04.傷の舐め合い
「あ〜あ、傷だらけになっちゃった」 「………大丈夫かい?」 「うん、大丈夫。あなたは?」 「俺も大丈夫。しかし君の体に一つでも痕が残ったら大変だ、すぐに手当てしよう」 「そうね、でも……救急箱なんて持って来てないよ?」 「あ…………そう言えばそうだった……」 共和国との戦争が終結し、平和な毎日が続いていたある日、カールとサラはいつもの様に山 登りデートに来ていた。 そこで見つけた一本の大木。 その大木には大きな実がたわわに実っており、思わずサラはそれらを収穫しようと木登りを始 めた。 が、サラは木登りが余り得意ではなかったのだ。 しかもスカートを押さえながら登るというのは熟練の技術が必要である。 そんな技術など、サラは当然持ち合わせていない。 心配そうに見守るカールの目の前で、サラは見事に木から落下。 カールは必死にサラを受け止めたものの、バランスが悪く二人揃って地面に倒れ込んだが、 傾斜のある地面だった為にそのままコロコロと転がり落ちてしまった。 やがて平地に至り、転がる勢いが無くなると二人は互いの無事を確認し合い、傷だらけとなっ た自身の体に目をやった。 カールは長袖・長ズボンだったので手に擦り傷のみ。 サラはカールが庇っていたとは言え、半袖・スカートだったので腕と足に多少の擦り傷を負っ ていた。 手当てをしようと提案したはいいが、肝心の救急箱が手元に無いと気付き、二人の間に冷た い空気が流れ始めた。 サラは自分のせいだと酷く落ち込み、カールの擦り傷だけでも何とかしようと悩み出した。 すると、思ったよりあっさりと良い方法を思い付いた。 応急処置として唾液を使えばいい。 子供の頃そうしていた様に、サラはカールの手の擦り傷を丁寧に舐め始めた。 「……サラ?」 「……ごめんなさい、痛かった?」 「いや、そうじゃなくて……」 人の心配より自分の心配をすべき、とカールはサラの傷だらけの腕を握った。 「カール、私よりもあなたの手当てをしないと……」 「俺は今ので充分だから、次は俺が君の手当てをする」 カールは有無を言わさずにサラの腕の擦り傷を舐め始め、時折余計な所も舐めつつ彼女の手 当てを行った。 「あっ…………ん……カール………」 「痛いか?」 「ううん、違うの……。その………傷以外も舐めてるでしょ…?」 「少しだけだよ」 「少しでも……こんな時間からそんな事………」 「俺は手当てをしているんだ、時間なんか気にしなくていい」 カールは腕の擦り傷を舐め終えると、今度はサラの足に舌を移動させ、そこにある傷を舐め出 した。 途端にサラはピクンと体を震わせたが、手当てをしてもらっているのに抵抗しては悪いと、声を あげるのを必死に我慢した。 「痛くないか?」 「平気……」 カールが足から舌を離したのを手当て終了と判断し、サラは急いで立ち上がろうとしたが、直 ぐさま元の体勢に戻されてしまった。 「カール?」 「まだ全部舐めてない」 「も、もういいよ、他はそんなに大した事ないから」 「ダメだ、ちゃんと手当てしておかないと痕が残ってしまう」 「擦り傷なら痕が残りにくいから大丈夫、そんなに深刻に考えないで」 「残りにくいだけで残らないとは限らない。君が何と言おうと、俺は手当てを続けさせてもらう」 「あ……ダメ………」 カールはサラの体を地面に固定すると、腕と足にある擦り傷を丁寧に舐め回した。 そうして一通り舐め終えると、カールはサラの上に四つん這いになり、完全に手当てとは言え ない事をしようと行動を開始した。 「ん………ス、ストップ!!」 サラはカールが何をしようとしているのか察し、渾身の力で彼を止めた。 『外で』というのはやはり恥ずかしい。 これは何としてでも止めなくてはならない。 「カール、そろそろ帰る時間だと思うんだけど…?」 「まだ余裕はある、心配しなくていい」 「……そ、そういう意味で言ったんじゃ……なくて………あん………」 会話の途中でカールに耳たぶを舐められてしまい、サラは思わず色っぽい声をあげた。 サラの反応を見てカールはにやりと笑いつつ、彼女の服の中に手を滑り込ませた。 「……………ダ、ダメ! 外では絶対ダメ!!」 一瞬受け入れそうになりながらもサラは必死にカールを止め、何とか彼の腕の中から脱出す る事に成功した。 が、脱出してからサラはカールの本心に気付いた。 どうやらカールは本気ではなかった様だ。 もし本気であれば、逃げ出すのは確実に不可能だからだ。 サラはカールにからかわれていたのだとわかると、今までの自分の素直な行動が恥ずかしく なり、顔を真っ赤にして黙り込んだ。 すると、カールは再びサラの腕を手に取り、無言で傷を舐め始めた。 からかったお詫びのつもりなのだろう。 カールに傷を舐めてもらう内に、サラの心は次第に落ち着きを取り戻していき、二人は夕日に 照らされる中、そっと口づけを交わした。 「痕が残らなければいいが……」 「あなたがこんなにも丁寧に手当てしてくれたんだから、絶対に残らないよ」 サラは自信満々に言ってみせ、「私も」とカールの手の傷を舐め始めた。 「よし、これであなたも大丈夫ねv」 「ああ、ありがとう」 カールはサラに舐めてもらった手を見ると非常に緩んだ顔になり、見るからに浮かれた様子で 彼女を抱き上げて大木の元へと戻って行った。 ●あとがき● はい、見事にお題に沿ってません(爆) 傷の舐め合いの「傷」って普通は心の傷なんですが、カール達は舐め合ったりしないだろう と、ただのラブシーンとしてお題を活用しました。 心の葛藤は長編で既に済ませていますし、今更舐め合っても…という事でラブラブv ちなみに唾液が傷に効果あるのかどうか定かではありません。 子供の頃はよくしたよね、と解釈して下さい。 今回のお題はレイヴン×リーゼで萌えそうなものでしたが、カール×サラ主体で挑戦している のでレイリーは後程書く………かもしれません(本気か!?) それにしてもカール達は山登りばかりしていますねぇ。たまには町へ行かせようと思いますv |