01.髪を梳く


「髪、伸びたねぇ」
よく晴れた日の昼下がり、デート先である山の頂上にて昼食を終えると、サラはカールの髪を
手櫛てぐしかしつつ素直に感想を述べた。
カールの髪はいつも首に掛かる程度なのに、今は肩を過ぎた辺りまで伸びていたのだ。
そう言えばしばらく床屋とこやに行ってないな、とカールはサラの手に自分の手を重ね、一緒になっ
て髪を梳かし始めた。
「床屋に行くのをすっかり忘れていたよ」
「ふふふ、あなたでも忘れる事ってあるんだねv」
「そりゃあるさ」
カールは笑顔でお返しと言わんばかりにサラの青髪を手櫛で梳かし始め、二人は互いの髪を
梳かし合いながら地面に寝転んだ。
「やん、くすぐったいよぅ」
カールの手の動きが非常に気持ち良く、サラは思わず身をくねらせて笑った。
「君の髪はいつ見ても綺麗だね」
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいわv 髪には特に気を遣っているから」
「気を遣う?」
「髪のお手入れの事だよ。長いから大変なの」
「そうか…。そうだよなぁ、こんなに長いんだから」
長い青髪を毛先まで手櫛で梳かしてみると、日光が反射してキラキラと光って見えた。
長くても毛先までつややかな美しい青髪。
何度触れても飽きない美しさだ。
カールは心底幸せを感じつつ、サラの髪で唯一短い前髪にも触れてみる事にした。
こちらももちろん美しい。
髪に触れていると自然にサラと目が合い、カールはそのまま彼女の口を塞ぎにいった。



「あなたに髪を触ってもらうの、結構好きかもしれない」
昼間だというのに濃厚な口づけを交わした後、サラは潤んだ瞳でカールを見上げると微笑んで
みせた。
カールは少々驚いた様な表情を見せたが、彼の手は相変わらず青髪をもてあそび続けていた。
「好きって……気持ちいいから?」
「え……あ、まぁ、そういう事になるかしら。ちょっと違うような気もするけど」
「じゃあ、もっと気持ち良くなる事しようか?」
「……………カール」
「ん?」
サラはもっと気持ち良くなる事とは何かと聞こうとしたが、聞いてしまったら止められなくなると
気付き、言葉が続かずに黙ってカールを見つめた。
サラの視線だけの言葉をしっかりと理解したカールは、妙に嬉しそうに笑ったかと思うと彼女
の青髪に顔を埋めた。
「いい匂いだなぁ」
「…あなたも同じ匂いでしょ?」
「確かに同じだが、君から香るのは特にいい匂いなんだ、俺好みで」
サラもカールも同じシャンプーを使っているので、髪から香る匂いは当然同じ。
しかし『サラから香る』という点だけで、同じ匂いがカール好みになっていた。
そうしてカールは再びサラの髪を手櫛で梳かし出すと、指の間から滑り落ちていく青髪の美し
さをじっくり堪能し、続いて茶色の大きな瞳を見つめた。
サラは恥ずかしそうにもじもじし、照れ臭さを誤魔化ごまかそうとカールの髪を撫で始めた。
今日はいつも以上に互いの髪に触れ合い、いつも通りにラブラブな一日であった。





●あとがき●
髪を梳くといえば櫛、櫛といえば手櫛、という事で出来たお話。
こんなに短いお話を書いたのは初めてかもしれません。
しかしラブイチャなお話(何だそりゃ)に仕上がったので自己満足はしてますv
それにしても、カールの髪って長くなったらどんな感じになるのでしょうか?
あの横毛も重力には勝てずに下に落ちちゃうかも…(ドキドキ)
長髪まではいかなくても、ちょっぴり髪を伸ばしたカールを一度は描いてみたいですv
いつか絶対描いてみよう!←またしても野望が増えてしまった…
なるべく健全指向でと意気込んでいたせいか、01はめでたく健全で終了。
しかしこれからは不健全になる可能性が極めて高いです、ご注意を(笑)