「誕生日〜カール編〜」
サラの誕生日から約半年後、とうとうカールの誕生日を迎えた。 その日は一日中室内で過ごせる様に朝早くから諸々の用事を済ませ、サラの誕生日の時に も予約したホテルへと向かった。 自分達に割り当てられた部屋に入ると、サラは買って来た食材を冷蔵庫にしまい始め、その 様子を黙って見ていたカールは、カバンの中からこっそりあるものを取り出した。 あるものとは……何の変哲もない真っ白なエプロン。 カールはそのエプロンを使ってサラに良からぬお願いをしようと企んでいた。 カールの企みとは、先日部下から仕入れた情報が元になっている。 仕入れたと言っても、部下同士が話していた事を小耳に挟んだだけなのだが、その話を聞い た途端、カールの心は異常な程燃え上がった。 もうすぐ自分の誕生日なのに、サラに何をお願いしようか迷っていたところだった為、丁度良い 具合に情報が手に入った。 正直言ってこんな事を頼むのは少々心が痛むが、今日一日ぐらいサラも頑張ってくれるだろ う。 大して悩む事なくすんなり結論に達したカールは張り切ってエプロンを購入し、誕生日当日を 迎えたという次第だ。 そんなお願いをされるとは夢にも思っていないサラは、食材をしまい終えてカールの傍へ戻る と、そわそわしながら彼が口を開くのを待った。 カールの言う事は何でも聞く、と心の準備は既に完了している様だ。 カールはサラの健気さに内心感動しつつ、彼女にエプロンを差し出した。 「これに着替えてくれ」 「着替えるって……エプロンに? それは着替えるなんて言わないと思うんだけど…?」 「いや、着替えるんだ。まずは服を脱いで…」 そう言いながら、カールはサラが着ている上着のボタンを外し始めた。 当然驚いたサラは慌ててカールの手を止め、訳がわからないといった表情で碧色の瞳を見上 げた。 「ど、どうして服を脱ぐ必要があるの? エプロンは服の上に着るものでしょう?」 「今日は違う、エプロンだけを着てほしい」 「……?」 「新婚の男女がよくするという『裸エプロン』をしてほしいんだ」 「………………………………カール、どこでそんな情報を仕入れたの?」 「最近結婚した部下から。すごくいいって言っていたから、試してみたくなってね」 「好奇心が旺盛なのはいいけど、私にだって出来る事と出来ない事があるわ」 「……やっぱり……ダメか……」 断られると予想はしていたが、心の奥底では相当期待していた為、カールはガッカリしてソフ ァーに身を投げ出した。 そこまでガッカリするとは思わなかったサラは慌ててソファーに駆け寄り、もじもじしながらカー ルの膝をツンツンつついた。 「カール、私………」 「そんなに困らないでくれ、サラ。変な事を頼んだ俺が悪かったんだ、もう無理なお願いはしな いから安心してほしい」 「ううん、違う、そうじゃないの。私…………少しだけならエプロン着てもいいよ」 「え……?」 「今日はあなたの言う事、何でも聞くって決めたの。だから少しの間だけど……あなたが望む 格好をしたい」 サラは実に真っ直ぐな瞳で決意した事を述べ、カールからエプロンを受け取ると、颯爽と寝室 へ入って行った。 サラならきっとそう言ってくれると思っていたが、彼女の良心を完全に利用した形となってしま い、カールは自分の不器用さにほとほと呆れるしかなかった。 が、今日は思う存分我儘を言っても良い日。 サラの好意にたっぷり甘えようと思うカールであった。 「カール…あの……その……」 ふと気づくと、サラが寝室のドアから顔だけ出していた。 恥ずかしくて出るに出られない様だ。 カールはゆらりとソファーから立ち上がり、サラの傍まで歩み寄ると、ドアを勢い良く開いた。 「あっ……」 ノブを握り締めていた為に、サラはドアが開く勢いに乗って倒れそうになり、そんな彼女をすか さずカールが優しく受け止めた。 カールはサラの全身を見た途端顔を真っ赤にしたが、もっとよく観察しようと彼女をひょいと抱 き上げ、ソファーの方へ移動した。 