 「兄さん!……あ、いえ、シュバルツ大佐。ご覧の通り敵の殲滅に成功……あ、あの………」 敬礼しながら報告を始めるトーマを放置し、カールはバンとフィーネの元へ向かった。 と 久方振りに会う帝国を救った少年少女は、年齢に見合う成長を遂げていた。 しかし内面にはまだ幼さが残っている様で、カールが傍にやって来ると、二人は子供らしい満 面の笑顔を見せた。 「よう!」 「バン・フライハイト、久し振りだな。フィーネも元気そうだね」 「お久し振りです、シュバルツ大佐」 三人がにこやかに挨拶を交わしていると、取り残されていたトーマが思い出した様に駆け寄っ て来た。 カールはバン達に微妙な笑みを見せ、二人に改めてトーマを紹介した。 「私の弟のトーマだ。未熟者だが、よろしく頼む」 「大佐…!?」 まだ一人前と認められていなかったのかとトーマはショックを受けたが、そんな彼を見てバン は苦笑いを浮かべ、フィーネは笑顔で声をかけた。 「よろしくね、シュバルツ中尉」 「は、はい、フィーネさんv」 フィーネの笑顔によって頬を赤らめるトーマを横目で見、カールはやはりと心の中でため息を ついた。 予想通り、トーマはフィーネに一目惚れしてしまった様だ。 「キュィィィv」 皆が挨拶するなら自分も、とジークがかわいい声をあげると、バンとフィーネだけでなくカール も声を出して笑った。 何とも微笑ましい光景に、思わず笑いが込み上げてきたのだ。 が、トーマだけは皆が笑っている理由がわからず、ひょっとしたら自分が笑われているのかも とオロオロし始めた。 おか 「に、兄さん、笑わないで下さい! バン貴様!何が可笑しい!?」 かか 一人慌てているトーマを見ると余計に笑いが込み上げ、三人はお腹を抱えて笑い続けた。 やがてトーマがしょぼんと大人しくなると、カールは笑うのを止めてバン達に話し掛けた。 せっかく 「任務とは言え、折角こうして会えたんだ。再会を祝して、皆で食事でもどうだい?」 「それは名案ですね」 「そうだな。丁度腹も減ってきたし、皆で食いに行くか! ……あ、もちろん食事代は大佐のお ごりだよな?」 バンが瞳をキラキラさせながらそんな事を言うと、しょぼんとなっていたトーマは瞬時に立ち直 ぎょうそう り、怒りの形相で彼に突っかかって行った。 「バン!大佐である兄さんにおごらせようなんて失礼極まりないぞ!!そもそも兄さんと一緒 ぜいたく に食事出来るだけでも幸せな事なのに、そんな贅沢を言ってはいかん!わかったか!?」 「別にいいじゃねぇかよ〜。大佐の方が絶対金持ってるし、年長者がおごるのは当たり前だ ろ?」 「当たり前じゃない!目上の者には出来る限りの気遣いを、が常識だ!!」 「………はぁ……コイツ疲れる………」 「何が疲れるだ!?俺の方が余程疲れてるぞ!?」 二人の会話は常に平行線。 ずっとこうなのか?とカールが視線だけで尋ねると、フィーネはコクリと深く頷いてみせた。 『ケンカする程仲が良い』とはよく言うが、正直言って二人が親友になれるかどうか、今は何と も言えない状況である。 カールはフィーネと一緒になって肩をすくめてから、トーマ達の話に割り込んでいった。 「今日は私がおごろう、思う存分食べてくれ」 「さっすが、大佐!どっかの誰かさんと違って話がわかるぜ」 「どっかの誰かさんとは一体誰の事だ、バン!?」 うま 「あの町には美味そうなレストランがあったし、丁度良いからそこにしよう。俺、開店してるかど うか確認して来るよ。行こうぜ、フィーネ、ジーク」 トーマを完全に無視し、バンはフィーネとジークを連れて町へと去って行った。 二人と一匹を静かに見送った後、カールは副官のヒュースを呼び、今日は町で休む様にと指 示を出すと、ゾイドを町外れまで移動させる為にアイアンコングの元へ歩き出した。 うなだ しかし途中で思い直した様に立ち止まり、ガックリと項垂れたままのトーマに声をかけた。 「中尉、行くぞ」 「………は?どこへですか?」 「町へ行くんだ。お前も食事会に参加してくれるんだろう?」 「は、はい!もちろん参加します!」 「では、先に町へ行ってくれ。私も宿の手配が済み次第すぐ後を追う」 「了解しました、兄さ……シュバルツ大佐。先に行っております!」 あっさり元気になったトーマを見送ると、カールはやれやれと小さく肩をすくめた。 ガーディアンフォースとして活動する事により多少は成長すると思っていたが、あの弟はそう 簡単に成長してくれないらしい。 とは言え、トーマの成長期はまだ始まったばかりだ。 良くも悪くも刺激し合える相手が出来たのだから、そんなに心配する必要はないだろう。 急いで成長しなくてもいい。 