恥ずかしさの余り体を硬直させていたサラは、カールに瞳を覗き込まれると、ようやく照れ臭そ うに微笑んでみせた。 「カール、あの……どう…かな?」 「すごくいいよ、もっとよく見せてくれると嬉しいな」 「そ、それはダメ。恥ずかしいもん」 「今日は俺の言う事は何でも聞いてくれるんだろ?」 「……わかったわ、でも余りじっと見ないでね」 「ああ」 カールは満面の笑みで頷いてみせ、サラの腕を優しく握り目の前でクルリと一回転させた。 カールに引っ張られるままに移動しつつも、サラは背中を見られない様になるべく素早く動き、 元の方向に戻ると両手を後ろに回した。 今の格好は前よりも後ろを隠さなくてはならないからだ。 しかしその事をカールが見逃すはずもなく、サラの体を一通り見回した後、驚くべき早さで次の 行動を起こし、彼女を後ろ向きにしてソファーへ押し倒した。 そして露になった体のラインをじっくり観察し、頬を赤らめているサラの耳たぶを口に含んだ。 「カール……ダメ……」 サラは快感を感じながらも必死に抵抗を試みたが、体からはすんなり力が抜けていった。 サラの体に後ろから覆い被さる形で愛撫を開始したカールは、エプロンの隙間に手を滑り込ま せ、豊満な乳房を優しく揉み上げた。 「あ……あん………」 それだけでサラは完全に快感に身を任せ始め、カールはエプロンが思ったより役に立ったと 思いつつ、本格的に前戯を開始した。 サラの誕生日の時はソファーではダメと断られたが、どうやら今日はいい様だ。 しかも必然的に余り好きではない後ろから行為を始めたというのに、サラは抵抗する素振りを 一切見せなかった。 本当に自分の言う事を全て聞くつもりなのだと改めてわかり、カールは心底幸せを実感する と、お礼としてサラを何度も快楽の最骨頂まで導き続けた。 そうして正午を過ぎた頃、カールはようやく行為を終了し、疲れ果てているサラを膝の上に乗 せると、彼女の髪を優しく撫で始めた。 しばらくしてからサラは大きな瞳を開き、カールの手を取って自分の頬にあてがった。 「………もう着替えていい?」 「ああ、我儘を聞いてくれてありがとう」 「お礼なんて言わなくてもいいよ。あなたは滅多に我儘を言わないから、もっと言ってくれても いいくらいだよ」 「じゃあ、今日は一日その格好でいてくれ」 「ダ〜メ、それだけは聞けません」 サラはクスクス笑いながらカールの膝の上から降り、着替える為に寝室へ向かった。 二人きりの時間を無駄にしない様に素早く身支度を整えたサラは、カールが用意してくれたエ プロンを服の上に再び身に着け、彼の元へ帰った。 サラを出迎えたカールは、彼女の姿を見て嬉しそうに微笑んでみせた。 「やっぱり普通に着てくれる方がいいね」 「ほんと? さっきの方がいいって思ってるんじゃないの?」 「さすが、サラ。その通りだ、よくわかるね」 「あなたが思っている事は全部お見通しだもんv」 カールが冗談を言うと、サラも負けじと冗談っぽく答え、少し遅めの昼食を作り始めた。 夜になり空に満点の星々が輝き出すと、サラはカールにベランダで待つ様に言い、自分は一 旦寝室へ向かってから彼の後を追った。 彼女の手にはもちろんカールへのプレゼントが握られていた。 「お誕生日おめでとう。私からのプレゼントだよv」 「ありがとう、サラ」 『一日言う事を聞く』というのがプレゼントだと思っていたが、やはりサラはきちんとプレゼントを 用意してくれていた。 カールは嬉しさで表情を緩ませつつ、サラから手渡された包みを開け始めた。 「何にしようか迷ったんだけど、編み物に初挑戦してみました♪」 照れ臭さを誤魔化す為にサラは明るく笑ってみせ、包みから中身を取り出したカールは嬉しそ うに自分の体にあてがった。 サラからのプレゼントは、これからの季節に最適な手編みのセーター。 色はもちろんカールが一番気に入っている黒。 初挑戦と言っていた割にデキはなかなかのもので、何でも器用にこなせるサラだからこそ、初 めてでも良いものを作る事が出来たと思われる。 