少しずつでも確実に成長してくれれば、兄としては申し分ない。 カールは兄の顔を見せつつアイアンコングに乗り込むと、部下達を引き連れて町外れへ移動 し、今夜の宿を人数分手配してからバン達を捜し始めた。 場所を聞いていなかったので、捜し出すのは困難と思われたが、バン達はカールの為にきち んと目印を用意していた。 レストランの前に、ジークを待機させていたのだ。 わかりやすい目印ではあったが、ジークは一人でいるのが淋しかったらしく、カールを見つけ るなり嬉しそうに駆け寄って来た。 (サラがいたら喜んだだろうな…) カールはジークの頭を優しく撫でてやり、一緒にレストラン内へ入って行った。 レストランの入口には当然の様にトーマが待ち構えており、ピシッと敬礼してみせるとカールを バン達の元へと案内した。 「おぅ、大佐。待ってたぜ!」 「待たせてしまって申し訳ない」 「いやいや、気にしなくてもいいって。さて、大佐も来た事だし、そろそろ注文するか。おばちゃ 〜ん、メニュー!」 カール達が席に着いたのを見計らい、バンは早速とばかりに店員からメニューを受け取り、フ ィーネと共に嬉しそうに注文する品を選び出すと、店員にさっさと注文し始めた。 |
「大佐は何にする?」 「私は何でも。適当に頼んでおいてくれ」 「了解。……あ〜、それとお前はどうする?」 バンは一応きちんとトーマにも尋ねたのだが、彼はぼんやりとフィーネを見つめたまま返事を 返さなかった。 うなが ますます フィーネが返事を促す為に微笑んでみせても、トーマを益々ぼんやりさせるだけで話が進まな かった。 仕方なく、バンはカールと同じ様に適当に頼んでやれと、店員に次々と注文していった。 最後に店員が飲み物の事を聞くと、バン達はジュース、カールは酒を頼んでようやく注文を終 えた。 料理が運ばれてくるまでの間、カール達はここ二年間の自分の近況を語り合い、やがて料理 が運ばれてくると話により花が咲いた。 ゾイド乗りとしての腕前を上げる為軍人となり、修行に明け暮れていたというバン。 いそ ドクター・ディの助手となり、各地の遺跡発掘に勤しんでいたというフィーネ。 二年の歳月は、少年少女をたくましく育て上げていた。 カールはバンとフィーネの話を一通り聞き終えると、自分の話は手短にしようと話し出したが、 兄の声で我に帰ったトーマが突然話に割り込んできた。 ひと 「兄さんは先日ある女性と婚約したんだ」 「へぇ〜、そりゃめでたいなぁ」 「どなたと婚約されたんですか、大佐?」 「君達が知っているかどうかわからないが……帝国国立研究所に勤めているサラ・クローゼと いう女性だ」 「サラ・クローゼ?知らないなぁ…」 「私知ってますよ」 このメンツの中で唯一サラと同じ仕事に従事していたフィーネが頷くと、トーマはここぞとばか りにその話を発展させ始めた。 「サラさんをご存知なんですか!?将来私の姉になって下さるサラさんとフィーネさんがお知り 合いだなんて……運命を感じてしまいますv ね、フィーネさん?」 「は、はぁ…」 どこかで聞いた様なセリフだが、カールは敢えて聞かなかった事にし、フィーネにサラの事を 尋ねてみた。 やはり愛する女性の話は聞きたいものなのだ。 「クローゼ博士とは通信で何度かお話させて頂きました。ドクター・ディの発掘隊は共和国、ク ローゼ博士の発掘隊は帝国、と分担して発掘していましたので、互いの情報を交換する為に 定期的に連絡を取り合っていたんです」 「そうか。彼女は君と交流したがっていたから、すごく喜んでいたんじゃないか?」 「ええ、喜んでくれたみたいです。国立研究所へ遊びにおいでって、何度も誘ってくれました よ。でも博士も私も会う時間が持てなくて、結局は一度も遊びに行けなかったんですけどね」 残念そうに話すフィーネを見、カールは内心悪い事をしたと思っていた。 サラは発掘中でも研究中でも、休暇は常にカールに合わせて取っている。 もちろんデートをする為なのだが、休暇が不定期なカールに合わせるのは相当大変なはず。 フィーネと会う機会を無くしてまで休暇を合わせてくれていたとわかり、嬉しさと申し訳なさを同 時に感じるカールであった。 「なぁ、そのクローゼ博士ってどんな人なんだ?」 カールの婚約者であるサラに興味津々といった様子でバンが尋ねると、誰よりも早くトーマが 満面の笑顔で語り出した。 「サラさ……姉さんはとてもお美しい方で、『容姿端麗・頭脳明晰』とは姉さんの為にあるよう な言葉だ。ですよね、フィーネさん?」 「ええ。それにすごく優しい人でね、色々お世話になったんだよ」 「へぇ、そんなすごい人と婚約するなんて、さすがシュバルツ!