カールは試しにその場で着てみようと、セーターに袖を通して着心地を確かめた。 「ピッタリだ」 「ほんとピッタリね。こっそりサイズを測った甲斐があったわv」 「こっそり?」 「うん、あなたが眠っている間に測ったの。途中で起きちゃったらどうしようってヒヤヒヤしなが らね」 「そうだったのか、全然気づかなかったよ」 「ふふふ、私と一緒の時はぐっすり眠っているものね」 「ああ、一番安心出来るからな」 二人は照れ臭そうに微笑み合うと、美しく瞬く星空の下で身を寄せ合い、そっと唇を重ねた。 そうしてカールはセーターを脱いで丁寧に畳み、サラと一緒に浴室へ足を運んだ。 今日はいつも通りの洗い方をするのだろうと予想は出来たが、サラは一応カールに確認して おく事にした。 「カール、今日は……」 「もちろん俺の好きにさせてくれるんだろ?」 「う、うん……やっぱり…そうだよね…」 余りに予想通りの返事だった為サラは内心呆れつつ、いそいそと服を脱いで浴室に入った。 すると、直ぐさまカールに捕えられ、抱き合ったままシャワーを浴び始めた。 「今日は君が先だな」 「…私が先?」 「ああ、俺ばかり先に洗ってもらうのはどうかと思ってね」 カールは非常に爽やかな笑みを浮かべて言い、サラが髪を洗うのと同時進行で彼女の体を 洗い出した。 今日は特別な日、と言わんばかりに妙に丁寧に洗うカールであった。 やがてサラが髪を洗い終えると、その時を待っていたらしく、カールは当然の様に彼女の気持 ちの良い所を愛撫し始めた。 サラは一瞬抵抗しそうになりつつもカールの愛撫を素直に受け入れ、最早入浴よりも行為が 優先となっていた。 しかしカールは何事にも抜け目がない。 愛撫の合間にサラに髪や背中を洗ってもらう時間を作り、全てを終えてから行為に及んだ。 濡れた青髪が滑らかな体のラインに沿って張り付き、カールはその様が美しいと感じながらサ ラと体を重ねていた。 しばらくして何度目かの行為が終了すると、サラはカールの肩に手を伸ばし、疲れ果てた体を 何とか起こして彼の耳に口を寄せた。 「カール…ここではもう終わりにしましょ……。後はベッドで……」 「……辛いのか?」 「ううん、そうじゃなくて……ここだと風邪を引いちゃうかもしれないから…」 「それもそうだね、じゃあ急いで出よう」 二人は体の火照りが無くならない内に急いで浴室を後にし、寝室へ向かうとカールはベッド脇 に腰掛け笑顔でサラを見つめた。 カールの熱っぽい視線に気づいたサラは彼の傍へ歩み寄り、次なる要望は何かと言いたげな 表情で首を傾げてみせた。 「サラ、今日は自分で脱いでほしいな」 「え、ぬ、脱ぐって……?」 「いつも俺が脱がせてるからね、たまには自分で脱いでくれ」 「う、うん……えっと…じゃあ……向こう向いてて」 「どうして向こうを向く必要があるんだ?」 カールは意地悪そうな笑みを浮かべ、当然の如く意地悪な質問をした。 その質問にサラは返事を出来ず、顔を真っ赤にしながら恐る恐る服を脱ぎ始めた。 カールはその様子をじっくりと観察し、サラが全てを脱ぎ終えて生まれたままの姿になると、 彼女の手を優しく引っ張り膝の上に座らせた。 「恥ずかしかった?」 「うん、恥ずかしかった……」 「………。…すまない、もう二度とこんな事は頼まない様にする」 「ううん、いいの、気にしないで。今日はあなたがいっぱい我儘を言ってくれたから、私すごく 嬉しいのv」 サラは満面の笑みを浮かべて言い、そんな彼女の優しさが嬉しかったカールは、長い青髪を 愛おしそうに優しく撫でた。 「今日は本当にありがとう、こんなに楽しい誕生日は生まれて初めてだ」 「ふふふ、これからは毎年、でしょ?」 「ああ、毎年楽しくなる……」 カールは最後まで言葉を紡ぎ出さずにサラと唇を重ね、二人はすぐに快感に溺れていった… 翌朝、休暇中は決まって寝坊をするはずのカールが珍しく早々と目を覚まし、隣で天使の様 な顔で眠っているサラに目をやると、満面の笑みを浮かべて彼女の頬を撫でた。 