女性を見る目も一流なんだな」 カールはサラの事を褒められると、自分が褒められた時よりも数倍嬉しさを表に出す。 ゆる カールが人前では滅多に見せない緩んだ笑みを浮かべると、バンやフィーネにも嬉しさが伝 染し、皆で明るく笑い合った。 その笑い声に反応したのか、ジークも機嫌良く鳴き始めたが、トーマだけは相変わらずフィー ネの笑顔にぼんやりとなっていた。 にぎ やがて賑やかな食事会が終わりを迎えると、四人と一匹は軽い足取りでレストランを後にし、 手配しておいた宿へと歩き出した。 人数の都合上、バン達は民家に泊めてもらう事になった為、カールは途中で彼らと別れた が、言い忘れていた事があったと慌ててジークを呼び止めた。 ジークが不思議そうな顔をして戻って来ると、カールはバン達に聞こえない程度の小声で優し く話し始めた。 「いつか、バン達と国立研究所へ遊びに来てくれ。サラが……私の妻になる女性が君達に会 いたがっているんだ。よろしく頼むよ、ジーク」 「キュィ!」 ジークは任せろと言わんばかりに元気良く鳴くと、カールに頭を撫でてもらってからバン達の 後を追った。 たたず カールはその場で彼らを見送り、姿が見えなくなるまで笑顔で佇んでいた。 ジークに頼んでおけば安心だ。 直接頼めば、バン達はすぐにでも国立研究所へ行ってくれるだろうが、それでは彼らに無理を させる事になってしまう。 無理に来てもらっても、サラが喜ぶはずがない。 その点を考慮すると、ジークに頼むのが一番良いのだ。 ジークなら、気が向いた時に無理なくバン達を国立研究所へ導いてくれるはずだ。 明日になれば、彼らは再び旅立つだろう。そして自分も…。 次にいつ会えるかわからないが、今度会う時はサラも一緒に、とカールは心から願っていた。 * 「えぇ〜〜、バン達と会ったの!?いいな〜、いいなぁ〜〜」 うらや 後日、国立研究所にてカールがバン達の話題を出すと、サラは非常に羨ましそうな顔を見せ た。 そういう反応をするとは思っていたが、余りにも予想通りだったので、カールは思わずプッと吹 き出してしまった。 ふく 笑われた事に腹が立ったサラは頬を膨らませ、腰に回されていたカールの手をいやいやと払 った。 しかしカールはすかさずサラを抱き寄せ、長い青髪を優しく撫でながら話し出した。 「ジークに頼んでおいたよ」 「え……?」 「バン達と一緒に国立研究所へ遊びにおいでってね」 「………ありがとう、カール」 うず サラは満面の笑みを浮かべて礼を言うと、幸せそうにカールの胸に顔を埋めた。 礼を言うべきなのは自分の方だと、カールは言葉でなく行動で感謝の気持ちを表す事にし た。 ひたい 始めは額……そして頬……最後に唇に優しく口づけしていき、サラと真っ直ぐ視線を合わせる と、再び唇を重ねた。 ハッキリ言葉にしても良かったが、この方がより気持ちが伝わる。 理由がわからずとも、感謝の気持ちさえ伝わればいい。 カールの気持ちを受け取ったサラは笑顔で彼に抱きつき、その日二人は一日中抱き合って過 ごしたのだった。 ●あとがき● や〜〜〜〜っと登場しました、バン&フィーネ。 アニメの主人公とヒロインなのに、登場まで随分時間がかかりました。 しかしトーマの好敵手という形で登場しているところを見ると、やはり長編小説ではバン達は 脇役なんだなぁと改めて思いました。さすが帝国中心小説!(笑) 今回のお話ではバン達の過去二年間の話題も出ましたが、サラとフィーネの微妙な繋がりが わかって頂けたら嬉しいですv 実は顔見知り。でも直には会っていない。今はそんな繋がりです。 長編小説では発掘の話は皆無でしたが、サラは影で色々やっていたんですねv 今後バンとフィーネは、カールと接点があるお話では微妙に登場する予定ですが、それ以外 ではほとんど姿を現しません。 バンではなく、カールが主人公の小説なので仕方ないですね。 私としては、バン達よりもトーマの成長の方が気になりますし、やはり全てはカール中心。 とりあえず今回のお話は「バンとフィーネに出会ったトーマ」がポイントになっています。 フィーネに一目惚れ・バンに一方的なライバル心を抱くトーマって、かわいいから好きですv 兄の期待に応えられる様に、トーマにはこれからも頑張って頂きます! ●次回予告● ルイーズとサラの策略により、生まれて初めてきちんとした形のデートをする事になったハー マンとミシェール。 ハーマンは思わずカールに助けを求めますが、彼の傍には当然の様にサラの姿が… 結局、彼女の提案でダブルデートをする事になり、後日四人は帝都ガイガロスに赴きます。 初デートでハーマン達はどこまで進展するのでしょうか? 乞うご期待! 第六十五話 「ダブルデート〜前編〜」 やっぱり何かあったんだv |