すると、サラは非常に愛らしい仕草でまどろみ、しばらくしてからうっすらと目を開くと、カール の笑顔に気づいて微笑んでみせた。 「おはよ、カール」 「おはよう」 カールは挨拶を返すと同時にサラの口を塞ぎ、朝から濃厚すぎる口づけを始めた。 そしていつもの癖で口づけをしながらサラの上に四つん這いになり、唇を徐々に下へ移動させ ていった。 サラは焦る事なく優しくカールの体を押し返し、何とか愛撫を中断させた。 「疲れてないの?」 「疲れる…?」 「だって昨日あんなにしたから……あなたも疲れているんじゃないかって思ったの」 「俺は大丈夫、鍛えているからね」 「そ、そっか…さすがだね…。でも私は……」 「……疲れてる?」 「うん、もう腰が保ちそうにないの。だから…ごめんね……」 「謝らなくていい。俺は充分満足してるよ、ありがとう」 そう言いながらカールは青髪をそっと撫で、その手の動きがくすぐったくて堪らないサラはクス クス笑い、行為は行わないが二人は心行くまでベッドの上でいちゃつき合った。 そうしてふと気づいた時にはもう正午近くなっていた為、カールとサラは慌てて身支度を整え、 急いで昼食を用意するとのんびりと食べ始めた。 他の事はどんなに急いでも、食事の時間だけは必ずのんびりする。 食べる事が大好きな二人ならではの習慣であった。 「午後からはどうする? どこかへお出掛けする?」 誕生日はサラの時もそうだったが連休を取っているので、今日も一日二人でいられる。 昼食を摂った後、後片付けを始めたサラは今日のスケジュールもカールに決めてもらおうと、 隣で手伝いをしている彼に問い掛けた。 カールは持っていた皿を棚に丁寧にしまうと、難しい顔をして悩み始めた。 サラと一緒ならどこへ行っても楽しい。 が、強いて行きたいという場所は思い付かなかった。 「う〜ん、そうだなぁ……。……散歩でもしようか?」 苦し紛れの提案ではあったが、サラはにっこりと微笑み頷いた。 サラもカールと同じく、彼と一緒ならば場所はどこでもいいのだ。 テキパキと後片付けを終え、ホテルを後にした二人は町の高台にある大きな公園へ向かい、 手を繋いでゆっくりと歩き出した。 「風が気持ちいい〜v 今日は散歩日和だね」 「ああ、そうだね」 カールは嬉しそうに頷くと周囲の景色には目も暮れず、サラの端整な横顔を見つめ幸せに浸 っていた。 その余りにも熱い視線に気づいたサラは照れ臭そうにもじもじし、カールと真っ直ぐ視線を合 わせ微笑んでみせた。 「なぁに?」 「綺麗だから見とれていたんだよ」 「そ、そうね、綺麗な眺めだね」 サラはわざと話題を変えようとしたが、カールは当然変えるつもりなどない。 サラの照れる姿を見る為ならば、歯の浮く様なセリフも平気で言う。 「眺めも綺麗だが、俺が言っているのは君の事だよ」 「や、やだ…もう……恥ずかしい事ばかり言って…」 「俺は恥ずかしくない」 「…たまには恥ずかしさを感じてほしいわ、私だけが恥ずかしい思いをするなんてズルイもん」 「それは無理だ。相手が君だと、恥ずかしいなんて思わないから」 「むむむ〜、ほんとにズルイ〜」 サラはかわいらしく頬を膨らませ、カールの腕を掴んでぐいぐい引っ張った。 子供っぽい仕草ではあったが、一応抗議の気持ちを表現しようと思っての行動の様だ。 しかしそのかわいさが逆に、カールの心を燃え上がらせる結果に繋がってしまった。 カールは周囲に人の気配が無い事を確認すると、サラを強引に抱き寄せ彼女の口を塞いだ。 「……んん……」 濃厚な口づけを始めてしばらくすると、サラは気持ち良さで立っていられなくなり、カールの腕 に全身を委ね出した。 そうなってしまうと全てはカールの思うままに進められ、サラは激しく絡んでくる舌に素直に反 応し、吐息を漏らした。 「…は……ぁ……カール……」 「気持ち良かったかい?」 「……うん、すごく…気持ち良かったよ」 「そうか、それは良かった」 カールは満足気な笑みを浮かべると、腕の中にいるサラを優しく抱きしめ、彼女の温もりを感じ 始めた。 「…サラ」 「ん、なぁに?」 「……愛してるよ」 カールはいつになく小声で愛の言葉を囁き、それが照れ臭さの為だと気づいたサラは満面の 笑みを浮かべると、嬉しそうに彼の瞳を見上げた。 「私も愛してるわ、カール」 サラの言葉を聞いた途端カールは顔を真っ赤にしたが、言う程照れる事はなく、にっこりと微 笑み頷いてみせた。 太陽が徐々に西に傾き始め、地平線の彼方が赤く染まり出した頃、カールとサラは公園を後 にし、国立研究所への帰路に就いた。 その道中、サラはずっと思案していた事を思い切ってカールに言ってみる事にした。 「ねぇ、カール」 「何だい?」 「…来年からプレゼントは無しにしない?」 カールは前方を見据えたまま少々驚いた様な表情を見せ、直ぐさまジープを停車させると、サ ラの方に振り返った。 「……プレゼントは必要無いって事かい?」 「ううん、そうじゃないの。毎年何をプレゼントしようか悩んじゃうと思うし、それにプレゼントが 無くても一緒にいられるだけで私は幸せだから……」 「………」 サラが本当は何を言いたいのか何となくわかり、カールは言葉を失って黙り込んだ。 要するに『自分の為に無理をしてプレゼントを用意しなくてもいい』というのがサラの本心。 確かに今年は無理をしてしまったので、サラの提案は嬉しい。 が、やはりプレゼントは贈りたい。 カールが本気で悩み始めると、サラは彼の瞳を覗き込む様に移動し、そっと唇を重ねた。 カールは驚いて目を丸くしたが、その様子が余りにかわいかったので、サラは満面の笑みを浮 かべた。 「私が一日中一緒にいるっていうプレゼントじゃイヤ?」 「イヤな訳ないよ。俺はそれで充分だけど、君には……」 「あなたの気持ちは嬉しいわ。けど、ものよりも時間の方がもっと嬉しいの。だから誕生日は 私の傍にいて、お願い」 「サラ……」 サラの健気さに気持ちを抑えられなくなったカールは、彼女を自らの膝の上に移動させ抱きし めた。 「来年からは時間をプレゼントにしよう」 「うん、ありがとう」 「こちらこそありがとう」 二人は幸せそうに微笑み合うと、ゆっくりと顔を近づけ口づけを交わした。 二人にとって誕生日は特別な日であると同時に、いつも通りに過ごす普通の日でもある。 だからこそ一緒にいられる時間を大切にしていこうと思う、カールとサラであった。 ●あとがき● どちらかと言えば健全だったサラ編に対し、見事に不健全な内容となったカール編(笑) 新婚の男女がよくするって……『よく』はしないと思うぞ、カール。 新婚のお約束で存在するものですから、一度チャレンジしたいと思って出してみたのですが、 始めから話が怪しい方へと突き進み、めでたくカールが不審人物になってしまいました(爆) 恋人だからって何をしても許されるとは限りません………許されてるけど(笑) 本来なら結婚してからするべき事なのかもしれませんが、一向に結婚する気配を見せないの で、仕方なく(?)誕生日に使ってしまいました。 カール達が誕生日をどう扱っているのか、それをハッキリさせる為だけに考えた内容ですか ら、深くは考えずに平然と「あ、そう」と思って下さい。 このお話以降の誕生日も相変わらずラブラブ一直線vv 長編でも短編でも誕生日のお話はほとんど出てきませんが、毎年こんな感じで過ごしている のだなと思いながら読んで頂けると嬉しいですv 一方、カールの恋のライバルであるヒュースはというと… このお話の頃にはもう第一装甲師団に配属されていたのですが、カールに仕事を押し付けら れて…もとい、師団長代行を頼まれて大変な一日を過ごしておりました(笑) ちなみにサラとカールの誕生日には毎年凄まじい数のプレゼントが研究所・基地に届きます。 今回も例に漏れず、ファンから山の様なプレゼントを頂きました。 二人共律儀なので適当には扱いませんが、律儀故に全員にお礼状を送ったりと大変です。 人気者は辛いですねぇ…、しかし二人が幸せならばそれで良し!ですv |